少年ジャンプのサッカー漫画と言えば……?
思い浮かべる筆頭は『キャプテン翼』で間違いないだろう。ダイナミックなコマ割りと荒々しいタッチが生み出す疾走感と躍動感。
サッカーを知らなくても楽しめるその面白さは本物。ジャンプやサッカー漫画の枠組みを超えて親しまれる、マンガ界の金字塔だ。

しかし、その偉大すぎる功績ゆえか、その後のジャンプにおいてサッカー漫画は大きなヒットに恵まれていない。特に21世紀に入ってからのサッカー漫画は全てが短期打ち切りだ。
2002年『NUMBER10』全1巻、2009年『マイスター』全2巻、2010年『少年疾駆』全2巻、『LIGHT WING』全3巻、2011年『DOIS SOL(ドイ・ソル)』全2巻、2014年『TOKYO WONDER BOYS』全1巻……。
『NUMBER10』『マイスター』『TOKYO WONDER BOYS』に至っては、全10話の最短打ち切りコースといった惨状。
長期連載は98年~02年に掛けての『ホイッスル!』にまでさかのぼらなければならない。
では、90年代のジャンプではどうだったのだろうか?

国民的サッカーブームの立役者『キャプテン翼』が5年ぶりに復活!


Jリーグ発足に沸き立つ93年、連載終了から5年が経っていた『キャプテン翼』が『特別編(オランダユース編)』として少年ジャンプに復活を果たした。
当時の若手Jリーガーは『キャプ翼』直撃世代。この「初代」をきっかけにサッカーを始めた選手も多かった。5週に渡っての集中連載だったが、このタイミングでの復活は当然といえるだろう。
作者の高橋陽一先生はボクシングマンガの『CHIBI チビ』を連載中だったが、人気は低空飛行中。そこで、『チビ』は45号で連載終了、翌94年18号より続編となる新作『キャプテン翼 ワールドユース編』の連載がスタートとなる。


Jリーグブームの中、サッカー漫画は『キャプテン翼』1本で勝負!?


『キャプテン翼 ワールドユース編』の連載当初のタイトルは『キャプテン翼 PRINCIPE DEL SOLE 太陽王子』。主人公は「大空翼」ではなく、1学年下の新キャラクター「葵新伍」。イタリアを舞台にインテルのユースに入団した新伍が活躍……のはずが、ライバルとの因縁の対決がほぼカットされたまま、舞台はブラジルに移行。サンパウロユースに入団した翼が主人公に復帰している。これは既定路線だったのだろうか、それともテコ入れだったのか……?

ともかく、『キャプ翼』人気は健在で、掲載順位もトップ戦線をキープ。「ジャンプスーパーアニメツアー」でアニメ化されたこともあり、44号から連続3号に渡って表紙を飾る快挙も成し遂げる。連載1年未満で巻頭カラーも5回達成と、ジャンプのバックアップも万全だった。

94年には全10回の短期集中連載『うるとら★イレブン』を、95年には読み切り『FORZA!!ロベルト・バッジョ物語』を掲載し、表紙にもバッジョを起用するなど、Jリーグブーム発のサッカー人気に乗ったジャンプだったが、大きな話題にはならず。当時のジャンプは、大看板『キャプ翼』にすべてを掛けたようであった。

盛り上げて来た準決勝は2ページで終了! まさかの打ち切りへ…


しかし、翌年には勢いに早くも陰りが見え始める。95年には中盤掲載が、96年夏頃には下位掲載が定位置に。そして、巻末掲載が当たり前となった97年、最終的には打ち切りで連載終了。結末はコミックスで補完される形となってしまった。
翼が完全無欠すぎてチームプレイがないがしろの試合展開、「初代」の強敵キャラのかませ犬化、新キャラの能力のインフレ等々、挙げればキリがないほどに不満が山積み。
『特別編』の頃から散々あおって来たオランダユースとの準決勝が、見開き2ページの結果報告のみで終わったのを始め、未消化部分も多く、正直評価は芳しくない。

『キャプ翼』に続く作品もあっさりと打ち切りに…


国民的人気作品の続編でさえ打ち切りになってしまうのだから、本当にジャンプは容赦がない。
翌98年13号から始まった『ホイッスル!』が中堅作品として奮闘する中、『キャプ翼』の高橋陽一先生が復活。99年13号より『蹴球伝 フィールドの狼 FW陣』がスタートとなる。
高橋先生は、『キャプ翼』でMF(ミッドフィルダー)人気が爆発したことを受け、今度はこの作品でFW(フォワード)人気を高めようと野心に燃えていた。
『キャプ翼』の日向小次郎ライクな風貌の主人公は、性格も日向の傲慢な部分のみを煮詰めたようなキャラで好感度ゼロ。
さらに、主人公以外の家族が全員事故死という鬱展開。
『キャプ翼』とは違う方向性を目指した結果、まったく共感を得ない内容となってしまったのだ。結果、わずか17回で打ち切りに。ラストには翼たちがゲスト出演するが、そのファンサービスが逆に切なかった…。

以降のジャンプサッカー漫画が総倒れ状態なのは前述の通りだ。そんな中、今年も新連載(2016年52号より)『オレゴラッソ』が始まった。

ポテンシャルは高いがズブの素人の「俺様キャラ」が主人公で、美女に誘われて成り行きで入部と、『SLAMDUNK』を彷彿とさせる流れ。まだ始まったばかりだが、ジャンプ愛読30年以上の筆者的には、大化けの予感がビンビン。
ジャンプ鬼門のサッカー漫画、人気作品となるか注目だ。

※イメージ画像はamazonよりキャプテン翼 (ワールドユース編12) (集英社文庫―コミック版)