音楽家としては天才だが……

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「ブランド品を購入し、誕生日には数十万円のワインでお祝いしている」
「文春オンライン」(10月22日配信)

 音楽プロデューサー・小室哲哉とKEIKOが離婚調停中だと、ウェブサイト「文春オンライン」が報じている。

同サイトによると、小室とKEIKOは5回目の離婚調停に入ったが、ネックになっているのが「婚姻費用分担請求」。くも膜下出血を起こしたKEIKOは現在、大分の実家に身を寄せ、小室は東京に住んでいるが、婚姻が継続している以上、KEIKOは生活費などの婚姻費用を請求する権利がある。小室は2008年に詐欺事件で逮捕された後も、年収が1億円切ったことはないと話しているものの、婚姻費用は月に8万が妥当だと主張しているそうだ。

 調停中の小室には、新恋人の存在も明らかになっている。相手は2018年1月に「週刊文春」(文藝春秋)に不倫相手として撮られた看護師のA子さん。関係は今も続いており、港区にある小室の自宅に、A子さんとその家族を泊めているという。

 不倫報道がなされてすぐ、小室はすぐに会見を開く。内容をまとめると、妻であるKEIKOはくも膜下出血の後遺症で「小学校4年生の漢字ドリルをやっている」状態で、大人の女性としてのコミュニケーションが取れなくなってしまった。介護疲れから精神的なよりどころをほかの女性に求めてしまったが、男性としての機能を失っているので不倫ではない。しかし、責任を取って引退すると小室は述べた。

 不倫の理由が“介護”であるのなら、世間サマは情状酌量の余地を認めるらしい。「介護で疲れた人が、ほかに救いを求めてどこが悪いのか」という意見や、「小室を引退に追い込んだ」として、不倫を報じた「文春」を責める声もあった。

 介護をしているなら、不倫をしてもいいというのもおかしな理屈だと思うが、それはさておき、小室が介護しているという話を、私はまったく信じることができなかった。介護とは、単なるヘルプではなく、介護する側のメンタルや日常をも蝕んでいく。そんな面倒くさいことを、小室ができるとは思えなかったのだ。

あまにも冷酷だった、華原朋美との別れ

 小室は、面倒なことから徹底的に逃げるタイプなのではないかと思った理由は、華原朋美との“別れ方”が、私にはあまりにも冷酷に感じられたからだ。かつて小室と交際、同棲していた華原は、小室との別れを『華原朋美を生きる。』(集英社)で以下のように説明している。

 レコーディングでロサンゼルスに行ったものの、小室から連絡はなく、ホテル移動を命じられ、そこでもずっと小室に会えなかった。同棲していたマンションにも小室が帰ってくることはなく、携帯の番号は変えられ、別れ話をすることもなく、目の前からいなくなった。

 小室にも言い分はあると思うが、一時は一緒に暮らした人であれば、ほかにも別れ方があったのではないか。仕事においても、プライベートにおいても、突然一方的に関係を切るという小室の別れ方は「自分にとって面倒になったものはポイ捨てする」という性質の表れのように感じ、「プライベートのいざこざを仕事に持ち込むべきではない」といったビジネス上の判断とは思えないのだ。こうして、和製マライア・キャリー、現代のシンデレラとして崇められていた華原は、一瞬でその地位を失い、長い低迷に苦しむことになる。

 そんな華原との一件から、私は「介護をしていない」と決めつけていたわけだが、当たらずといえども遠からずだったようで、昨年7月、KEIKOの親族が「文春」で、小室が記者会見で語った内容は「ほとんどウソ」と反論。

「漢字ドリルをやっていたのは、5年前」「小室は介護などしていない」「そもそもKEIKOは要介護ではない」などと主張していた。どちらが真実かは確かめようもないが、「女性セブン」(小学館、19年11月7・14日号)の記者に直撃され、きちんと応じているKEIKOを見るに、小室の言っていた「大人としてのコミュニケーションが取れない」ということはなさそうだ。

 そして小室は、現在離婚調停において、KEIKOには月8万円の生活費しか送れないと主張しているといい、これもまた「面倒なことから徹底的に逃げている」ようにも見えるが、一方で新恋人には相当貢いでいるようだ。「文春」によると、「小室さんは離婚に向けてKEIKOに対しては極力お金をかけようとしない一方、A子さんにこれまで随分とお金を使ってきた。海外での仕事のたびにブランド品を購入し、誕生日には数十万のワインでお祝いしている」という。

 KEIKOが気の毒だと思う人もいるだろう。

しかし、かつてはKEIKOも「カネを貢がれる側」だったのである。

 小室は華原と別れた後、自らがプロデュースするグループのdosのAsamiと結婚して一子をもうける。しかし、わずか10カ月後に離婚し、その8カ月後にKEIKOと再婚している。番組名は失念したが、新婚時代の小室とKEIKOに密着した番組を見たことがある。朝起きてすぐ、KEIKOは水がわりに高級シャンパンを飲み、ブランドショップで「ここからここまで、全部ちょうだい」と命じる。だが、この頃、小室の家計は実は火の車だったそうだ。

 09年に放送された『芸能界の告白』(フジテレビ系)で、小室自身が当時のことを回顧している。一時は100億円以上もの資産を持つと言われていた小室だが、香港の音楽ビジネス会社に対する投資の失敗や、小室の作った曲がヒットしなくなったこと、レコード会社との契約解除によってプロデュース代約18億円を返金する必要に迫られるなど、金欠に陥っていく。KEIKOと結婚したときは10億円もの借金を抱えており、KEIKOは懐事情を心配していたそうだが、小室は「おカネのことは何一つ心配することはない」と強く言ったそうだ。

 超高級マンションに住み、KEIKOにも高級なプレゼントをふんだんに送るなど、全盛期と同じ贅沢な生活を送っていた小室夫妻。しかし、その一方で“前の女”であるAsamiには慰謝料や養育費を支払っていなかったと、Asami自身が「週刊ポスト」(小学館)に告白している。同誌によると、Asamiとの交際が始まったのは小室と華原が交際している頃。Asamiが妊娠したことで、2人は結婚することになるが、結婚5カ月を迎えた頃に、小室がKEIKOと浮気していることに気づいたという。気に入った女にはふんだんにカネをかけ、飽きたら節約が、小室流の愛し方なのかもしれない。だとするならば、KEIKOも“順番”が来たという話だろう。

 なお、その後、金策に困った小室は、自身は音楽著作権を持っていないにもかかわらず、ある投資家に「著作権を10億円で売りたい」と申し出て、前金の5億円をだまし取るという詐欺事件を起こし、逮捕されている。

 『芸能界の告白』を見ているとわかるが、小室は神妙な顔をして事件を語るものの、「ありがとう」と「ごめんなさい」を言わないことに気づく。「感謝する」「謝る」という基本的な概念が欠落しているように見えるが、音楽以外のことはからきしダメなのが「天才」というものなのだろう。

 そう考えたとき、あらためて「小室のそばにいる」ということの難しさを感じる。仕事、プライベート問わず、こういう人のそばにいる側は、その「覚悟」を問われるからだ。何かをやってあげても、当然、感謝もされないし、もしかしたら平気で後ろ足で砂をかけるようなことをされるかもしれない。それでもいいと思える人でなければ、この「天才」のそばにいてはいけないと思う。一方、小室も小室で、KEIKOとの離婚は避けられないだろうが、もう結婚するのをやめたらいいのではないだろうか。結婚しなければ不倫と騒がれることもなく、パートナーチャンジをとがめられることもない。

 しかしこうして忠告をしたところで、小室は自分都合の人であり、また、そんな小室を受け入れようなどと、覚悟もないまま変なきまぐれを起こす女性がいるのも世の常。元彼女、元妻、そして未来の女性たち、お気の毒様と言うしかない。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。