“1人カラオケ”、“1人居酒屋”……。耳にしたことはある。
そして、やったことはないが、勇気があればできなくもないかもしれない。……たぶん。

だが、これはなかなかにチャレンジだ。“1人焼肉”。無性に焼肉を食べに行きたくなることはあるが、フラッと行くにはかなりのハードルが。必ず、誰かと連れ立って行く。
そんな種類の外食。

……だと思っていた。少なくとも、私は。しかし、もう大丈夫だ。5月11日、東京都台東区に1人焼肉専門店「ひとり」(TEL:03-5812-4097)がオープンしたのだから。

それにしても“1人焼肉専門店”って、どんなんだ? 想像できない。
だけど、すごく有意義な気がする。そこで人生未経験の“1人焼肉”を、実際に体験しに行ってきました。
お店に入ると、店内は1席1席が衝立で区切られている。漫画喫茶とも少し違う、どちらかと言うと、受験生のための自習用図書室みたいな。完全に1人の世界を満喫できる店作り。

明らかに、今までにない焼肉店の誕生だろう。
その辺りについて、同店に伺ってみた。このようなコンセプトのお店を開店したきっかけは?
「今、“1人飯”というものが話題になっていますが、そこを追求していくと『焼肉が一番、1人で食べにくいんじゃないか?』という結論に達しました」(同店・担当者)

ここに市場があるのでは? その考えの元、辿り着いたのが「ひとり」の店舗形式だった。
「ネットで検索すると、『1人で焼肉に行ってきました』という書き込みをたまに見かけるんですね。しかし、4人用のテーブルを1人で占領してしまうと目立ってしまいます」(担当者)
そこで、最初っから1人焼肉向けの店作りにしてみせた。

それだけではない。お肉も一枚から注文できる。

「通常の焼肉店だと、1人前は大体100グラムぐらいです。でも1人なのに1人前100グラムを出されると、何種類も食べられなくなりますよね」(担当者)
1人前を100グラムにしてしまうのは、店側の都合。お客が2人だろうが3人だろうが、変わらない。そこで、「お客さんの都合にとことん合わせてみよう!」と振り切ったのだ。言わば、一貫から頼める寿司屋の感覚か。ちなみに、手間はハンパじゃないらしいが……。


そんな「ひとり」で満喫した、人生初の“1人焼肉”。以下が体験レポートです。
まず席に着くと、目の前には自分のためだけの鉄板とオーダー表が。そのオーダー表には、メニューがあらかじめ記されている。その横に、注文数を書き込んでいくのだ。躊躇なく書きました。
「タン塩」「カルビ」の横に、光り輝く“1”の文字を。

そして、程なく運び込まれてきたメニューたち。両側を壁で挟まれているため、目の前にお肉が現れた途端にイイ匂い!
早速、お肉を焼き始める。……焼き上がるまでに鉄板の上をジッと見つめる、その瞬間が新鮮だ。それまでの間、上役に気をつかってお酌したり、イマイチなトークに愛想笑いで返す必要もない。純粋に、お肉のみを楽しめる空間。まさに、お腹が空いたときにはもってこい!

そして同店のウリは、お肉のクオリティにもある。
「人気メニューは、ダントツでカルビ(250円)ですね。お客さんには『高いねぇ!』と言われることもありますが、食べてしまうと皆さん追加注文されます」(担当者)
このカルビ、通常の焼肉店だと1人前で2,000円以上してしまうという高価なもの。しかし、同店ではわざわざ「上」や「特上」のランク決めをせず、儲け度外視のカツカツ価格設定で出しているという。確かに、食べてみるとジューシーでスパイシーで! やはり、私も追加注文してしまいました。

そして新鮮なのが、店内に響くスタッフさんの「新規一名様~!」という声。おかしくない。このお店では、一名様が当たり前なのだ。
「皆さん、堂々と来られますよ。みんな1人で食べてますから」(担当者)
確かに。続々と、お店にはお客さんが入ってきている。そして、大体15~30分弱で帰って行く印象がある。その中には女性の姿も見受けられ、実に全体の4割が女性客らしい。

お客さんの反響も上々で、「全国展開してください!」なんてリクエストも寄せられているという。
「お店のレイアウトや接客、システム作りなどの効率化を踏まえての店舗展開は、すでに考えております」(担当者)
新しい食文化の芽が、ここに生まれたか?
(寺西ジャジューカ)

●1人焼肉専門店「ひとり」
東京都台東区上野6-8-17 江波戸ビル
TEL:03-5812-4097
営業時間
11:00~14:00
17:00~24:00
ランチ営業
定休日 無休