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昨年の『THE MANZAI 2011』で悔しい負けを経験し、ふっきれたことで“神田の素を生かす”という新たなスタイルの漫才を完成させたハマカーン。
彼らはどんな胸中で『THE MANZAI 2012』という大会を駆け抜けたのか。


インタビュー後半では、組み合わせ決め~決勝当日の心境、そして『THE MANZAI』という大会への思いを語ってもらった。

紙一重だったグループAの戦い

―― お2人は、ネタの出番順を決める『THE MANZAI 2012 運命の組み合わせ挑戦会SP』(12月2日放送)をお仕事で欠席されましたよね。その放送はマネージャーの“マネカーン”さんが代理出席したわけですが、ご自身たちでは何番手ぐらいにいきたいと思っていたんですか?
神田 どこでもよかったんですけど、予選で2回ともオジンオズボーンに負けていたので、僕はオジンオズボーンとは当たりたくなかったんですよ。でも、生放送中に電話でマネカーンに「どこでもいいです」って言ったら、マネカーンがオジンオズボーンのいるグループAの方に歩いていったんですよね。だから慌てて「やっぱりCブロックにしてください!」って言ったんですけど、途中で「でも、マネージャーの客観的な判断ではAだったんだな」と思って、最終的にはマネカーンの判断に任せることにしました。
浜谷 僕は初めからAがいいなと思ってたんですけどね。


―― それは、オジンオズボーンさんがいる・いないに関わらず、ですか?
浜谷 いや、あの日オジンオズボーンは篠宮くんが欠席していて、高松くんしかいなかったんですよ。で、高松が1人ポツンとグループAのイスに座っていたので、Aが弱そうに見えたんです(笑)。

―― (笑)。浜谷さんは「ここと当たるのはイヤだな」と思っていたコンビはいなかったんですか?
浜谷 千鳥さんだけイヤでしたね、個人的には。

―― 千鳥さんは予選1位でしたもんね。
浜谷 いや、予選順位は関係ないんです。
芸人としての相性的なものというか…、負けるとしたらこういう漫才師だろうなって思っていたので。
神田 ええ? 今「負けるとしたら」っていう発言を聞いて驚いてますよ(笑)。勝つ気でいたんかい!
浜谷 まぁまぁ、そうなんだけどね。

―― お2人とも謙虚ですね…。
浜谷・神田 (2人同時に)いや、謙虚じゃないんですよ!
神田 本当に、無理だろうなと思ってたんです。
浜谷 でも、今年ほど予選の順位が気にならなかった年もなかったですね。
3位とか2位って言われても「ふーん、そうか」ぐらいにしか思わなかったので。

―― では、同じグループで戦う相手として、テンダラーさん、ウーマンラッシュアワーさん、オジンオズボーンさんというメンツはいかがでしたか?
浜谷 いやー…(しばし考えて)、笑いの取り方とか、ボケの数とか、4組とも漫才の形が全然違うじゃないですか。本当に、僕らはたまたま勝てたっていうだけだと思うんですよ。もう、運ですよね。
神田 だって、ウーマンラッシュアワーとは1票差ですもん。誰があがっても文句は出なかったと思います。

浜谷 ただ、もし勝機みたいなものがあったとしたら、僕らは最初に静かなトーンから入って、後半で徐々にテンションがあがっていく形の漫才じゃないですか。スタートダッシュがないっていう。他の3組はロケットスタートで最初からガンガンウケていたので、いい意味で4組の中では浮いていたのかもしれないですね。もう本当に…紙一重でした。

“思い出づくり”でネタを変えた

―― なんでも、出番直前に1本目にやろうとしていたネタと2本目にやろうとしていたネタを入れ替えたそうですね。
浜谷 そうなんですよ。
本番10分前に神田さんが急に不安な顔をして「あの1本目ってどうなのかな?」って言い出して。だから僕、これはいかんと思って、「あれで行くって決めたんだから」ってちょっと怒り気味に諭したんです。それで黙ったから大丈夫かなと思ったら、みんなで舞台袖に歩いて行く途中でまた「1本目なんだけどさ、僕はどっちでもいいんだけど、どっちがいいと思う?」って聞いてきたんですよ。仕方ないから僕が逆に「お前はどっちがいいの? はっきり言いなさいよ」って聞いたら、神田さんが「たぶん1本しかできない気がするから、楽しい方をやりたい」って言ったんです。
神田 勝てるわけがないと思ったんですよ。だったら、思い出づくりとしてやっていて楽しい方のネタをやりたかったんですよね。

浜谷 つまり、僕は神田さんの思い出づくりに付き合ったんですよ。大事な決勝大会で(笑)。

―― (笑)。結果的にはファーストラウンドで審査員票4票を獲得し、ファイナルラウンドへの進出を決めました。あの瞬間の心境はいかがでしたか?
神田 去年は1票しか入らなかったので、「去年超えだ!」と思って。もうひとネタできることがうれしかったのと同時に、「本当に僕らが勝っていいんですか?」って手が震えました。
浜谷 僕はファイナルラウンドに行けるってなった瞬間、泣きそうになりましたね。実は今年の春ぐらいに、「今年はいけそうな気がするな」って考えたことがあったんですよ。
神田 (驚いた様子で)へぇー!
浜谷 でも、それはだんだん薄れていって、決勝の頃には全くなかったんですけど(笑)。2本目にやったネタができたのが、ちょうど今年の春くらいだったんですよね。だから「ああ、あの時の感情は正しかったのかな」って、なんか不思議な気持ちになったんです。審査員の方から4票も入れていただいたことが誇らしくて、ちょっとウルっときちゃいました。

―― ファイナルラウンドでは1番手でネタを披露しましたが、この順番も功を奏したような気がしますね。
浜谷 いやぁ、僕は2番か3番がいいなと思ってたんですよ。
神田 そうなんだ。僕は1番がよかった。
浜谷 1番がよかったの?
神田 うん。先に自分たちのネタを終わらせて、後の2組の漫才を見たかったから。
浜谷 テレビが見たかった?(笑) お前はいつまでテレビ見る側の立場でいるんだよ!(笑)
神田 ほんと視聴者の目線なんですけど、僕は今回の大会で千鳥さんと、予選で見られなかったウーマンラッシュアワーのネタを舞台袖から見たかったんです。ガッツリ見られたから、うれしかったですね。
浜谷 (思わず吹き出して)私は1人で戦ってましたよ!(笑) でも、神田さんはもともと思い出が作りたくてこの世界に入ってますからね。

――そうなんですか?
神田 はい。『爆笑オンエアバトル』に出てみたくて、浜谷さんを誘ったんです。
浜谷 あれから13年経って、いい思い出できたなぁ?(笑)
神田 できたねぇ。

―― これからもっとすごい思い出がどんどんできるんじゃないですか?
神田 そうですね! たくさん思い出づくりできますね(ニッコリ)。

『THE MANZAI』はお笑い芸人の敗者復活戦

―― 話は戻りますが、優勝の瞬間はどんな思いがよぎったんでしょうか?
神田 なんでしょうね…。僕は4票ぐらい入った時点で、もう感動してしまって。「勝った」とかじゃなくて、評価してもらえたことがうれしくて泣いてしまったんです。で、パッと振り返ったら磁石の永沢も泣いてたから、「なんで永沢が泣いてるの?(笑)」と思って一気に涙が止まりました(笑)。
浜谷 あのメガネの2人が優勝したみたいになってましたからね(笑)。僕はとにかく、「超ラッキーだったな」と思いました。神田さんは今年優勝して泣いてましたけど、僕は去年負けて、家で日本酒を飲みながら泣いたんですよ。それで悔しくてネタのスタンスを変えたこととか、そういうことがすべてラッキーだったんだなって。

―― ひとつお聞きしたかったんですが、同じ漫才の大会でも『M-1グランプリ』と『THE MANZAI』って見ている側からすると印象が全く違うんです。芸人さんの側から見てもこの2つの大会の雰囲気って違うものですか?
浜谷 決勝は全然違うと思いますよ。
神田 まぁ、僕ら『M-1』の決勝は中継のモニターでしか見てないんですけど(笑)。予選の雰囲気はそんなに変わらないですね。どっちの大会もお客さんが緊張しているというか。
浜谷 だから、テレビで放送される決勝大会も、ピリピリした空気感のイメージがあったんですよ。でも、『THE MANZAI』はそういうピリピリ感がないんですよね。

―― お2人は去年から2年連続で『THE MANZAI』の決勝に出場されましたが、それは『M-1』の頃と比べてご自身たちのネタが良くなったのか、それとも『THE MANZAI』という大会と相性がよかったのか、どっちだと思いますか?
神田 やっぱり、自分たちが成長できたからじゃないですかねぇ。
浜谷 そうですね。俺、『THE MANZAI』と相性がいいとは思ってないですから。(しばし考えて)うーん、でも相性が良かったのかなぁ…。ずっと『M-1』の決勝を目指してやってきて、去年から『THE MANZAI』に変わった時に「なんだろう、このやりやすい感じは」って思ったんですよ。
神田 じゃあ、相性が良かったんじゃない?
浜谷 うん、そうなんでしょうね。すいません、やっぱり相性いいです(笑)。
神田 まぁ、僕らは芸歴10年を超えてますからね。『M-1グランプリ』の決勝に出ていた人たちって、芸歴7年とか8年であそこまでのぼりつめてる、すごい才能の人たちなんですよ。すごい才能のある人たちが、ものすごい努力をしてあの舞台に立ってるんです。で、『THE MANZAI』っていう大会は、芸歴10年を超えて『M-1』っていう売れるチャンスを逃した芸人たちに、もう1回チャンスをくれたんですよ。この大会自体が“お笑い芸人の敗者復活戦”みたいなところもあると思うんです。だから、こういう大会があるっていうことはすごくありがたいですね。

―― 2010年は『M-1』や『爆笑レッドカーペット』といった番組が次々に終わった年でしたが、そういったことはお2人に何か影響はありましたか?
浜谷 いやぁ、影響っていうのは特にないですよ。残念ではありましたけど、生活は何も変わってないですし。
神田 そうですね。別に『M-1』 のためにネタを作っていたわけじゃないので、たゆまずネタは作り続けないと、っていう。そういう仕事を選んだわけですから。
浜谷 芸歴1年目でも10年目でも、月に1本新ネタをおろすっていうのは同じことですからね。

―― それは今後も変わらず?
浜谷・神田 そうですね。

―― では、最後に。今後チャレンジしてみたいことはありますか?
神田 僕は、単独ライブの全国ツアーをやりたいです! さらに、その単独ライブがDVDになったらうれしいですねぇ。
浜谷 僕は、体を張るお仕事をやらせていただきたいですね。トークだとそんなに気の利いたことも言えないし、大喜利とかもできないので…(笑)。
神田 浜谷さんは体が頑丈だからね。
浜谷 そう。とにかく体は丈夫なので、サバイバル系のお仕事をお待ちしております!(笑)
(青柳マリ子)