出てきたふたつのサムゲタンを比べるが、見た目では特に変わりのない模様。スープを一口飲んでみても、私の舌には味の差はまったくわからない。しかしスプーンで具をすくってみると、説明を受けた生薬が確かに入っており、それを見るだけでテンションが上がる。
その姿を発見して特に興奮したのが、男性用サムゲタンに入っている「鹿角」だ。これは文字通り鹿さんのツノであり、スライスしたゴボウのようなルックスである。お店に貼られている説明によると、「血液循環を促進、汚れた血をなくし、心臓・肝臓の機能を助ける。またカルシウムが豊富で骨を硬くする」効果が期待できるという。
試しに噛んでみたが、鹿のツノそのままに硬い。しゃぶってみても何かの味がするわけでもない。しかし貴重な生薬が、サムゲタンのスープに溶け込んでいるのだろうと納得。鹿さんに感謝しながら、アツアツのサムゲタンをスープまで完食した。
さて、そのサムゲタンを食べたおかげで劇的に元気になったかといえば、そう断言できる自信はなく、一緒に女性用サムゲタンを食べた女性も、「皮膚が良くなったかと言われればそうかもしれないし、そうでないかもしれない」というあいまいな答えであった。漢方というものは続けるからこそ意味があるのかもしれない。
とはいえ単純な私は、鹿のツノのエキスを摂取したという事実だけで、今年の夏は乗り越えられる気がするのである。
2009年の伏日のうち、残る2日である「中伏」(チュンボク)は7月24日、「末伏」(マルボク)は8月13日を控えている。あちこちの食堂に「サムゲタン」の貼り紙が登場した夏のソウル。町に溢れるイベント気分に乗って、今度もサムゲタンを食べに行こうと思っている。
(清水2000)