今回、茨城県警の同様のデータを、もっとたくさんゲットした。2020年12月~2022年3月まで、1年と4カ月分のデータだ。以下、左から順に、超過速度、2020年の12月分、2021年分、2022年の1月~3月分だ。
30未満 40件 281件 46件
40未満 4件 71件 13件
50未満 1件 12件 0件
50以上 0件 1件 0件
合計 45件 365件 59件
超過速度が30キロ(高速道路等では40キロ)未満には青切符が切られ、反則金(上限4万円)の納付書が交付される。違反点数は1~3点。それ以上は赤切符の対象だ。ペナルティは罰金(上限10万円)または懲役刑(上限6カ月)となる。違反点数は6点か12点。
可搬式が登場するまで、固定式のオービスは赤切符のスピード違反だけを取り締まっていた。可搬式が登場したとき私はこう確信した、「警察庁はオービスを赤切符の制約から解放するのだな!」と。遅くとも2014年からずっと雑誌等にそう書き続けてきた。
とにかくだ、「可搬式オービスは青切符も取り締まるぞ!」と宣言することもなく、しらっと、しかしがんがん、青切符のスピード違反を取り締まっているのである。私としては感慨深い。 ※固定式は現在のところ赤切符の違反だけのようだ。
ちなみに、茨城のこのデータを月当たりで見てみると…。2020年は45件、2021年は約30件、2020年は約20件。ん? なんかどんどん減っている。茨城のスピード違反常習者たちが知恵をつけた? そうかもしれない。だが、じつは、ちょっとびっくりな事態が起こっているのである。
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■可搬式の取り締まり件数、怪しい増減!
警察庁に開示請求して得たデータによれば、全国の可搬式オービスの「撮影枚数」(※)はこうだ。 ※それまで「取締り件数」だったのが2020年、突然「撮影枚数」になった。
2020年 1万1568枚
2021年 2万6580枚
約2.3倍、大した増え方だ。ところが、47都道府県警察がみんな増えたわけじゃない。減った警察が、なんと15もある。一部拾ってみよう。
愛知 1459枚 → 411枚
香川 756枚 → 498枚
宮﨑 315枚 → 179枚
秋田 201枚 → 70枚
長野 59枚 → 15枚
富山 46枚 → 1枚
なんでそんなにも減るの? おかしいでしょ。私の読みはこうだ。
・可搬式のメーカーは2社ある。世界的な企業と、日本の老舗企業だ。
・警察庁の中に、天下りの関係か、老舗企業をゴリ押しする一派がいる。ほとんどの警察は老舗企業の可搬式を購入した(させられた)。
・ところが、なんと、老舗企業の可搬式は性能に問題があった。
・ゴリ押し派は、老舗企業製の実績を上げねば格好がつかないからと、地方警察の尻を叩いた。
・地方警察は、前にナンバーがない二輪車について白バイで追いかけたり、とにかく実績を上げようと頑張った。
・オービスの取り締まりは違反者を後日出頭させて違反切符を切るのだが、その件数を数えず、ずばり「撮影枚数」、ストロボが光った数を、もしかしたら数えているのかも。そういうことも視野に入れ、ゴリ押し派は「取締り件数」を「撮影枚数」に変えさせた?
・一方、無理に取り締まった結果、ドライブレコーダーで誤測定が暴かれてヤバイことになったり、老舗企業製の可搬式にほとほと嫌気がさし、頑張りを放棄した警察も…。
以上は、オービス裁判をさんざん傍聴するなど、約40年にわたり交通違反方面を取材、研究してきた私の読み、大胆な仮説だ。内部の人からは「おいおい今井君、そこは違うよ(笑)」と言われる部分もあるだろう。真相はどうなのか、今後も注目していきたい。
【お詫びと訂正】 大阪のデータについての記事で私は、「遠い記憶」としてこう書いた。マニア氏から何か情報を得て「じゃあそれ開示請求してみましょう」となり、大阪のデータを私がゲットした、と。申し訳ない、話は逆というか、大阪のデータをマニア氏からいただき、「じゃあ他の警察にも開示請求してみましょう」となった、そうしてゲットしたのが今回の茨城県警のデータなのです。お詫びして訂正します~。
文=今井亮一
肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。