投げやりに言い捨てたのはマキタスポーツ、44歳。
「ルーズヴェルト・ゲーム」(TBS)で「野球なんて辞めちまえ、この負け犬が」と野次を飛ばしていた製造部梱包配送課長、「花子とアン」(NHK)では主人公・はなが通っていた小学校のクラス担任(のちの上司)、現在放送中の「ラストドクター」(テレビ東京・金曜20時)では主人公の監察医・秋田の同僚。「あまちゃん」(NHK)にも橋幸夫歌謡ショーの司会役として登場した、あのおじさんである。
さて、9月1日放送の「HERO」第8話における、マキタスポーツの役どころは刑事。暴力団幹部を襲撃し、殺害したと警察に出頭した被疑者・権藤明(池内博之)が城西支部に送検され、久利生(木村拓哉)が担当になる。宇野検事(濱田岳)の恩師で、現在は被疑者が所属する暴力団の顧問弁護士を務める小此木誠(鶴見辰吾)も現れ、「すみやかに終わらせましょうね」と含みのある物言いでプレッシャーをかける。
殺害の動機は「六本木のクラブで因縁をつけられた」というのが権藤の言い分。身代わりを疑う久利生は、捜査を続けるよう訴えるが、関は完全に諦めムード。
「身代わりに決まっていますよ」
「弁護士の言う通りなんですよ。早く決着つけたほうがいいんです」
「見つかりっこありませんて」
手も足も出ないし、出そうともしない警察の姿勢にいらだつ久利生。
「いちばん危ないのは久利生さんなんですよ。あいつら本物の銃弾撃ちこんできますよ」(関刑事)と言われても、「だから?」と意に介さない。城西支部に戻ると、久利生を映した盗撮写真が匿名で届いてる。「お前を見てるよってメッセージだよ!」「ターゲットはやっぱり久利生さん」と騒然となる中、久利生だけは泰然自若。「やっぱ、やめたほうがいいのかな……でもなあ、夜中にどうしてもラーメン食いたくなっちゃうんだよね」と、おとぼけコメントで麻木(北川景子)を呆れさせた。
麻木が「久利生さんが今、誰よりも危ないんですよ」と食い下がると真顔になり、「俺らが一番守らなくちゃ行けないものってなに? 事務官だったら考えとけ」と厳しく突き放す。ヘラヘラと受け流しているように見せかけて、じつは大真面目。おどけてみせたかと思うと、真顔で正論を説く。そのギャップがたまらない。
かたくなに自分がやったと言い張る、被疑者・権藤。しかし、久利生は「俺は絶対認めませんから」と宣言し、身代わりで出頭し、刑期を務めたら幹部にしてやると言われたのだろうという推理をぶつける。黙り込む権堂。
権藤は不起訴処分。小此木弁護士に「身代わりだという根拠は?」と問われ、久利生は「根拠は先生です」と答える。権藤の証言が正しければ、組にとっては大迷惑。破門されてもおかしくないのに、顧問弁護士が出てくる時点でおかしいというのだ。。
権藤の釈放時には迎えに来た組の面々とガチンコ対決。「暑い中、お出迎えごくろうさまでーす」と茶化し、「お帰りになったら組長さんに伝えてもらっていいですか。
「これから夜道を歩くときは気をつけてください」と凄まれても、余裕の表情。「覚えときます……やっぱり無理かな。夜中にラーメン食べたくなっちゃうんで」と、ラーメンネタで応酬する。さらに「今俺に言ったセリフで十分、脅迫罪と公務執行妨害で現行犯逮捕できちゃいますけど、どうします?」とたたみかけ、にっこり。「聞かなかったことにするんで、俺が言ったこと組長さんによろしこ」と締めくくる。この場面でよろしこ! その上、ポイ捨てしたタバコの吸い殻を「ダメっすよ」と拾って渡す。相手の方々がやや気の毒に思えてくるぐらい、徹底したヒーローぶりを披露した。
暴力にも圧力にも屈せず、正義を貫く久利生の姿をめいっぱい楽しめた第8話。第9話は予告動画によると同じ事件の被疑者4人を検事4人がそれぞれ担当。「チームプレイ? いいっすね」(久利生)という展開らしい。華麗なる個人プレーから総力戦へ! またまた違うお楽しみに出会えそうだ。
(島影真奈美)