
アイドル飛躍のカギはMC芸人にあり……
こんなネット記事が先日話題になりました。同記事は、乃木坂・欅坂を含めたAKB系グループについて言及したもの。
90年代後半から00年代前半にかけて、一時代を築いたモーニング娘。もまた然り。彼女たちも冠番組、さらにはゲスト出演したバラエティ番組で多種多様な芸人たちと共演し、時にイジられ、時に持ち上げられ、時に無理くりなキャラ付けをされながら、その存在感を強めていきました。では、具体的にどんな芸人とどんな絡みを見せていたのかを、ここで振り返っていきましょう。
『モー。たいへんでした』(日本テレビ系) 藤井隆
「モー娘。初となるゴールデンの冠番組」として鳴り物入りでスタートしたものの、初回の「中澤裕子卒業スペシャル」をピークに注目度は急下降。動物・子供・グルメにからませたアイドル番組のお約束的仕様にしてみたり、他番組のパクリ企画をやってみたり、時の首相・小泉純一郎さんに謁見させてみたりと、さまざま模索したものの、結局、「視聴率のほうがモー。たいへん」と揶揄されるほどの低視聴率にあえいだ挙句、わずか1年ほどで打ち切りに。スタジオでMCポジションをつとめていた藤井隆さんも、ほとんどロケメインのVTR垂れ流し状態だった番組構成ゆえ、本来の力を発揮できませんでした。
『Matthew's Best Hit TV』(テレビ朝日系) マシュー南(藤井隆)
で、藤井隆さんの面目躍如となった番組がこちら。彼の特筆すべき点は、ヲタ的視点からアイドルに内在する魅力を引き出せること。後述する『うたばん』では、MCにとってイジリやすいキャラを強引に設定することで番組を成立させていましたが、『Best Hit TV』はそのほぼ真逆。ゲスト出演した娘。メンバーの内側に存在するアイドル性・個性を敏感に察知し、その部分を掘り下げて愛のあるイジリをしていたものです。それが、筆者含めたモー娘。ファンにとっては、非常に心地よいものでした。
ゲストを複数ではなく1人に絞ったこと、18歳のアイドル「マシュー南」なる仮の姿を藤井さんに与えて出演アイドルと同じ目線で話しやすくさせたことなど、制作者サイドの意図と戦略も実に秀逸。
『うたばん』(TBS系) 石橋貴明
後藤真希さんへの過剰なお姫様扱い、飯田圭織さんへの「ジョンソン」、市井紗耶香さんへの「かあさん」呼ばわりなど、恣意的なキャラ付けのもとイジりを加えるのがタカさん流。その最大の餌食となったのが、保田圭さんでした。アイドルらしからぬ非正統派なルックスといじめに近いほどの激しいイジりにもへこたれない鋼のメンタルを持つ彼女は、タカさんおよびうたばんサイドにとって格好の素材。最盛期においては「保田キャラ立ち人形」「保田大明神」なるものまでつくられ、保田さん以外の一部メンバーは、保田キャラ立ち人形以上に置き物化していたものです。しかし、あまりにも個に依存するシステムだったため、2003年春の保田さん卒業以降、うたばんはモー娘。をうまく活かし切ることができませんでした。
『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系) 岡村隆史
モー娘。にとって、先述のヒデちゃんが気のいい隣の兄ちゃん、タカさんが怖くて攻撃的な親戚のおじさんとするならば、岡村隆史さんの立ち位置は先生。彼の生真面目で、若干融通の利かない人間性はまさしく教員的。それに『ASAYAN』のMCとしてモー娘。を誕生から見守っていたという経緯も、「先生」とするには相応しいバックボーンといえるでしょう。
そんな厳格な教師・岡村×個性豊かな女生徒(娘。メンバー)という図式で展開される企画『私立岡村女子高等学校。』通称「岡女。」は、修学旅行にはじまり、期末テスト、体育祭と恒例化するほど大人気に。めちゃイケ的フォーマットに基づき、それぞれに振られた笑いのタスクを懸命に全うしようとする娘。メンバーたちの姿を、当時のヲタは微笑ましく見守ったものです。
『セクシー女塾』(テレビ東京系) 友近
一昔前までのテレ東深夜では、ハロプロ系アイドルによる10分間程度のミニ番組が放送されていました。この『セクシー女塾』もその一つ。構成担当に「世界のナベアツ」としてブレイクする前の渡辺鐘(現:桂三度)さんをはじめとしたNSC出身の放送作家を多数登用していたためか、「天の声(セクシーマチコ先生役)」として、ブレイク前の友近さんを起用。
(こじへい)