本作は、ジミー大西の半生を追った作品であり、ジミー役に中尾明慶、大竹しのぶ役に池脇千鶴、そしてさんま役に小出を配し、既に撮影を終えていました。後は今夏の配信を待つだけ……だったのですが、この不祥事によって配信は見送り。6月30日には撮り直しが決定したということで、今度こそ無事にお披露目されることを祈るばかりです。
さて、ドラマでフューチャーされる予定のジミー大西といえば、1996年、32歳の時に芸人から画家へ転身したことでも有名。タレントとして人気絶頂期における決断だったこともあり、発表当時は大きな話題を呼びました。
救いの手を差し伸べた明石家さんま
ドラマの副題に「アホみたいなホンマの話」と銘打っているように、ジミーの人生はかなり数奇なものとなっています。
もともと、高校時代はいじめられっ子で劣等生だったジミーは、在学中からアルバイトで吉本入り。なんば花月の裏方として働いているときに、たまたま明石家さんまと出会い、彼の紹介でぼんちおさむの弟子となります。
その後、芸人デビューしたものの、吉本からは「使い物にならない」と半ば戦力外扱い。泣かず飛ばずの時期に救いの手を差し伸べたのが、誰あろう、さんまでした。
さんまはジミーを、運転手兼付き人として雇用。以降2人は実の師弟のような関係となり、さんまはジミーへ、芸人としてのイロハを叩き込みます。
この時期にジミーは、「やってる!やってる!」、「ジミーがんばれよ」⇒「お前もがんばれよ!」、「(股間を触られて)ふるさと~」といった数々のギャグを案出。
画家を志すきっかけは?
すっかり売れっ子になったジミーに、次の転機が訪れます。それは90年代前半、上岡龍太郎と島田紳助が司会を務めていた深夜番組『EXテレビ』(読売テレビ)の企画、「絵画チャリティーオークション」に出演したときのこと。
これは、プロの画家を審査員として招き、芸能人が描いた絵画を鑑定してもらうというコーナー。天然ボケキャラのジミーはラストにオチ担当として登場したのですが、彼の作品を目にしたとき、その場にいた誰もが息を呑みました。
たしかに描かれた絵画は芸風同様、実にエキセントリック。しかしながら、独創的な色彩感覚と絶妙な構図によって書かれたそれは、シュールレアリズムとポップアートを綯交ぜにしたかのような、紛れもない快作でした。
これには、プロの画家も度肝を抜かれ、「33万円」の高値が付けられたのです。
岡本太郎から「キャンバスからはみ出せ」と言われる
それからというもの、ジミーは多忙なタレント活動と並行して、家でコツコツと絵を描くようになります。描けば描くほど評価が高まり、ジミーもまた絵画の世界に没頭していきました。
そしてとうとう、1995年11月21日。タレント引退と画家への転向を発表します。きっかけは、尊敬する上岡龍太郎に自身の絵をほめられたこと、さらには、たまたまジミーの絵をテレビで見た巨匠・岡本太郎から手紙で「君は画家になりなさい」「キャンバスからはみ出せ」とメッセージをもらったことが大きいようです。
それから20余年。ボジョレー・ヌーボーのラベルや、みずほ銀行のキャッシュカードと通帳に作品が採用されるなど、たしかな実績を残してきた画伯・ジミーですが、最近は、タレント活動を再開し、公式Twitterまで開設しました。
理由は、「絵の仕事が時給換算したら、350円くらいにしかならないと気付いたから」だそうです。まだまだ、ジミーの「アホみたいなホンマの話」は終わりそうにありません。
(こじへい)
※文中の画像はamazonよりhtwi(ヒッティ)NO.9 アーティスト、ジミー大西の軌跡―アートマガジン