いま、空港の売店や観光地の土産物屋、大型雑貨チェーン店、100円ショップ、バラエティショップなどで売られ、子どもたちのハートをわしづかみにしている消しゴムを知っていますか。

「おもしろ消しゴム」又は「分解消しゴム」と呼ばれるもので、食べ物や文房具、スポーツ用品、動物など様々なかたちがあり、どれも「分解して遊べる」のが売りだ。


しかも、リアルなつくりは食玩のフィギュアのようで、たいやき版など、ちょこっとあんがはみ出ていたりする「遊び心」も心憎い。
学校シリーズなどは、ハサミが実際に動かせたり、鉛筆削りの取っ手が回せたり、ランドセルのフタがあけられたり、これでもかというほど芸が細かい。
先日、ある編集部でコレが話題になったのだが、いい大人たちが夢中で分解したり、動かして遊ぶという異様な光景が見られたほどだ。

これらは物販のほか、塾、歯医者、耳鼻科などで「販促用」として扱われることも多く、治療後に「頑張ったね」などと子どもにプレゼントされるケースも多い。
そんな気になる「分解消しゴム」をつくる埼玉の会社「イワコー」の工場が見学できると聞き、8月下旬に実際に足を運んでみた。

この日は、親子連れの20名程度が参加していた。
実はここの工場見学は大変な人気で、年間1万人以上が訪れているのだという。
案内人として登場した「わたなべさん」は、達者すぎるトークが、まるでディ○二ーランドのおにいさんか、芸人さんのよう。
毎日24時間休みなく動く機械や、消しゴムに色付けをする「顔料」も見せてもらった。この工場で使う色は、全部で6300種という。想像もつかない細かい色分けのバリエーションも、リアルさの秘密なのだろうか。

案内人「わたなべさん」は子どもたち、母たちをマメにおちょくりつつ、説明を続けていった。
自分自身、これまで単に「よくできたオモチャ」だと思っていたのだが、実はイワコーの分解消しゴムは、消字率(字が消える確率)88%と、立派によく消える消しゴムなのだった。
ちなみに、かつて大ブームとなった「キン消し」などは消字率30%程度。現在、「消しゴム」と名がつくものは消字率80%以上と法的に定められているのだそうで、
「お母さんたち、『これ、オモチャでしょ? 本当に字が消えるの?』とか内心思ってるんじゃないですか」と、まるで心の中を読まれているようなツッコミに、ちょっとドキドキする場面も。
そうです、楽しいだけじゃなく、「ちゃんと消える消しゴム」なのでした。初めて知りました。
さらに、色をつけた材料を120度で溶かし、金型に流し込み、冷やされ、あっという間にパーツが完成される様子を見学。


フロアを移動し、パーツを手作業ではめこみ、袋づめする地道な作業を見学させてもらった後、実際に組み立て体験にチャレンジした。
「組み立て、超楽しいー! 大きくなったらこの仕事やりたい!」と、目をキラキラさせて言う子どもの傍らで、「内職に斡旋してもらおうかしら。でも、これ、10個やっても○円くらいかしら」などと、現実的に算段する母たちのえげつないコメントも……。

実際、この分解消しゴム、かなり良い出来で、HPからも1個から買えるのだが、単価はなんと50円!!
おまけに、外国ですぐに類似商品がつくられてしまうという、厳しい世界だ。

消しゴムコレクターとして知られる、楠田枝里子が「いちばん好きな消しゴム」としているなど、大人のコレクターもたくさんいそうなクオリティーの高さゆえ、つい、「もっとちゃんとお金をとれば良いのに」などと思ってしまうけど……。
同じくイワコーの岩沢さんによると、
「8割はお子さんのコレクターです。
50円という単価は、子どもが100円持っていって1個買えるのと2個買えるのとではだいぶ違うから。10円ガムとかと同じで、昔から同じ50円にしてるんです」
と、なんともありがたいコメントが。

ちなみに、1日約10万個がつくられ、現在、250種前後のラインナップがある。中国、香港、台湾、アメリカ、ドイツなど、7カ国に輸出もしているという。

消しゴム工場、ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
(田幸和歌子)

(株)イワコーHP
※工場見学の予約は、HPに記載された予約専用ダイヤル(048-998-5502)から。

残念ながら、11月くらいまで予約がいっぱいという状況。