
伊藤園の緑茶ブランド「お〜いお茶」といえばお馴染みなのが、ペットボトルのパッケージに印刷された俳句。今年10月にはSNSで、13歳が詠んだ『一夜漬け うまくいくのは 野菜だけ』という、ユニークな句が話題になっていました。
一般から集められた作品の中から選ばれる優秀作が、パッケージに表記されていると、ついつい見てしまう人も多いでしょう。俳句への取り組みを実施している伊藤園ですが、俳句に対して新しい取り組みを始めているのを知っていますか?

恋する俳句プロジェクト
今年9月に行われた「恋する俳句プロジェクト」は、若者に最も関心の高いトピックの一つでもある「恋愛」をテーマに俳句を募集しました。新しい試みとしてインスタグラムを使い、画像と合わせた投稿を募ったところ、想定以上の反響があったのだとか。若者が使い慣れている直感的なツールであるインスタと、5・7・5の語感の心地よさが「恋」という普遍的なテーマと相まって、若者に広く共感を得たようです。
この「恋する俳句プロジェクト」を仕掛けたのが、伊藤園のデジタルコミュニケーション室。まだまだ“年配の人がかしこまって詠むもの”というイメージの強い俳句が若い世代にも受け入れられるように、現代的なアレンジをしたプロモーション企画を打ち出しています。
そんな新しい俳句に対して、デジタルコミュニケーション室室長の小笠原さんは「それぞれ個人の感性が表れているのが面白い。型にこだわらずに、個性を伝える手段として親しんでいただければ。マルチなセンスが磨かれる可能性が、俳句にはあると思う」と話します。

伊藤園デジタルコミュニケーション室室長、小笠原嘉紀さん
11月19日には、渋谷にある複合施設「SHIBUYA CAST.」で、イベント「Play Shibuya2017」が開催され、伊藤園と同志社女子大学の上田ゼミがコラボレーションした、ワークショップ「未来の俳句を創造する」が行われました。今回のテーマは「Play俳句」。俳句をプレイするってどんな感じなんでしょうか?
俳句をプレイするってどうするの?

今回、ワークショップの進行役を務めるのは、同志社女子大学・上田ゼミ生のグループである「girl’s band」。同志社女子大学の上田信行教授は、4つのP(Project:計画、Passion:情熱、Peers:仲間、Play:遊び)をコンセプトに学び方のデザインをしており、ゼミ生とさまざまなワークショップを普段から行っています。
「Play俳句」のコンセプトについて、上田教授は「コミュニケーションは、自分のイマジネーションを圧縮して言葉にして届けなければならない。受け手も、その言葉を解凍してイマジネーションを膨らまさなければならないが、その時に大切になってくるのが“言葉のセンス”。俳句は言葉のセンスを磨くことができるものだと思う。Play俳句のPlayは、『もっと俳句を楽しもう!どんどん俳句をやろう!』という意味に近い。」と話します。既に若者に対して俳句を身近に楽しむ施策を実施していた伊藤園は、その考えに共感して今回のワークショップを行うことになったのだそう。

今回行われたのは、「Dancing俳句」と「ふぉと俳句」。「Play俳句」のルールは簡単で、季語が入っていなくても、字余り字足らずでもOKなのだそう。自分で感じたこと、思ったことを言葉にして五・七・五のリズムにのせれば、誰にでも作れるものです。
まずは「Dancing俳句」から。girl’s bandから「5・7・5」のプリントされたTシャツが配られます。

「Dancing俳句」のルール
「Dancing俳句」は5・7・5を3つのパートに分け、3人で踊りながらリレー式に答えていきます。ルールは、「動きは止めないこと」と「盛り上がること」の2つだけ。首に札をかけられたら、その人が次の番です。

では15分、ノンストップで「Dancing俳句」をスタート!
ノリノリで俳句を詠むとどうなる?
踊りながらBGMにのって止まらないように答えていくと、どんな俳句が出てくるのでしょうか? 詠まれた俳句の一部をご紹介しましょう。
お題:「渋谷」
「自撮りする センター街は 超スクランブル」
お題:「京都」
「金閣寺 京都の真ん中 お茶を飲む」
お題:「恋」
「お茶しない? 誘われたけど 彼氏いる」
「あー出てこない。ちょっと待って、ちょっと待って!」と慌ててしまっても、なんだか楽しそうです。そしてやっぱり恋がテーマだと盛り上がりますね。


「ふぉと俳句」のルール

体が温まったところで、次は「ふぉと俳句」。「ふぉと俳句」は参加者のスマートフォンに入っている画像を使います。グループを作って輪になって座り、選んだ写真を見て俳句を詠んでいきます(写真を撮った人以外で)。みんなが詠んで1周したら、グループごとに優秀作を選びます。

girl’s bandの例。女の子らしい表現が多く見られます
日常の写真がユニークな視点で切り取られる、「ふぉと俳句」
今回のワークショップでは4~5人のグループを複数作りました。友達のスマートフォンに入っている写真も気になる様子。





今回、選ばれた「Best of ふぉと俳句」はこちら。

「暗闇に ビルより映える 夜桜が」
写真を見た人は、後ろにある建物がスカイツリーと分からなかったそうです。それが転じて俳句の字数に合い、リズム感の良い句になったとか。

「ときだけに 東京タワーの 刻(とき)をとる」
撮影した本人の名前の入った俳句になりました。「こんな感じの格好で撮りました」と、下から煽って撮った時の様子を再現してくれたのは、撮影した刻(とき)くん。撮った時の背景も、俳句の魅力を引き立たせています。

「一人飯 ここが穴場だ 香る鼻」
仕事場の近くでパスタセットの写真をインスタグラムに投稿したら、同僚から「俺もカルボナーラを食べてる」と連絡があったという、エピソード付きの写真だそうです。

「極限の 寒さに耐える 俺けいた」
けいたさんとは、今回ワークショップに参加している実践女子大学の松下慶太教授のこと。ゼミ生から慕われていることが伝わってくる句ですね。北海道のプロジェクトの時の写真で、とても寒かったのだとか。思い出を共有できるのもフォト俳句の魅力です。

「目とデコが チャームポイント おじさん顔」
テングハギというユニークな顔をした魚を撮ったこの写真は、「インスタグラマーになろう」というプロジェクトで行った水族館で撮影されたもの。詠んだ方は、おじさん顔の魚の愛らしさを出すことを意識したとか。

「菜の花を 映す硝子や くもりの日」
インスタ映えする綺麗な写真を元に詠まれたこの句は、ガラス玉に映った風景を捉えた小さな発見が光る作品です。

「今日だけは 言うこと聞いて お菓子くれ」
写真がスクリーンに映し出されると、女子から「可愛い~」と歓声が上がったこの作品。渋谷のハロウィンで撮った写真だそうです。
今回のワークショップは、俳句が新しいコミュニケーションツールとなって盛り上がりを見せました。「Play 俳句」は思っている以上にハードルが低く、気軽に楽しめるようです。現在、伊藤園では「お~い茶 春よ恋 桜俳句大募集キャンペーン」として、12月22日までTwitter上で俳句の募集をするといった、若者に俳句を身近に感じてもらう施策も実施しているのだそう。古風なイメージを持ちがちな俳句ですが、新しいコミュニケーションツールの一つとして、まだまだ面白さが隠されているようです。一人でも、友達とでも一緒にできる「Play俳句」で、現代の俳句を楽しんでみては?
(石水典子)
【伊藤園】