けなしているわけではない。

「映像化、やれるもんならやってみろ」
『ゴールデンカムイ』の原作コミックは、ジャンル分けできない作品だ。
基本的には「囚人の身体に掘られた入れ墨を集めて解読し、アイヌから奪われた埋蔵金を探すべく北海道を旅するハードアクション」で間違いないはず。
同時に、ギャグ要素がとても強いマンガでもある。シリアスシーンが続く中にしれっとコメディをほうりこんでくるので、伏線なのかネタなのかわからなくて困る。
最近よくネットで見かけるのは、男たちがラッコ鍋を食べて興奮してしまい、裸で相撲を取り始めたネタ。アレが伏線だったらどうしよう……。
動物と「ウコチャヌプコロ」する男が出てきた回も話題になり、Twitterでトレンド入りしてしまった。意味はコミック11巻を読むとわかります。
食べ物と北海道ウンチクも、ものすごく多い。
特に食事シーンでは採取・狩猟から調理方法、食べ方などまで綿密に描かれており、単体でグルメマンガとして成立するほど。
アイヌ文化については、アシリパが一つ一つ説明してくれている。
登場するキャラは変態ばかりだ。
「「映像化、やれるもんならやってみろ」というつもりで原作を描いてまいりました」
作者の野田サトルが公式サイトのコメントで述べている通り、切り口が多すぎて、映像化する場合どうアプローチするのがベストなのか、かなり分かりづらい。
先日アニメに先立って新宿駅構内に巨大広告が貼り出された(参考ブログ)。ネタシーン詰め合わせ。特に白石がひどい。でもこのごちゃごちゃ感は、間違いなく『ゴールデンカムイ』的。
コメディ、アクション、エログロ、パロディ、グルメ、ロードムービー、アイヌ文化。
全部が躊躇なく盛り込まれている、ミクスチャー作品だ。シリアスっぽいシーンが続いているかと思えば、ページをめくると即和やかに料理をはじめることも。空気の切り替えがはやいのは、マンガ文化ならではの技法だ。
原作をそのまま動画にしても、多分うまくいかない。
アシリパの解説セリフ一つとっても、読み上げるだけだと情報量が多すぎて冗長になるはずだ。
闇鍋のようなごちゃごちゃが魅力であるがゆえに、メディア化が「厄介な」作品だ。
1話のできやいかに
アニメ一話は、元軍人の杉元が埋蔵金伝説を知り、地元に住むアイヌの少女アシリパに出会って、共に探しに行くよう誘うところまで。
ここにアシリパの父の話がかぶさってくるが、現時点ではそれほど踏み込んでいないため、まだ話はシンプル。
ヒグマとの戦いが盛り込まれたことで山場もきっちり作られており、いい意味でわかりやすいアクションアニメになっている。
おそらくアニメの勝負どころは、主要キャラが並び始める4話以降くらいだろう。
次の話以降、脱獄の達人であり作中随一のコミックリリーフ白石と、冷静沈着の猫目スナイパー・尾形など、重要人物がどんどん登場するはず。
さらに元新選組の土方、気狂い中将の鶴見など、3つの陣営のキャラが顔を出し始めて、個性と力関係がぐちゃぐちゃになってきてからが、この作品「らしく」なるところ。
特にアシリパは、作者が「自分が吹き出すまで何度も描きなおします」(参考インタビュー)というくらい、変顔のバリエーションが多彩になる。
だから一話の評は、今後の変顔への期待を込めて「まだ美少女だった頃のアシリパさん」なのだ。
一話の北海道の背景描写は、とても丁寧だ。キャラのセリフ量は試行錯誤中のように見える。
ヒグマはアニメ調ではない3DCGで描かれたことで、杉元から見た異質な存在感が強調された。
原作にあったグロシーンは(杉元のトラウマ、クマに内臓を食べられた人間の様子など)、話に支障がないようにうまく調整されているので、不自然さはほぼない。
全体的に良いさじ加減の滑り出しになっている。
描写方法もさることながら、ストーリー、ネタ、共にボリュームがありすぎる作品なので、尺が足りる気がしない。
どんな描き方がいいのか、視聴者側としても見当がつかない作品なので、まずはじっくり見守りたい。
(たまごまご)