2月28日に『ハケン占い師アタル』(テレビ朝日系)の第7話が放送された。

オープニング、いつもナレーションはキズナ(若村麻由美)の声なのに、今回は部長の代々木匠(及川光博)だった。

「人のことをやれ、社長の言いなりだ、アテンドしかできない腰巾着だと陰口を叩く輩がごまんといる。苦しんでいるのは、俺だけだ」
「なんで、そんなに気が利かないんだ?」
初っ端から心の声がだだ漏れの代々木。その内容は想像以上にひどい。相当ひねくれていることがわかる。

前回、リストラ案をDチームに跳ね返された代々木は、腹いせに無茶な案件を振ってきた。それは人気ピアニスト・タカオのミニコンサート。
タカオは気難しいことで有名だ。Aチームの提案に「これじゃ世界一感動するコンサートができない」と機嫌を損ね、コンサートをキャンセルしようとしている。これをDチームに任せようというのだ。

6話の大崎結(板谷由夏)回で、Dチームは完全体となった。前回と今回は、いわばワンペア。これまでのエピソードは、そのままこの代々木回につながっている。
初回はあんなにギスギスした職場だったのに、今はみんなが愛おしいキャラになった。
「そうだな……。今の俺たちならできるか!」(上野)
どんな困難にも前向き。圧を掛けたはずの代々木は、この光景を露骨に嫌がった。
「ハケン占い師アタル」及川光博の鋭すぎる一言「人の心を読める顔して」闇落ち部長を占った杉咲花7話
イラスト/Morimori no moRi

「なんだ、人の心を読めるみたいな顔して」(代々木)


代々木は本社への復帰がご破算になった。勝手にリストラを画策したことがばれ、部下の信頼を失った責任を取らされた形だ。社長に贈ったはずのプレゼントは、そのままゴミ箱に捨てられていた。
点数稼ぎはお見通しということ。

新しい代々木の役職は「Dチーム専任部長」。これから代々木はDチームに常駐となる。でも、Dチームにいても代々木は呆然とするのみ。何しろ、出世の望みが完全に絶たれたのだから。
ただ何もせず、Dチームの動きを見ている代々木。
すると、全員が些細なことをアタル(杉咲花)に確認していることに気付く。
「アタルちゃん。この運営スケジュール、どう思う?」
「チラシ作ってみたんだけど、どっちがいいと思う?」
「これ、何か予算削れるところないかな?」

呆然とする代々木をアタルがじっと見つめている。
「な……なんだ? 人の心を読めるみたいな顔して」
鋭い。さすが、アテンドに懸けてきた男。周囲の状況を見落とさず、的確に把握している。
「部下の信頼を損ねた」を理由に窓際に追いやられたが、この能力をもって部下を本気でサポートすればいい上司になるのでは? これは7話クライマックスへの助走だ。

アテンドに懸けてきた代々木が能力を発揮


絶望の代々木は、闇落ちする。順調に行きかけているミニコンサートを中止させるため、「爆弾を仕掛けた」と会場に脅迫電話を掛けようとしたのだ。それを阻止したアタルは、代々木に告げた。
「ハイハイ、わかりました。あなたを見ます」
とうとう、頼まれてもいないのにアタルが占いを買って出た。

代々木にはトラウマがあった。
「世界一感動するイベントを作ってみせる」と意気込み企画書を量産するも、尊敬する上司に「才能がない」と笑われ「営業のほうが向いてる」と酷評された過去があったのだ。

今回、アタルは代々木を以下の言葉で叱り飛ばした。
「才能がないって言われて傷付いたかもしれないけど、あの時、歯食いしばって諦めずにいたら、今頃、クリエイティブな仕事してたかもしれないじゃん! この世に才能のない人間なんて1人もいないんだよ。どんなにつらくても、諦めずに努力し続けることを才能って言うんだから」
「あんたのはアテンドじゃなくてアピールじゃん。本物のアテンドは見返りなんか求めず、相手のことを心から思ってやるものなんじゃないの? さっきから認めろ認めろと言ってるけど、そうしてもらいたいなら、あんたがまず相手を認めろっての!」

直後、コンサート会場から代々木に呼び出しが掛かった。タカオが何かにへそを曲げ、「上司を呼べ」と言い出したのだ。代々木が真意を問いただしても、タカオの怒りの理由はわからない。そして、機嫌を損ねたままコンサート中止を宣言する始末。この態度に代々木は激昂した。
「あんたは人前でピアノを弾くのが怖いんだよ。自分から逃げてるだけなんだよ。長年やってきて才能に行き詰まってるのかもしれないけど、それはあんたが『先生、先生』って呼ばれて、どんな平凡な演奏をしても文句も言われなくなったからだよ」
「そういう意味じゃ、あんたはもう才能ないかもな。だって、どんなにつらくても諦めずに努力し続けることを才能って言うんだから!」

ここ、代々木の真骨頂。「諦めずに努力し続けることを才能って言う」のくだりが、完全にアタルの受け売りなのだ。クライアントの無茶な要望をそのままDチームに丸投げしていた代々木ならでは!

さらに、代々木は行く。
「私の部下は、私以上に完璧なアテンドをしている。水は軟水、部屋の湿度は55パーセント。演奏中は嫌いな色の紫が視界に入らないようにし、演奏後は羊羹を用意し、コーヒーに入れるのはポーションではなく牛乳。そして、あんたがやれピアノが気に食わないだの調律師を替えろだのと言っても、文句一つ言わず必死で頑張ってきた。それなのに、何の文句があるんだ!?」
仕事していないふりをして、ちゃっかりDチームの仕事ぶりを横目で把握していた代々木。周囲の状況を見落とさず、的確に把握している。さすが、アテンドに懸けてきた男だ。

実はタカオ、プレッシャーに負けそうになった駆け出しの頃、若き日の代々木から「ピアノを弾いてくれ」と熱く訴えかけられたことがあったという。初心を思い出したタカオは、予定通りにミニコンサートを開催した。

タカオにとっては忘れられない思い出なのに、代々木本人はそのことを覚えていなかった。
「それはきっと……部長が見返りなんか求めなかったからですよ」(大崎)
若き日の代々木は、承認欲求で頑張っていたのではなく、良いイベントにするために奮闘していた。真のアテンダーだった頃の自分を、代々木は思い出した。

そんな代々木を見て、上野誠治(小澤征悦)はスマホに登録する代々木の名前を「クソ部長」から「代々木部長」に書き換えた。相手を認めれば、自ずと周りだって変わる。アタルの言う通りだ。

今度はDチームがアタルを占う


「本物のアテンドは見返りなんか求めず、相手のことを心から思ってやるもの」と代々木に言ったアタル。彼女は毎回、自分に当てはまることを相手に言っている。

占いで相手に見返りを求めるのがキズナだ。信者にさせ、大金を巻き上げようと目論むのが母のやり方。アタルは見返りを求めない。だから、キズナみたいに優しくない。上からの態度でズバズバ行く。なんだかんだ、料金を受け取ってないし。つまり、見返りを求める代々木を叱り飛ばした今回の占いは、間接的に母・キズナへのダメ出しにもなっている。

Dチームは全員がアタルを頼りにしている。そのアタルが、今、危機が瀕している。キズナが現れるとアタルは怯えた子どもの表情になってしまう。

「占い師は自分を占えない」とよく聞くが、それはアタルも同じなのかもしれない。
「俺たちが占ってやるかあ、アタルのこと」(上野)
第8話は、どうやらDチーム全員がアタルを占ってあげるよう。もう、次回予告だけで泣ける。今までアタルに救われてきた仲間たちが、今度はアタルを救ってあげてほしい。
(寺西ジャジューカ)

木曜ドラマ『ハケン占い師アタル』
脚本:遊川和彦
主題歌:JUJU「ミライ」(Sony Music Associated Records)
音楽:平井真美子
ゼネラルプロデューサー:黒田徹也(テレビ朝日)
プロデューサー:山田兼司(テレビ朝日)、山川秀樹(テレビ朝日)、太田雅晴(5年D組)、田上リサ(5年D組)
演出:遊川和彦、日暮謙(5年D組)、伊藤彰記(5年D組)
制作協力:5年D組
制作著作:テレビ朝日
※各話、放送後にビデオパスにて配信中