勤務時間は自由、自宅勤務もOK フェイスブック ジャパンの社員を信頼する勤務制度
フェイスブック ジャパン執行役員本部長の中村穣氏

軽食の提供やシャワールームの設置など、社員が働きやすいオフィスづくりを実践しているフェイスブック ジャパン(詳しくは以前の記事をご覧ください)。制度面でも、社員を信頼して働き方の大部分で自由な裁量を与えている。

同社の勤務制度と、生産性を高める仕事術について、フェイスブック ジャパン執行役員本部長でセールス部門のリーダーでもある中村穣氏に話を聞いた。


自宅にいながら仕事をすることも可能


一日の勤務体制としては、始業・終業時間は社員に一任している。また、「Work From Home」という、いわゆるテレワーク制度を採用している。毎日必ずオフィスに出社しなくてもよく、事前に連絡すれば自宅にいながら仕事をすることも可能だ。そのため、必ず出社していなければいけない時間帯(コアタイム)もなければ、プレミアムフライデーもない。
月間労働時間も、上限を少しでもオーバーしてしまうと、本人ではなく上司の責任になるという。

中村  社員への信頼を基に、どこで働いてもいいということを重んじているのが制度面で大きな点です。「Work From Home」って、チャラく聞こえたりするじゃないですか。一方で、「1分1秒をどれだけ大切にするか」という企業文化があります。


ミーティングは30分で終わらせる


1分1秒を大切にする企業文化とは、米Facebook社が掲げているコアバリュー「Move Fast」のこと。失敗を恐れずに、スピード感をもって取り組んでいくことを重要な価値観のひとつとしている。その具体例として中村氏があげてくれたのがミーティングだ。

筆者もやる意味を感じられないミーティングに参加した経験があるが、同社ではそれを防止するため、ミーティングは1回30分程度と決めている。議題や決めるべきことは、あらかじめメンバーに共有してからミーティングに臨むという。


中村 僕もさまざまな企業のミーティングに参加してきました。ある企業では、上層部の人しかいない90分のミーティングであっても結局「引き続きこの件について議論を重ねましょう」と。誰も決定を言い出さないんですよね。これが今までの典型的な会議のあり方だったと思うんです。後で失敗を咎められるのが怖いので、結局みんな黙る。それでは時間の無駄だし、何もできない。偉い・偉くないは関係なしに、どこかで誰かビシッと決めていくしかないわけですよ。30分ミーティングは、時間をいかに有効的に使うのか、どう早く改善させていくのか、という企業文化を象徴している手法なのかなと思いますね。


生産性への意識の高さ


企業文化としてスピードと効率化を推進する同社では、社員一人ひとりの生産性への意識も非常に高いという。
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冬でもこの格好だという中村氏。社内では「Joeさん」の愛称で親しまれている

中村 セールスチームの場合、仕事のゴールがクオーター(四半期)ごとに設定されているんですけど、期の途中でもう次のクオーターのゴール設定の話が来る。その都度戦略を立てて、発表して、とずっと繰り返されるので、本当に時間を最大限有効に使わないと完全にお手上げになるわけです。労働時間も管理されているので、ダラダラやればいいわけじゃないですし。相当シャープに盛り込んでいかないといけない。


――スケジュールがカツカツになる気がします(笑)

中村 あーそうですね! だからカツカツにならないように知恵を絞ってやっています。

実は、中村氏はインタビューの直前にも来期戦略を決める90分間の会議をこなしていた。4チーム合計で90分なので、1チームあたりの時間はわずか20分程度。そのため、資料を事前に用意してチーム全員が目を通していることを前提にディスカッションを始めたそうだ。
繁忙期でない限り17時30分には退社するという中村氏に、効率的な働き方をするうえで重要なことは何かも聞いてみた。

中村 大まかには、時間が限られているなかでいかに事前準備をしておくかが重要だと思います。後は計画性ですね。事前に用意しておいて、次に備えておくサイクルを作っておく事です。

――タスクの優先度付けはいかがですか?

中村 場合によっては優先度の低いタスクは全部捨てて、高いものに完全にフォーカスします。それって、ある意味リスクがあるじゃないですか? だけど、リスクヘッジをかけないで大胆にいく。プライオリティ(優先度)の高い仕事に2倍の労力をかけられるようにするためには、ワイルドなジャッジも時にはしなくてはいけないと思いますね。


育児でも生産性の重要さを学ぶ


中村氏は、第2子が誕生した際に1カ月の育児休暇を取得している。これは同社のリーダーポジションの人間として初めての育休取得で、「他の同僚のモデルケースになりたい」という思いもあったためだ。

とはいえ、育児の合間をぬって営業報告を受けたり、ビデオチャットを利用してリモート会議をしたりと、完全に仕事から離れていたわけではなかった。もちろん育児も忙しく、「毎日が戦争だった」とか。
そこで中村氏は、育児にもリズムを作りたいという奥さんの希望もあり、完全な作業分担をすることを考えた。この経験でも生産性の重要性を学んだという。

中村 僕が当時2歳になる上の子の面倒を見て、奥さんは授乳もあるので下の子にフォーカスする。6時に起きて19時に寝かしつけるまでを、僕が全部こなしていきました。育児もいわばプロダクティビティ(生産性)なんですよね。もちろん生産性だけではなく、キチンと愛情を注ぐ部分もあるんですけど、とはいえある程度生活のリズムを作っていくことが重要。ビジネスもグロースをかける時のリズムをどう作っていくかが大事じゃないですか。その重要性を改めて感じましたね。
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中村氏が実際に組み立てた育休時のスケジュール

――明確に役割分担をすると、家庭内不和も起きにくそうですね。

中村 そうなんですよね。
集中してできるし、やるべきことをきっちりやってるとお互い認識できるので、良かったかなと思います。だから逆に今はまずいですよね。早く帰ったりすると、手が空いてると思われる(笑) でも育休を取って2人で育児をしたからこそ、妻の気持ちはわかりますけどね。

――ツールの発達で、中村さんのようにオフィス外でも仕事ができるようになった反面、仕事とプライベートの境界線が曖昧になることも懸念されます。仕事のメリハリはどうつけていますか?

中村 時間の区切りはつけます。中途半端でも、時間になったらやめちゃいますね。それも僕のなかでの効率だったりするんです。どうせぐだぐだやっても余計時間がかかるだけだし、夜やっても、効率が悪くなるだけじゃないですか。そういう時は速攻でやめちゃいます。あと、やっぱり朝は頭がシャープなので一番効率的ですね。朝に一日のタスクと仕事の流れもある程度考えておいて、後で埋めていくイメージです。


家で仕事ができるようになっても「飲みニケーション」は大事


それでもやはり「飲みニケーション」のような対面でのコミュニケーションは大事だと中村氏は指摘する。

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中村 親睦を深める方法は昔から変わらないですよね。ご飯を食べにいって、仕事の話だけじゃなく、家庭とか趣味の話もざっくばらんにするので。初めの話に戻るのですが、「Work From Home」もコアタイムがないことも、お互いの信頼がないと何も成立しないわけです。信頼を築くためには、例えば嘘をついたりとか、妙に隠したりとかするよりも、嫌な話もはっきりと言うことって大事なんじゃないかと思いますね。いかに我々がITカンパニーで、コミュニケーションツールが完備されていても、やっぱり対面で実際に目の前で話すということは、人間として一番重要なことではあると思います。
(茶柱達也)
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