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「小学生の頃から転校が多かったせいか、人を冷静に観察するような子供で、『早く大人になりたい』とずっと思っていました。女子同士のグループ付き合いも面倒くさくて、どこか冷めていましたね」と自らの幼少期を振り返る。そんな少女はやがて思春期を迎え、高校を卒業する。その時にふと胸をよぎる思いがあった。「私ってなにもない、空っぽだ」……。
「自分を変える何かを求めて飛び込んだのがAV業界。『簡単に飛び込めるような世界じゃない』のはわかっていました。でも『自分は一体何者なのか?』という探求心の方が勝った」と当時の心境を明かす。ところが「踏み込んだからには極めたいという気持ちもあった一方で、やはりとても難しい世界でした。仕事をしていく中で、どんどん“及川奈央という別人格”を作るようになっていった。
2004年のAV引退後、深夜バラエティで活躍。しかし及川自身は「当時バラエティ番組には沢山出演させていただきましたが、それはすべてセクシー要因。自分で仕事を選べる立場にはないし、前職で知名度が上がったことはわかります。でも葛藤ばかりだった」と知られざる苦悩を一人抱えていた。「一般人に戻ろうか」そう考えていた矢先、テレビ東京系深夜ドラマ『ファンタズマ~呪いの館~』の1エピソードを演出する機会を得る。それが及川の人生観をガラリと変えた。 「監督業のすべてを学び、作品創りのすべてを経験させていただいて、もの創りの楽しさにハマりました。初めて“楽しい”と感じることができ、達成感がありましたね」という及川のもとに、また運命的な出会いが訪れる。後に今回の映『ヲ乃ガワ‐WONOGAWA‐』を手掛けることになる山口ヒロキ監督による携帯配信用ムービー『葬儀屋月子』への、セクシー要素ゼロでの女優出演。そこから演じる事への渇望が生まれた。
「『ファンタズマ』も含めて、それがお芝居の世界を探求してみたいと思ったきっかけです。初めて本当の自分を見てもらえた気がした」と自身の岐路と捉える。以降どんな些細な舞台でも役がもらえるならば、二つ返事で出演を快諾し、女優としてのスキルを磨いてきた。そして2011年、舞台女優の久下恵美と演劇ユニット「類類~Lui Lui~」を結成。自らが主宰となって、大好きな作品創りをし、舞台女優として充実した日々を送っている。
今年は、AV引退後10年という節目。「私はいつでも辞めていい、この業界には未練はないと思ってきましたが、もう少しだけ“及川奈央”としてのネームバリューを借りて、旅を続けていきたい」と前を向く及川は「それは、ようやく自分が見つかったという実感があるから」と噛みしめる。あてのない旅かもしれないが、及川は進むべき道を着実に見つけている。
映画『ヲ乃ガワ‐WONOGAWA‐』は11月1日より、シアター・イメージフォーラムほかにて全国順次公開。
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