――当時は、理解できなかったんですね。
井出先生 虫歯だったら、穴ぼこが開いている。歯周病だったら、歯石が付いている。レントゲンを撮れば、歯のぐらつきや出血がわかる。でも、何でもない歯なのに「痛む」って言うんですよ。症状を撮ったレントゲン写真を他の先生にも見てもらいましたが、納得いく答えをくれる人はいませんでしたね。
――困りましたね。
井出先生 でも生きる希望を失くし、自殺願望を持つ患者さんまでいらっしゃった。幸いにも「他の歯科に行っても解決できない」という患者さんに、私は恵まれてしまって。「来なくていいのに。おれには治せねえ!」って思ってました(笑)。
――それは、悩んでしまいますね。
井出先生 悩みますよ。でも、悩んでる患者さんが目の前にいるわけだから! その時、私の教科書となった『噛み締めないように』という書籍に出会いました。これを治療に活かすと、不快症状が消えてく人もいれば、ウンともスンとも変わらない人もいる。そこで深入りしなきゃいいんだけど、答えが知りたいから更に深入りしていくわけです。
――「深入りしなきゃいいんだけど」(笑)。
井出先生 パンドラの箱を開けていくわけです。「これ、自分で考えてくしかないな」って。
――そこから独学になっていくんですね。
井出先生 歯医者がまず考えることは「下あごは上あごにぶら下がってるから、左右どちらかにズレることもある。下あごの位置関係だけ戻せば、歯の位置は正しくなる」ということです。ところが、それが疑問だったんです。「上の歯が本当にベースなのか?」って。一見キレイに並んでいる歯でも、骨格が物凄くズレている場合がある。重症な患者さんほど、そうでした。