俳優の古田新太天海祐希がこの秋、劇団☆新感線の秋公演SHINKANSEN☆RX『薔薇とサムライ2-海賊女王の帰還-』で舞台4度目の共演を果たす。お互いに全幅の信頼を寄せる2人に、劇団☆新感線の舞台に立つ面白さ、新作のテーマでもある「世代交代」への思い、35年を超える舞台人生について語ってもらった。



【写真】「神様」「寄らば大樹の大樹」――絶大な信頼を寄せあう古田新太と天海祐希

■“こういう状況なので元気なものを”のオファーに納得

 本作は、天海ふんする海賊アンヌが古田演じる石川五右衛門とともに大暴れする『薔薇とサムライ~GoemonRock OverDrive~』の続編となり、新感線の人気シリーズ『五右衛門ロック』のスピンオフ作品。新感線としては4年ぶりとなる、生バンドが入る“音モノ”Rシリーズ公演となる。石川五右衛門を古田が、そして物語の主人公となるアンヌを天海が演じる。共演には、新感線初参加となる石田ニコルや、神尾楓珠、西垣匠、さらに生瀬勝久高田聖子、粟根まこと、森奈みはる早乙女友貴ら手練れのメンバーも顔をそろえた。

――今回12年ぶりに『薔薇とサムライ』の世界への登板となりますが、出演オファーをお聞きになった時の心境はいかがでしたか?

天海:「え! 私、前ほど体力ないかもよ?」って(笑)。でも、「こういう状況なのでパッと明るく、新感線としてもRシリーズでドンといきたい。
吹っ飛ばすくらいの元気なものといったら『薔薇とサムライ』がいいんじゃないか」って言われたら、「確かにな…」と。そんな作品に呼んでもらえるのはすごくありがたいことだなって。

古田:おいらはただ「へぇー」って。「ゆりちゃん(天海)、いいって言ってるの? じゃあ、付き合いまっせ」と。

――前回の公演で印象に残っていることはありますか?

古田:覚えてねえんだよな~。

天海:12年後にやることになるなんて思ってなかったからね~。
着替えが大変だった記憶はありますね。

古田:女王様の格好もして、海賊の格好もしてっていう。そんなコスプレ劇団ほかにないから、昔からのゆりちゃんファンはもう大喜びでしょう。

天海:早替えはもうしたくないんですよ、しんどいですから(笑)。普通は、もう金髪のかつらをかぶることなんてないでしょう。でも新感線だからやるっていう感じなんです。
前回は「姐さんがオスカルの格好をしたら…」と言われて「いや、言っておくけど、私は宝塚ではアンドレだったんだけど!」「おぉ違ったのか!」ってやりとりがあって(笑)。

古田:知らんかったんかい!っていうね(笑)。五右衛門も変装の達人だし、そういうむちゃくちゃな設定は、うちみたいな劇団じゃないと世界観が壊れちゃうでしょう。新感線は最終的には“ちゃんちゃん”で終わるから、だったら、途中はお客さんが喜んでくれるなら…ってことでいいんじゃないかなって。

――天海さんご自身には、今回はこんな扮装をしたいというご希望は…。

天海:ないです! 宝塚でずいぶんいろいろ着させていただいてますし、輪っかのドレスも前回着させていただいたし、もう思い残すことはありません!(笑)

■「神様」「寄らば大樹の大樹」――2人の間の絶大な信頼感

――お2人は共演も多いですが、共演を重ねられて印象は変わりましたか?

天海:まったく変わらないです。
最初からずっと、古田さんは“神様”! 舞台の上にいてくれれば本当に心強くて頼りになるし、ついていけば間違いないっていう方だから。古田さんが舞台にいてくれたら勝ったも同然。絶大な信頼感がありますね。

古田:こんなに華があってかっこいい女優さんいないですよね。“寄らば大樹の陰”の大樹ですから。絶大なる安心感ですよ。
隣でふざけていればいいだけだもん。

天海:古田さんは器が大きいから。ちゃんとその人の目線に下りてお話してくださるし、すごく優しい人なので。なんにも言わないけど、いっつも気にしてくれている。

古田:ゆりちゃんは気ぃ遣い。自分への責任感が強い人で、みんなに迷惑をかけたくないとか、そっちから考える人だから、みんな信頼するんだよね。
敵対する役も、バディのような役もやってきたけど、おいらもゆりちゃんも役に左右されるような俳優さんじゃないから。役に入りこむやつって芝居が下手なやつだけだから。

天海:書かないでください~(笑)。普段は仲良しだけど、敵対するお芝居する時はそれはそれで楽しいですね。

――今回は、劇団☆新感線初体験の若い俳優さんもいらっしゃいますが、天海さんは初めて新感線に出演された時に驚かれたことなどはありますか?

古田:やりやすかったでしょ?

天海:やりやすかったですね。宝塚でもそうだったのですが、ここで出てきて、ここで止まって、ここでせりふを言ってっていう振付のような演出をされるので、それに戸惑うことはなかったです。逆に野田秀樹さんの舞台に出た時には、“うわぁ! なんでみんなこんなに自由に動けるんだろう!”“私全然動けないんだ…。何やってきたんだろう、私”って思いました。

――新感線ルーキーの皆さんに何かアドバイスはありますか?

天海:アドバイスなんて、そんな全然。皆さん真っすぐで一生懸命だし、すごくドキドキもしながらワクワクもしてくれているから、そんな人たちと一緒にこの舞台を作れることがうれしいし、新感線や先輩たちのいいところをどんどん盗んでどんどん身に付けて、それぞれの場所に帰って行ってほしい。

古田:こういう作り方もあるんだよっていうね。これはこれで楽しいんだって思ってもらえれば、やりがいがあるかな。

天海:舞台の上で、見得を切らせてもらえるってなかなかないんですよ。新感線ならではの見得の切り方ってあるから、それはすっごい勉強になると思う。どの角度でバーンっていくとお客さんが見てくれるのか、タイミングや間の引っ張り具合とか勉強になると思うよ。演出のいのうえひでのりさんは、その人が立つように演出されますしね。普通のお芝居じゃできないじゃないですか、見得を切るって。絶対武器になると思うんだけどな。

■新作テーマ“世代交代”は意識せず

――今回は、「世代交代」がテーマということで、先日の会見でもこの言葉が飛び交っていました。

天海:ねー! 暗にどけって言われてるんですよね、たぶん(笑)。

古田:邪魔なんだよって。

――いやいやいや…。お2人は「世代交代」を意識されることはありますか?

天海:ないですよね?

古田:いやー、考えない。呼ばれている限りはやっておきゃいいんだろうなって。

天海:だって、劇団☆新感線なんて、後から入ってくる人はもういないわけじゃないですか。だから、世代はもう交代できないんですよ。

古田:(中村)倫也や、(生田)斗真、(早乙女)太一なんかがメインをやってくれて、劇団員は楽するほうに回るっていうんなら、世代交代ってことでOKだけどね。

天海:ダメですよー!

――逆に追い上げる立場だったころは、「世代交代してやろう!」みたいな意識はありましたか?

天海:そんなこと思わないでしょう。先輩たちってやっぱり、そこにいらっしゃるだけの重みがあるから。そこを抜いてやろうなんて思えない。

古田:そんなこと思うやついるのかな? 番手ってことを考えると、一番上に載っちゃったら、おいおいこいつは困ったぞってことになるでしょう。興行の世界では当たり前のことなんですけど、てめえが一番トップに出ちゃって客入んなかったら、それおいらのせいじゃんってことになるから。世代交代してやるなんて思わないよね。

天海:責任重いものね。その人よりも自分が確実にできるかどうかって、まず自分を振り返るじゃないですか。そんなこと思えないですよ。

――天海さんは今年、初舞台から35周年の節目の年となります。

天海:え! そうなんですか!? いやだー、自分が何年やってたかなんて忘れてたのに!(笑)。(スタッフに向けて)私、今年、35周年らしいよー! 10周年も20周年も祝われたことないよ! なんせ自分でも忘れてるから(笑)。

――振り返ってみると、どんな35年でしたでしょうか?

天海:その時はいろいろ考えたり、いろいろ経験したりしたのかもしれないけど、振り返るとあっという間だったよなーって思う。

古田:過去はあっという間なんだよな。

――古田さんも2年後には40周年ということで…。

古田:そうそう。

天海:やだー。

古田:しょうがない。それだけ長い間やってきたわけだから。18で劇団員になってもうすぐ40年もいんだって。辞めもしてないし、そらそうなるわって。そんなに自己顕示欲がないのと、別枠でプロデュース公演したりしていて、それは自分が主役でとかじゃないし、かなりいい加減な状態でやっているからなんとも思わないのかな。

天海:すごいことですよ…。

――今作の五右衛門とアンヌのバディぶりも楽しみなのですが、今後お2人でやってみたい役柄はありますか?

天海:えええー! 古田さんがいたら安心だから、どんな関係の役でも…。

古田:ゆりちゃんの息子! しかも、赤ちゃんの役。

天海:なんでですか~。

古田:セリフも言わず寝っころがったまんま、あうあう言ってんの(笑)。

天海:ずるい!(笑) ないない、ないですから!

(取材・文:編集部 写真:高野広美)

 2022年劇団☆新感線42周年興行・秋公演 新感線☆RX『薔薇とサムライ2-海賊女王の帰還-』は、新潟・新潟県民会館 大ホールにて9月22~25日、大阪・フェスティバルホールにて10月5~20日、東京・新橋演舞場にて11月1日~12月6日上演。※大阪、東京公演は9月18日よりチケット発売。