11月1日放送のテレビ東京系「孤独のグルメ Season8」第5話は、毎シリーズ定番となっている焼肉回だ。ほんと、夜中に観るもんじゃない。

「孤独のグルメ」待望のひとり焼肉。豚ロース豚カルビ牛上カルビ肉スープ(ハーフ)白菜キムチでライス5話

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一人一台ロースター、あまりにも「孤独のグルメ」


群馬藤岡駅を訪れた五郎さん(松重豊)は、ホテルとボウリング場が併設された建物でお仕事。いい人そうだけどちょっとめんどくさい支配人(MEGUMI)との商談を終えて、なんとタクシーに乗りながら店を探した。

「見逃さんぞ、見逃さんぞ」と普段の散策よりも集中力マシマシの五郎さんは、車内から中華料理屋のような名前で、町工場のような外観の焼肉屋「宝来軒」を発見。長い8人掛けのテーブルに一人一台ロースターが置かれたひとり焼肉を推奨するような店内は、作り物なんじゃないかってくらい「孤独のグルメ」にピッタリだった。

かと思えば、「奥には座敷もあるのでグループでもぜひ〜」と言わんばかりに、途中で家族連れがやってくる宣伝的演出が心憎い。ナチュラルにホルモンをお持ち帰りする客を描くのも店に優しい。

ジャージなのかラガーシャツなのかよくわからない服を着たおっさん



ガツ芯、コブクロ、ノドガシラ、くつベラなど、豚ホルモンが充実したメニューから五郎さんが選んだのは、豚ロース、豚カルビ、牛の上カルビ、肉スープ(ハーフ)、白菜キムチで、ライスを食べるためのラインナップだ。どの皿も400円かそこらで気兼ねなく食べられそうな価格帯も、ひとり焼肉では嬉しい。


思わず本物なんじゃないかと疑ってしまうような、エキストラの常連客ぶりがすごかった。白いタオルを頭に巻いたおっさん、麦わらのハットをかぶった白髭のお洒落なおっさん、背筋がピンと伸びたカーディガンのおっさん……。スタイリストの演出か、それともエキストラのおっさんたちの自己プロデュースなのかわからないが、ファッションのバリエーションが豊富すぎる。ジャージなのかラガーシャツなのかよくわからない服を着たおっさんなんか、あるあるとしてあまりにも絶妙だ。

ワイワイガヤガヤした店内で、ひとりで食事を楽しむことの多い五郎さんだが、今回は他のおっさん8人と、ひとり焼肉。みんなそれぞれロースターと向き合い、好きなように肉を焼いて、好きなように酒を楽しんでいる。
ワイワイガヤガヤではなく、ずっとジュージューいってる。

五郎さんの焼肉顔


「よし、まずは豚カルビ。ロースも一緒に行こう」

「豚は焦らずゆっくり火を通す」

豚を焼いている間、五郎さんは白菜キムチと肉スープでつなぐ。焼きあがる肉をうっすら口角をあげてどんなもんかと覗き込む顔は、まさに焼肉顔だ。どうせ美味いんだろ? でも食う前に認めるのもシャクだから俺が食って判断してやる。だから早く焼きあがりやがれ。
そんな顔だ。

「ロース、やっぱり王道、王者、王様の肉だ。ご飯が大歓声をあげて迎えている」

肉でライスをかっ食らう構図も焼肉回ならではだ。通常は正面や横からの撮影が多いが、今回は斜め後ろからの図も印象的。五郎さんの後頭部、箸、お茶碗、その向こうに空のロースターが見える画は、「美味しそう」よりも、「マネしたい」と思わせる。

肉を焼きたい、育てたい。
カルビを少し赤い状態で食べたり、脂がカリッとなるようにじっくり待ちたい。タレにビシャビシャに浸してもいいし、塩でもいい。五郎さんのように、追加注文した半ライスの上に最後の肉を並べてキムチを乗せ、さらにはタレをかけてかっ込むバカみたいな食べ方もしたい。

「このロースターは俺の国だ。どう焼こうとかまわない」

最強の飯テロは、食べたい+マネしたいだと思う。五郎さんや常連客の自由な振る舞いが、視聴者の食欲を刺激する。
ほんと、夜中に観るもんじゃない。
(沢野奈津夫)

・「孤独のグルメ Season8」
放送時間:金曜24時12分〜
出演:松重豊、大橋彰(アキラ100%)、MEGUMI
原作:原作/久住昌之・画/谷口ジロー
音楽:The Screen Tones
久住昌之、フクムラサトシ、Shake、河野文彦、栗木健
オープニングテーマ:「Goo,Goo,Goro!」
作曲:久住昌之
演奏:The Screen Tones
エンディングテーマ:「五郎の12PM」
作曲:久住昌之
歌:伝美脚本:田口佳宏 児玉頼子演出:井川尊史 北畑龍一 北尾賢人