災害時、物資が手に入らない状況で、もっとも困ることとはどんなことだろうか。
化粧品がない、下着が替えられない、生理用のナプキンがないなど、肌に触れるものへのストレスは、女性ならではの悩みだ。

被災地へ送られていく支援物資に注目してみると、多くの肌着や化粧品、日用品と共に、布ナプキンが送られているのに気がついた。ライフラインの断たれた状況で、果たして布ナプキンは役立つのだろうか。

『布ナプキン こころ、からだ、軽くなる』(2010年、産経新聞出版)の著者、ユーゴさんに話をうかがった。
「もちろん緊急時には、使い捨てナプキンのような、誰でも使ったことのある物資の支援が優先だと思います。ただ、布ナプキンを使うことで、固定観念にとらわれなくて済む、というメリットがあるんです」
固定観念にとらわれなくて済む、というのは、どういった意味なのだろうか。

ユーゴさんがプロデュースする布ナプキンブランド「touta.(トゥータ)」の布ナプキンの実物を見せてもらった。
差し出されたのは、ハンカチ大のサイズの、まさに「布」そのものだった。見慣れた生理用ナプキンとは似ても似つかない形状である。
正方形の布をタテに四つ折にして、肌にあてがう。「量が少ない日だったら、使った後はまた折り返せばいいんです」と言って裏返す。なるほど、別の新しい面が肌に触れるよう、たたみなおして使用することができる。

被災地への物資支援には、「今、被災地に布ナプキンを送る必要があるのか、時期尚早ではないか」と、反対する声も少なくはなかった。

しかし、物資の支援を発表するとすぐ、ミクシィのコミュニティページへ被災地からの声が届いた。
「私は地震の時に調度、生理でした。布ナプキンを使っていたので、折り返して使用出来るのはとても便利でした。最低限の荷物しか持っていなくても、蒸れず快適に過ごせました。他の被災者の方も、冷え込んだこの状況で布ナプはとても良いと思います。ありがとうございます」(3/16 コメントより抜粋)
災害時だからと言って、使ったことのない布ナプキンを使い始めるということは、確かに難しいことかもしれない。しかし、布ナプキンを使った経験のある人にとって、とても嬉しい物資であることは間違いないようだ。

「布ナプキンのいいところは、何より、あたたかい、ということです。下着を換えられない時も便利ですし、ちょっと尿もれがあるような時も使えます。自然素材の布ならば、その場で燃やしても安心です」と、ユーゴさんは言う。
「布ナプキンと言っても特別なことではなくって、布をあてる、ということだけでいいんです。昼用・夜用・パンティーライナーと、あれこれ用意する必要もありません」
今まで使い捨てにしていたものを、洗ってもう一度使う。
折ったり重ねたりして何度も使う。布ナプキンを使うようになると、いざという時、ものがないから困るのではなく、ないものを何で代用できるか、自然と考えられるようになるという。

初めて布ナプキンを目にしたとき、「えっこれがナプキン?!(ただの布にしか見えない……)」という驚きがあった。生理用品というものに対する固定観念を、覆されたのである。
東日本大震災を起点に、われわれの生活は、変革を迫られている。
当たり前の便利さや、当たり前に消費してきたものたち。
新しい生活スタイルに変えていくということは、こうした驚きをあらためて体験していくことなのかもしれない。
(木本一花)
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