即興のラップバトル番組「フリースタイルダンジョン」、4thシーズンのREC5。
チャレンジャーが5人のモンスターを倒せば賞金100万円獲得の即興のラップバトル。

即興で、韻を踏みながら、言葉とリズムを相手にぶつける8小節3ターンの勝負だ。
3本勝負、2本先取で勝利。
ただし、判定が全員一致するとクリティカルとなり即勝利確定である。

チャレンジャー、MC松島
対するモンスターは輪入道
「俺の悩みの相談でも乗ってみねえ」とはじめて、
2バース目で、
「友達がひとりもいなくなっちゃったんだよ」
と、相談をかます。

「出世だとか結婚だとかそんなもんでいなくなるなんて
そんなのは本当の友達じゃねぇぞ」

と真正面から返す輪入道。
ところが、これがMC松島のトラップ。
長渕剛の「友達が1人もいなくなっちゃった」っていう曲の話だ、と言う。
(正確には「友達がいなくなっちゃった」)
「長渕剛好きだ好きだ言って全然曲聴いてねぇじゃねぇか」
とディスる。
これで、へこんだりねじれたりせず真直ぐアンサーする輪入道が、すごい。
「腐ったリブロース」から、
「全部投げてるのがミスボール」へつなぎ、
「結局逃げてんだろディス勝負」「やりたいのは本当の意味でのスキル勝負」
と脚韻を踏みながら、
最後、「俺に負けてお前は2秒後肉骨粉」と決める。


判定は、3対2でモンスター輪入道。
「フリースタイルダンジョン」「長渕剛好きだ好きだ言って全然曲聴いてねぇじゃねぇか」輪入道どう返す
フリースタイルイラスト/まつもとりえこ(小西りえこあらため)

ROUND2のMC松島も、チェケラッチョ、頭下げての謝罪、とトリッキーな構成で攻める。
輪入道は、真直ぐアンサーして、人間力を見せつける。
しかも、最後は、
「俺が一番じゃねぇの? この場半端ねぇぞ
だから言葉オンパレード 魅せるデスパレードボム」

と、完全に口が気持ちいい韻の連打だ。

判定は、4対1で、勝者モンスター輪入道。

次のチャレンジャーは、MU-TON

モンスターは、呂布カルマ

呂布カルマの放ったキーワード「テレビ朝日」から、
MU-TON「呂布カルマのぞめない朝日」とディスにつないで、
「沈むSunset 踊るマーメイド 回るターンテーブル」
そりゃサンセットは沈むよ!と、ツッコミを入れたくなるような当たり前の事を言ってるのだが、
絶妙の間と、じょじょの喉を絞っていく声の出し方で世界を作っていって、カッコイイのだ。

呂布カルマ「MU-TONおまえどうぜ本名武藤だろ」
に、
MU-TONが指を拳銃型にして、
「武藤じゃねぇ 甘すぎるのはお前のラップだぜ」と返し、
「呂布 ドブ ハマった乙 Dope Clock Lock One o'clock」
と英語交じりのグルーヴィーなかっこよさ。

呂布カルマ「正直何のこと言ってんのか全然わかんねぇ」のディスにも動じず、
MU-TONはスタイルを貫く。
「Microphone使ったこれがFlag 俺が魅せる本物のBlack」

判定は4対1で、勝者MU-TON。


呂布カルマは、偽りなく本音を言うタイプ。
だから弱点を見つけて、それをタイトなフレーズでズバリと指摘したときの破壊力は巨大。
なのだが、MU-TONは英語交じりで、イメージの飛翔と、フロウと、声質のかっこよさで、世界をつくって走る。
だから、呂布カルマ、相手の内容をとらえた強烈なディスが刺さりにくい。
ROUND2の冒頭でも、「オメェかっけぇラップすんな だが、ただそれだけだ」と、これはもうディスじゃなくて絶賛。
呂布カルマ「お前の自己紹介何回聞いたって俺はまだピンと来ない」
自然な日本語のなかで「自己紹介」「ピンと来ない」と韻を踏んでるのが凄い。

が、MU-TONも返す返す。「って言ってる割にはちょっと震えてんぜ バーレバレ」の「バーレバレ」というタイミング。
畳み掛けて「それじゃ無理じゃね 俺は弱いものいじめは趣味じゃねぇ」
「一歩前にこの線を踏み出せ」と言いながら、呂布カルマを通り越して前に進み、客席に向かって最後を決める。
パフォーマンスもばっちり。

判定は2対3で、勝者MU-TON。


バトル後に呂布カルマが言う。
「こいつがこの一試合でいなくなるのはちょっともったいないんで、もうちょっとみんなで楽しめればいいかな」
呂布カルマ、負けてもカッコイイ!(テキスト/米光一成 イラスト/まつもとりえこ