3作目となる「絶対零度シリーズ」だが、今回の沢村一樹主演ドラマ、フジテレビ系「「絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜」(毎週月曜21時〜)は、1と2とは完全に別作品として捉えたほうが良さそうだ。2までの主役・桜木泉(上戸彩)もメインキャストではなく、あくまでキーパーソンといった位置づけだし、なにより、9割の確率で犯罪を犯しそうな人を事前に探し出す未然犯罪捜査システム、通称“ミハンシステム”なるSFチックなものがど真ん中にあるので、同じ感覚で観るのは無理がある。

月9「絶対零度」は2話を観ればぐっとわかるぞ面白いぞ、1話で脱落したひとちょっと待って!
イラスト/Morimori no moRi

1話があまりにも1話っぽくなさ過ぎた


連続ドラマにおいて、1話は物語全体の大まかな流れを説明する大事な役割を務める。「名探偵コナン」だったら、コナンが小さくなった理由が説明されているし、「ONE PIECE」だったらルフィがゴム人間になった顛末が丁寧に描かれている。しかし、このドラマはそういう意味では適切ではなかった気がする。

1話は、ミハンシステムが犯行を起こすと予想した人物が、他の誰かに殺されてしまうというトリッキーな話だった。結果的にはミハンシステムが選んだ人物は実際に人を殺そうとしていたし、ミハンシステムは正しかったのだが、出てくる人物みんなが悪人だったので、「この人が人を殺すなんて……」や、「え?殺してたの?」などの意外性が皆無だった。また、加害者も被害者も、殺し以外の犯罪をすでに犯しまくっていたので、ミハンシステムが無くても捜査をする口実はあった。つまり、ミハンシステムが無くても作れてしまう話だったのだ。


ミハンシステムが弾き出した人物が犯行を起こす確率は9割だ。つまり1割の人間がえん罪的な扱いを受けてしまう。第1話で見せたかったのは、「ミハンシステムを鵜呑みにしていいのか?」という切り口だったのだろう。そういう意味では成功しているように見えたが、肝心のミハンシステムの魅力が全く伝わってこない回だった。たぶん、物語の筋がもっと明確になった3〜4話辺りでやっていたら意外性ももっと出たし、もっと伝わりやすかったと思う。

絶対2話のほうが1話に適している!


ミハンシステムが弾き出したのは、有名創作料理店の総料理長であり、子どもたちに食事を提供する「こども食堂」の運営にも取り組む藤井早紀(黒谷友香)だった。
そんな藤井に、ミハンチームの井沢範人(沢村一樹)が子供食堂スタッフとして、小田切唯(本田翼)が見習い料理人として近づく。これにより、藤井の娘・元宮七海(多田成美)が8年前に起きた関東女子高生連続殺人事件の被害者だということが発覚する。

第2話は、真面目で美人、非の打ち所のない藤井を捜査するところから始まった。藤井の犯罪とはかけ離れた人物像には、「本当に殺すの?」という意外性があるし、ミハンシステムがあったからこそ、そんな藤井の意外な過去を捜査する動機が生まれた。

藤井の娘・七海を殺していたのは、最高裁判所長官を退任し、政治家への転身を表明したばかりの小松原忠司(中丸新将)だった。藤井が小松原へ復讐をする計画を立てていることに気付いたミハンチームだったが、絶対的な悪であるはずの小松原を法で裁くことは出来なかった。
しかし、藤井を犯罪者にするわけにもいかず、ミハンチームは、藤井の犯罪を未然に防ごうと動く。

つまり、絶対的な悪が野放しにされ、割を食うのは被害者側の人間であるハズの藤井なのだ。これは、ミハンシステムがあったからこそ生まれたストーリーと言える。ミハンの新入り山内徹(横山裕)が呟いた「俺たちが守るのは、クズ」というセリフは、ミハンシステムが生むジレンマをよく表している。藤井がミハンチームに捕まる眼の前で、嘘の笑顔を民衆に振りまく小松原の姿は、もう遺憾以外の何物でもない。

このように、第2話はミハンシステムをフル活用してストーリーが作られていた。
どちらが面白いという話ではなく、第2話の方が第1話向きだったように思えて仕方ない。もし、1話だけ見て「まどろっこしいからもういいや」と脱落してしまった人は、2話を見直してから判断したほうが良さそう。3話が放送開始される直前の7月23日(月)19:44までは、TVerで観られる。
(沢野奈津夫)

「絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜」

月曜 21:00〜21:54 フジテレビ系
今晩の放映時間直前までTver2で話配信

キャスト:沢村一樹、横山裕、本田翼、柄本時生、平田満、伊藤淳史、上戸彩 ほか

脚本:浜田秀哉
演出:佐藤祐市、城宝秀則、光野道夫
主題歌:家入レオ「もし君を許せたら」