このテストは、社会学者・古市憲寿の著書『誰も戦争を教えてくれなかった』(講談社)の補章として収録された彼女たちと対談の中で企画されたものだ。
本書は、1985年生まれで『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社)の著者として知られ、若者の視線から様々な提言をしている古市憲寿が世界中の戦争博物館を巡り、「1985年の自分にとって戦争とはどのように教えられたものなのか」を考察したものだ。そもそもなぜ戦争博物館を巡ろうと思ったかというと、「ハワイでパールハーバーの『アリゾナ・メモリアル』を訪れた時、予想外に明るい雰囲気で真珠湾攻撃が展示・紹介されていることにびっくり」し、「戦争も国によって残し方が随分違うんだなと興味を持った」からだそうだ(「Web R25〔対談〕乙武洋匡×古市憲寿」より)。本書で古市が足を運んだ都市は、8ヵ国21ヶ所にも及ぶ。
そして本書を読み進めていくと、衝撃的な事実が明らかになる。日本には国立の歴史博物館が1983年まで存在せず、ようやくできた国立歴史民族博物館にも2010年代まで現代史のコーナーが存在しなかったこと。そして日本には、国立の戦争博物館はない。つまり日本には、「国公認の戦争」「国公認の近代史」がないのだ。
また、「当時の資料をショーケースに入れて、マネキンにジオラマで戦争の悲惨さを再現させる。
年輩の方、特に戦争を経験した方は、本書を読んで眉をひそめるかもしれない。文体は軽いし「戦争なんて知らなくていい」 とさえ言うからだ。これにはちゃんと理由があって、戦争博物館には期待できないし、知識を暗記したって軍事オタクになるだけ。中途半端な知識で外交に臨んだって軋轢を生むだけだから、と古市は主張している。
今まで「戦争について知ることは大切だ」「原爆を落とされた日付を知らないなんて信じられない」と筆者は当たり前のように思っていたのだが、本書を読んで「誰も戦争を教えてくれなかった」と気づかされた今、「戦争なんて知らなくていい」という立場で戦争を見つめてみると新たな発見が得られるかもしれないと考えるようになった。この本を読んでから、あらためて日本が行ってきた戦争を取り上げた本やDVDなどに触れるという学習法は、「誰も戦争を教えてくれなかった」世代には有効ではないだろうか。
(坂本茉里恵)