連続テレビ小説「半分、青い。」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第6週「叫びたい!」第32回5月8日(火)放送より。 
脚本:北川悦吏子 演出:田中健二

32話はこんな話


卒業式の日、喫茶ともしびで別れを惜しむ梟会一同(永野芽郁、佐藤健、矢本悠馬、菜生)。
そして上京前夜、楡野家では特上飛騨牛のすき焼きで、鈴愛を送る。


朝ドラ前


高瀬アナ「感動の上京シーンが近づいてきております 考えるだけでもう感動してきました」
和久田アナ「ええ もう? はやっ」
「おはよう日本 関東版」の朝ドラ前。
朝ドラに限らず何かと感動屋さんの高瀬アナを、いつも冷静に見ている和久田アナのバランスが良い。

涙が焼けるのはじめて見た


なななんと、梟会の4人はこれまでずっとツケでお好み焼きを食べていた。
卒業を機についにツケをはらった4人に驚くまさこ(ふせえり)。どうやら払ってもらうつもりはなかったらしい。この喫茶店はまさこの道楽なのかも。

卒業祝いのお好み焼きは、いつもより、じゅうじゅう感があった。
もうこうしてここでお好み焼きを囲むこともなくなることを噛みしめる4人。

菜生が急に泣き出して、テッパンに涙が落ちてじゅうぅと焼ける
ブッチャーは「ひとりで京都とか怖すぎる」と大泣き。ひとりで京都、しかも京都の中心から離れた舞鶴だからそれはそれは不安だろう。その3年後、現実世界では、朝ドラ「ええにょぼ」(93年 主演:戸田菜穂)で舞鶴が舞台となり注目されることになるとは、ブッチャーは知るよしもない(というか、パラレルワールドなので朝ドラがあるかもわからない)。
「半分、青い。」32話「涙が焼けるのはじめて見た」考えるだけで感動する上京シーン
『金閣炎上』水上勉
舞鶴を知りたかったらこれを読もう。金閣寺を燃やした犯人の生まれは舞鶴。水上勉の「飢餓海峡」や「五番街夕霧桜」にも舞鶴が登場する。ただし観光ガイド的ではまったくありません念のため。

上京前日


鈴愛の荷物が東京に運ばれていく。
広々した部屋の床に大の字になって寝そべる鈴愛。
草太(上村海成)がやって来てお別れの挨拶。
「草太は優しいから 人に譲っちゃうから 損しないようにな」
そう、世の中は、鈴愛のようにほしいものをしっかり掴んでいける人だけではない。


運送屋がいってしまってから、宇太郎(滝藤賢一)特製の本棚が完成した。
鈴愛のコミックスが出たら並べろと言い、店にも置くと、娘の未来に期待するお父さん。
でも「〜〜あかんと思ったら いつだって帰ってこいよ」と包容力を発揮する。
BGMは「ふるさと」。

滝藤賢一、ほんとうにすばらしい。無名塾の修業の成果なのか、本人のポテンシャルと努力なのか定かではないが、常に地に足がついた芝居をしている。
この人の背後には役の生きてきた時間が見える。おそらく、自分自身と役の共通する部分をキャッチして、自分のリアルを役のリアルにすることに慣れているのだろう。

永野芽郁の大きな瞳から涙がぽろっ。涙がきれいにこぼれ落ちる瞳の形もヒロインの条件だと感じた。

夕飯はすきやき。飛騨牛特上。
こちらはグツグツ。おかげで、しばらくは納豆になってしまったらしい。
草太はとてもきれいな手つきでメレンゲをつくり鈴愛に差し出す。

晴(松雪泰子)はその夜、街をぶらついたのち、萩尾家に行って、律に挨拶。
帰って眠れずにいると、鈴愛が「怖い夢見た」と寝室を訊ねてくる。
母と娘の感動の別れ・・・は33話に。


卒業式を抜け出して


授業を抜け出してふたりで出かけたのは「いちご白書をもう一度」(歌:バンバン、作詞作曲:荒井由実)。
梟会は卒業式を抜け出して、四人だけで校舎に別れを惜しむ。
看板に落書きとかもしてはしゃぐ。不良ではないが優等生でもない四人。
ドラマに出てきた先生たちは皆、押し付けられたルールに則った人たちとして描かれていて、
鈴愛たちはそんなルールに縛られずに生きている。
鈴愛の破天荒さはずいぶんと描かれたが、四人でもっと痛快ないたずらをやるエピソードも見たかった。
こどものときの糸電話実験のような。
でも彼らにとっては、いつもツケでお好み焼きを食べていたこと、最後に卒業式を抜け出すことなどが、ささやかな世間への反抗だったのかもしれない。
これから、梟会の面々にはどんなことが待っているのだろうか。
(木俣冬)