10月24日に『科捜研の女』(テレビ朝日系)の第18話が放送された。

<第18話あらすじ>自分が無事と気付いた蒲原


液体爆発物を浴びてしまった蒲原勇樹(石井一彰)。それを見た榊マリコ(沢口靖子)は絶叫したが、爆発は起こらない。
自分が無事と気付いた蒲原は、杉原卓海(浅海翼)を連れて逃亡する犯人グループを追いかけた。
警察と犯人グループが撃ち合う中、被弾した犯人の1人・阿部健(藤本涼)は死亡。風丘早月(若村麻由美)によって、犯人の死因は玉城詩津香(浅野ゆう子)の銃撃ではなく爆発によるものだと判明したが、現場マンションで愛人と密会していた夫・雄一(山崎銀之丞)とともに詩津香は厳重注意を受けた。
土門薫(内藤剛志)は強盗犯の3人以外に手引きした者がいたと睨む。そして、死亡した阿部の足の爪からは関西原料株式会社のろ過砂が検出された。阿部はこの会社の元アルバイト社員だったのだ。

そんな中、犯人グループから杉原修(一條俊)の携帯に連絡が。日本では認可されていない血糖値を急激に上げる薬品「ゲルカゴール」を要求する電話だった。風丘の協力で薬を入手したマリコは犯人の元に向かう。ここで卓海と薬を交換するはずだったが、犯人に飛びかかった修がナイフで刺されてしまった。卓海を車で連れ去る犯人たちを追いマリコは車に飛び乗ったが、車はそのまま急発進。卓海と共にマリコも人質にとられることとなった。

卓海の持つ携帯ゲーム機を使い、マリコは車内から「ゲーム機の位置情報を探索してください」と科捜研にメールを送る。また、逃走中のやり取りで犯人2人は鳴海浩介(柴田善行)と信二(池内万作)の兄弟であることが判明した。兄の浩介が低血糖の痙攣発作を起こしたため、マリコの説得で車は近くの診療所へ急行。そこに土門と詩津香が突入して浩介と信二を逮捕、マリコと卓海は救出された。
病院で目を覚ました修の元に逮捕状を持った土門が訪れる。関西原料株式会社のろ過砂は修が務める浄水器の会社も使っており、修のスマホデータを復元すると阿部とのメールのやり取りが見つかったのだ。
強盗犯3人を手引きしたのは修だった。
「科捜研の女」マリコと土門はなぜ付き合わない? 浅野ゆう子のレギュラー加入が楽しみ
イラスト/サイレントT

蒲原の無事を知って訪れた賢者タイム


一番の気がかりだった蒲原の安否だが、オープニングでいきなり無事と判明した。どうやら、彼が被った液体は付着しても爆発する類のものではなかったらしい。ずっと蒲原の命を心配していたのに冒頭でサラッと無事を明かされ、我々は気が抜けてしまう。この1週間のやきもきは何だった!? という心境。過去にマリコ、土門、風丘らが行ってきた“死ぬ死ぬ詐欺”を蒲原にもカマされた格好なのだ。これからは、誰かが危険な目に遭っても「どうせ詐欺じゃないか?」と疑ってかかろう。
そう、心に強く決めた。まあ、よく考えたら蒲原は今クールから「ルヴァン」のCMに起用されており、これから露出し続ける彼がいきなり殉職するはずはない。
放送当日、Twitterでは「蒲原」の2文字がトレンドワード入りしていた。蒲原は世の大勢から心配されていたのだ。爆液を浴びるも自分が無事と気付いた瞬間、びしょ濡れのまま犯人を追いかけた彼の後ろ姿はカッコ良かった。

しかし、弊害がある。
1週間越しにホッとしたため、その後のストーリーがあまり頭に入ってこなくなってしまったのだ。開始10秒後に訪れたエクスタシーで賢者タイムが訪れ、どうにも気が抜けた。

それでなくとも、今回の脚本には妙な穴が多かった。特にわからなかったのは、犯人グループの動機だ。国内では認可されていない高額の薬を入手するため、低血糖の男が銀行を襲ったということ? じゃあ、お金がなければ浩介は成すすべもなく死ぬしかないのか? あの弟は病気の兄に付き合っていただけ? なんか、調べればもっと他にいい方法があった気がしてならない。止むに止まれぬ犯行だったとしても、犯人グループからは躊躇や罪悪感がまるで感じられなかった。
信二なんて見るからに野蛮で短絡的な男だし。あと、修が信二に刺されていたのもよくわからない。いくら何でも、仲間なのに……。

そんな危ない犯行グループの人質に、マリコは自ら立候補した。
「警察じゃありません。私は看護師です。具合悪そうですね。私なら必要な薬が手に入ると思います」(マリコ)
17話で詩津香から「女優になって」と言われたマリコが、ジョブチェンジ! 今回は「マリコ、看護師になる」である。

裏テーマは「夫がクズ」


17話のレビューで「修がもう1人の犯人では?」と書いたが、この予想が当たった。営業不振で解雇寸前だった修は犯人グループに情報を提供し、銀行強盗に加担していたのだ。奥さんは夫がしでかしたことについてどう思っただろう? 「学校サボってごめんなさい!」と泣きながら謝罪した卓海は、修のとばっちりを受けただけだった。
一方、勤務中に愛人の部屋に入り浸っていた雄一。詩津香は浮気相手に「人の夫に手出すんだったら、ちゃんと家庭を壊しなさい」と啖呵を切り、雄一には離婚を告げた。つまり、18話の根底には「夫がクズ」という裏テーマが潜んでいたのだ。過激な脚本である。

あと、詩津香が「家庭を壊しなさい」と言っているとき、いいタイミングで流れ始めたのが今井美樹の曲というのも因縁を感じた。絶妙過ぎるし、ちょっと笑ってしまった。

最も至福の瞬間を甘噛みし続けるマリコと土門


離婚を決意した詩津香と雄一。この2人と対象的な存在は、我らがマリコと土門だ。

土門 「(詩津香が)うちの係に来てくれないかな」
マリコ 「まさか土門さん、彼女に惚れちゃった?」
土門 「かもしれんな」
マリコ 「……」
土門 「あっ。もちろん、刑事としてな」
マリコ (ニッコリ)

『科捜研の女』には恒例「死ぬ死ぬ詐欺」の他に、マリコと土門による「付き合うかも詐欺」が存在する。マリコは嫉妬をし、土門は言い訳しているのに、まだ付き合っていないのは一体何なのか?
男女は交際に至るまでの過程で一番幸せを感じるものだと思う。つまり、最も至福の瞬間をマリコと土門は甘噛みし続けている。今回は河原を歩いていたが、いつもエンディングで2人はどこへ向かっているのか? この甘酸っぱさと詩津香&雄一のコントラストは鮮明過ぎた。色々あった17〜18話なのに、結局、最後はマリコ&土門が全部持っていってしまった感がある。あと、詩津香は『科捜研の女』のレギュラーに加わっていい気がする。
(寺西ジャジューカ)

木曜ミステリー『科捜研の女』
ゼネラルプロデューサー:関拓也(テレビ朝日)
プロデューサー:藤崎絵三(テレビ朝日)、中尾亜由子(東映)、谷中寿成(東映)
監督:森本浩史、田崎竜太 ほか
脚本:戸田山雅司、櫻井武晴 ほか
制作:テレビ朝日、東映
主題歌:今井美樹「Hikari」(ユニバーサル ミュージック/Virgin Music)
※各話、放送後にテレ朝動画にて配信中