北朝鮮海軍最大の新型駆逐艦「崔賢(チェ・ヒョン)」号が、早ければ来月にも朝鮮半島南端を回り、対馬海峡周辺を通過する可能性が浮上している。米専門メディアNK Newsは29日までに、衛星画像分析に基づき、同艦が西海(黄海)側の南浦沖で航行している様子を確認したと報じた。

これまで限定的だった試験段階から一歩進み、本格的な長距離航海試験に移行した可能性があるという。

「崔賢」号は排水量約5000トン級で、北朝鮮が建造した艦艇としては最大級。金正恩総書記が「新世代多目的攻撃型駆逐艦」と位置づけ、海軍近代化の象徴として扱っている。3月には艦上から戦略巡航ミサイルを試射し、北朝鮮メディアは海上発射型の核抑止力強化を強調した。米海軍研究協会(USNI)などによれば、同艦は巡航ミサイルや短距離弾道ミサイルを搭載可能な垂直発射装置(VLS)を備え、「核搭載能力を持つ艦艇」として宣伝されている。

注目されるのは航路だ。

金正恩氏は5月の視察で「崔賢」号について、6月中旬までに海軍へ引き渡す方針を改めて示し、東海(日本海)艦隊運用に向けた準備を急ぐよう指示したとされる。だが同艦は西海側の南浦で建造・試験されており、東海艦隊に移るには海上で朝鮮半島を回り込まなければならない。最も合理的なルートは、朝鮮半島南端から対馬海峡を抜け、日本海へ入るコースだ。

軍事専門家の間では「北朝鮮がわざわざ海上自衛隊や韓国軍の監視圏に姿を見せるのか」との見方もある。ただ、新型艦の遠洋行動能力を誇示するという観点では、逆に監視されること自体が政治的宣伝になりうる。北朝鮮は近年、新型ミサイルや潜水艦を“見せる兵器”として活用し、実戦能力以上に心理的威圧効果を重視してきた経緯がある。

一方で、戦闘即応性を疑問視する声も少なくない。NK Newsなどの分析では、5000トン級艦の建造を急いだ結果、整備基盤や専用基地が追いついていない可能性が指摘されている。実際、東海側では大型艦受け入れ施設の整備が遅れているとの観測もある。

それでも、もし来月以降、対馬海峡周辺で見慣れぬ灰色の大型艦影が確認されれば、それは北朝鮮海軍が“沿岸防衛部隊”から一歩踏み出そうとしている象徴的瞬間になるかもしれない。

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