――フランスで日本酒は潜在的な需要はあると思いますか?
あると思います。日本には良い蔵元がたくさんありますし、その酒を買いたいフランス人もたくさんいます。そこを繋ぐ人がいないのがフランスの問題です。

――フランスで日本酒が広めるには、どうすればいいと思いますか?
高級店だけでなく、日本の居酒屋のような形式で料理を出す大衆的な店がもっと増えれば、フランスで消費される日本酒量も増えます。ワインは(もちろん食事とのマリアージュという考え方もありますが)そのままで楽しめるものも多いです。しかし日本酒は、必ず料理と一緒に飲むものだと思います。夏は冷、冬は熱燗といったように、季節と料理に合わせて、冷たくても暖かくても楽しめるのが、日本酒の良いところです。日本酒をワインと比べるのではなく、まったく別物だということを知らせたいです。

「パリで日本酒が人気」は本当なのか? ミシュラン1つ星レストラン経営者に聞く

ファッション業界関係者の口コミで日本酒を「クール」に


――「日本酒をワイングラスで出す」というようなアプローチもありますが、どう思いますか?
それはそれで、すごく良い考え方です。ここ5年くらいは、そこにフレンチを合わせるというのが流れでした。ただし私の考えでは、日本酒はワイングラスではなく、おちょこで飲んでほしいです。日本ではクラシックである飲み方を、パリではモダンなものとして紹介できればいいですよね。

――日本酒をさらに広めるには何が必要ですか?
イメージです。そのため「メゾン・デュ・サケ」の場合は、店のデザインと場所を重視しました。店があるエティエンヌ・マルセルという地区は、パリ市内でも流行に敏感な人が、多く飲みに集まる場所です。そして店内にはカクテルバーも作りました。なぜならカクテルバーがあると、特にファッション業界の人が多く訪れます。彼らの1割でもいいので日本酒を飲んでくれれば、彼らの口コミを通じて日本酒はクールになります。

――今回の専門店ができることで、日本酒は売れていくと思いますか?
正直ショップでは、あまり売れるとは思っていません。持ち帰りでボトルを買ってもらうというよりは、バーやレストランで、食事と一緒に日本酒を楽しんでもらうことが目標です。おつまみを食べながら日本酒を飲み、満足して帰ってもらう。そこから少しずつ日本酒ファンを増やし、将来的にショップで日本酒が売れるようになればいい、と思っています。
(加藤亨延)