フランスには忍者寺がある。パリの郊外を歩いていたら、たまたま「忍者寺(Temple du Ninja)」という建物を見つけた。
(寺だけど)鳥居をかたどった入口、窓には赤字に「忍」の一文字が怪しく目立つ。一体どのようなことが行われているのか。気になるので門を叩いて境内に入ってみた。ボンジュール、たのもー! 

威勢良く中へ入ったら寺院内(といっても実は通りに面したビル)は土足厳禁。フランスだけど下駄箱が備えられていた。「フランスなのに靴を脱ぐとはいかに」と一瞬焦って立ち尽くす。これも忍びの計算の内なのだろうか。どうしようかオロオロしていると、入口横にある受付のお姉さんが「こんにちは。どうなされましたか?」と優しく声をかけてくれた。

お姉さんによると、忍者寺とは実は格闘技道場のことで、ここでは空手、居合、ブラジリアン柔術、カポエラ、ムエタイ、クラブ・マガ、アーニスを教えているそうだ。ズンバや瞑想、指圧のクラスもある。忍術クラスは柳生心眼流と八光流柔術の資格を持つフランス人が武術を教えるというもの。
日本には計3年間滞在したことがあり免許皆伝も持っているという。

料金は数あるクラスの中から週2つコースを選択でき1年間で450ユーロ(約5万8000円)とお値打ち。「体験入門もできますよ」と言うので早速、フランス人たちに交ざりながら忍術クラスに参加してみた。

道場へ入る時は、もちろんフランス人も日本のように一礼をして入っていく。最初に柔軟体操をして身体をほぐし、その後はグループに別れて、先生が見回るなか先輩が後輩にアドバイスしながら色々な型を順にさらっていく。道着を着たフランス人たちに教わりながら「横片手一文字の構え」などをぎこちなくやってみたが、普段運動不足の記者はなんだか微妙……。クラスには子どもの時から10年以上通い続けている人もいて、身体も柔らかく動きも機敏。日本人の記者より十分忍者っぽい。

ここの道場の忍術クラスに登録しているフランス人は約60人。生徒の登録した理由は様々で日本に興味がありそうな人ばかりでなく、男性以外に女性も結構いた。忍術クラスは火曜と水曜の週2回、開講しているそうで、火曜は型を学び木曜はコンタクトを伴う実践編を行っている。このクラスの精鋭は先日のジャパンエキスポでも演舞を行った。


先生によれば、その時々の流行り廃りで増減するが、「忍術」を学ぶフランス人はフランス全土で2〜3千人いるのではないかとのこと。それだけいれば程度の差はあるもののフランス忍者部隊が一つ作れるのでは思ったのでした。
(加藤亨延)
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