ドラマがはじまる前の予習として、制作統括の櫻井賢と、主演の鈴木亮平のことばをまとめておこう。
![本日スタート大河ドラマ「西郷どん」主演・鈴木亮平「西郷さんの草履は小さかった」](http://imgc.eximg.jp/i=https%253A%252F%252Fs.eximg.jp%252Fexnews%252Ffeed%252FExcite_review%252Freviewmov%252F2018%252FE1515250581083_5f4b_1.jpg,quality=70,type=jpg)
1月7日(日)スタート
西郷さんは失敗する
まずは、櫻井賢。大河ドラマ『江〜姫たちの戦国〜』、連続テレビ小説『マッサン』の制作統括を担当している。
『西郷どん』前半のキーになる撮影を鹿児島で行った際、あまりに濃厚な撮影で声を潰してしまったというほ
ど、鹿児島ロケの場面は序盤の見どころになるようだ。
「西郷吉之助(鈴木亮平)と島津斉彬(渡辺謙)がはじめて互いを認識し合う、ひじょうに重要な場面の撮影を、地元・鹿児島の方々に協力によって島津家ゆかりの場所・仙巌園等で撮ることができました。地元の熱意と応援がもの凄かったです。地元のエキストラの方々も前のめりになって芝居に参加してくださいました。芝居のなかで、斉彬公の『皆の者、大儀であった』と言う台詞を聞いて、涙をこぼしておられる方もいたほどです」
そもそも、今回、西郷隆盛を題材に選んだわけは、西郷隆盛の人間的魅力であった。
「西郷隆盛の名前はよく知られていますが、実際のところ何をしたかはよく知られていません。でもその生涯は、三度結婚したり、奄美大島で暮らしたりと、波乱に満ちています。林真理子さんの小説に書かれた、島での愛加那(二階堂ふみ)との出会いがなければ、“西郷隆盛”は存在しなかったという切り口にも魅了されました。なにより、いま、こういった時代に、西郷さんのような、たくましさや生命力にあふれた人物が必要ではないかと思います。自分のためでなく人にために生きるという、言葉でいうと簡単ですが、実践するのは大変なことをやってきた。でも決して聖人君子のような最初から大人物であったわけではなく、“人間・西郷”をしっかり描きたいなと思って、中園ミホさんと演出陣とともに脚本開発をしております」
人間・西郷は、“失敗する男”でもある。
「西郷は、“失敗する男”として、いろんな壁にぶち当たります。いまの時代、失敗することがなかなか許されないような気がしますが、西郷は失敗します、壁にぶち当たります。そうして、その壁を乗り越えていくところを、わくわくしながら、みなさんに見ていただきたいです」
西郷を演じる鈴木亮平は、男も女も惹かれてしまう魅力を持っていると櫻井は絶賛した。
「収録の時間も台詞の量も誰よりも多く、薩摩ことばにも格闘しているでしょうし、撮影の合間には相撲の稽古にも行っているにもかかわらず、自分の撮影のないときも、現場にいて、キャストやスタッフとコミュニケーションを取っている。膨大な台本と向き合うために、少しでも時間があれば控室にこもって練習したいところでしょうけれど、まず現場にいるんです。もはや、鈴木亮平なのか、西郷どんなのか、境界がない感じがすごくして、男も女も彼に惹かれてしまうという人物像を、演技を超えたところでやっていただいている気がします。
西郷さんは繊細
制作統括・櫻井の話を受けて、西郷隆盛役の鈴木亮平は「隙があるというのは、ほんとそうだと思います。食べ物をこぼしてしまったり。ほんと、子供です」と笑って肯定した。
「現場にいつもいるということは、僕はあまり意識していなくて。現場にいて、ほかの人のお芝居を見るのが好きなだけなんです。
西郷隆盛(吉之助)に関しては、鈴木はこのように考えている。
「吉之助さんは、“当たって砕けろ”精神をもっていて、考えるより前に行動します。僕もそうありたいと思っているものの、どうしてもリスクや自分が傷つくことをおそれてしまう。
実行力ある薩摩男だが、反面、繊細だと鈴木は解釈している。
「いわゆる薩摩隼人たちは豪快という印象がありました。ロシアンルーレットを酒飲みながらやったり、ちょっとでも臆病なところを出したら仲間内から斬られるようなエピソードがあったらしいですし。ところが、時代考証の先生に聞くと、当時、武士の間では、泣くことが男らしさの逆にある行為と捉えられていなかったらしくて、他者の言動に感動して泣くことが、ある種の美徳のうちであったのではないかというので驚きました。そうなると、いま、僕らの思う、男らしさイコール武士というのは違うのかもしれない。とりわけ、西郷さんには繊細なところがあったようですし、これまで考えてきた男らしさにこだわらず、人間臭さを強調しながら演じています。豪快であろうが繊細であろうが、素敵な男に見えればいいと思うんです」
西郷さんは草履も小さい
精神的には西郷さんに近づいている鈴木だが、林真理子の原作に書かれている目ヂカラについては、最初、少し悩んだとか。
「黒目が異常に大きくて吸い込まれそうだったらしいですが、僕は、正反対の目をしているので(笑)、最初はどうしたらいいか悩みましたが、これまで大河ドラマを見ても、肖像画に似てない人もたくさんいるので、目ヂカラは忘れて、吉之助さんの慈愛に満ちた眼を意識しながらやっています」
林真理子の原作小説を、脚本化した中園ミホの脚本は、ほんとにすばらしく、これからの台本が上がってくることを楽しみにしていると鈴木はいう。
「どんなところにもドラマがありますし、ぐっとくる台詞が多い。言う台詞よりも言われた台詞が印象に残ります。ひとつひとつが強烈で、ぐっときます。男社会を描いていながら、中園さんの視点なのか、まるで男女の恋愛のように主従や友情を描いていて、濃い人間関係になっている気がします。男同士のシーンだけでなく、男女の恋愛パートも。奄美大島での愛加那さんとのシーンも楽しみです」
鈴木がおすすめする、1月の見どころは、ここ。
「4話の、赤山靭負先生(沢村一樹)の死がキーになっています。目の前でお世話になっていた人の、不条理な死を目の当たりにして、世の中には間違いがあることをはっきり自覚するシーンを、鹿児島で撮影しました。赤山先生を演じている沢村一樹さんは、僕がクランクインする前に、鹿児島に行ったとき、朝ドラ『ひよっこ』の撮影の合間に来ていろいろ案内してくださったんです。友人まで呼んで、薩摩ことば限定の飲み会をしてくださるなど、大変お世話になりました」
若く未熟な西郷吉之助が、様々な出会いと体験を経て、西郷隆盛へと成長していく。その様を1年じっくり演じる鈴木は、当時、実際使用されていた、小さいサイズの草鞋(足半)を履いて、当時の人の大変さを噛み締めながら撮影に挑んでいる。
かかとも足の指も出てしまうようなサイズで、歩くといちいち痛く、突き指もしょっちゅうだというが、慣れると足が丈夫になるし、自分の身体にも大地に対しても鋭敏になる。こういうのはたぶん、人物の精神性にもつながるはず。これを現場で履いているのは鈴木だけ。肉体の細かい部分からも役にアプローチしていく鈴木亮平の西郷さんの活躍を、これから1年、楽しみにしたい。
(木俣冬)
大河ドラマ「西郷どん」
原作 林真理子
脚本 中園ミホ
音楽 富貴晴美
語り 西田敏行
出演 鈴木亮平、瑛太、黒木華、錦戸亮、二階堂ふみ、塚地武雅 / 北川景子、沢村一樹、青木崇高、藤木直人 / 鹿賀丈史、平田満、風間杜夫、松坂慶子、渡辺謙 ほか
オフィシャルサイト
1月7日(日)スタート NHK総合 よる8時~