北朝鮮の金正恩総書記が1日、朝鮮労働党中央幹部学校創立80周年記念行事で、党幹部らに対し「権勢主義や官僚主義、不正蓄財など反人民的現象」を厳しく批判した。朝鮮中央通信によれば、金氏は「党幹部育成は今日ほど切実かつ運命的な課題として提起されたことはない」と述べ、幹部の忠誠心と「人民性」の強化を強調した。
しかし北朝鮮社会の実態を見れば、「官僚主義」と「不正蓄財」は金正恩時代に突然始まった現象ではなく、遠い昔から存在したものだ。
北朝鮮では長年、国家が幹部や公務員に十分な給与を支給してこなかった。特に1990年代の「苦難の行軍」以降は配給制度が事実上崩壊し、下級幹部や治安機関職員、検閲担当者らは、生き残るために自ら「稼ぐ」必要に迫られた。
その結果として広がったのが、職務権限を利用したワイロの徴収である。市場取締りを見逃す見返り、通行証や営業許可の発給、密輸や運搬の黙認など、行政・治安・司法のあらゆる場面で金品授受が常態化した。ある意味での「独立採算制」である。
本来、行政機関は国家が配分する予算によって運営されるものだ。しかし北朝鮮では、中央から地方機関、国営企業への予算配分が極めて乏しく、現場組織は事実上、自力で運営資金を確保しなければならない。地方党組織や保衛機関、安全機関、さらには軍部隊に至るまで、幹部たちは「外貨稼ぎ」や各種徴収によって組織を維持しているのが実情だ。
ある脱北した元幹部は「上から予算は来ない。しかし会議も忠誠資金も行事準備も求められる。結局、下から搾り取るしかない」と証言している。
市場経済化を公式には認めない一方で、実際には賄賂と非公式資金によって国家機構を維持しているのが北朝鮮体制の現実と言える。
それにもかかわらず、最高指導者が「反人民的現象」をもっぱら現場幹部のモラル問題として批判する姿勢は、確信犯的な責任転嫁なのか、あるいは本当の世間知らずなのか。
金正恩政権は近年、「人民大衆第一主義」を繰り返し掲げ、幹部に対して住民への威圧的態度を改めるよう要求してきた。しかし一方で、過剰な忠誠競争と資金上納を強いる体制構造そのものには手を付けていない。
幹部腐敗は個人の堕落だけでなく、国家が給与も予算も保障しないまま無限の忠誠だけを要求してきた結果なのだ。








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