木村拓哉が主演を務める日曜劇場「グランメゾン東京」が11月17日に放送された。第5話は、連続ドラマにおいて初回や最終回と同じくらい重要と言われる前半の山場だ。


"ナッツ混入事件"の犯人が早くも発覚。予告の時点で「全貌が明らかに……」みたいになっていたが、本当に明かすとは思わなかった。犯人の正体や経緯よりも、タイミングの早さに驚く。てっきり9話くらいまで取って置くやつだと思ってた。
玉森裕太で急展開「グランメゾン東京」栗とキノコとナッツオイル5話、カメラワークも「オ〜ウ、ウマソウ」
イラスト/たけだあや

オオミヤ君はカズの息子


尾花(木村拓哉)らの『グランメゾン東京』は、、リンダ(冨永愛)が記事で"ナッツ混入事件"に触れたため、炎上してしまう。ついに迎えたオープン当日も予約キャンセルが相次ぎ、たったの2組しか来店しなかった。

「ごめんな」と"賄い行き"になった食材たちに謝る尾花は、食材を余らせないためにフードフェスでカレーを出すを提案。
祥平(玉森裕太)を手伝わせ、カレー作りに挑む。「ホテルのシェフは暇」と尾花は常々口にしていたが、まさかバイトする時間があるとは。辞める宣言もしているし、有給でも消化しているのだろうか。

ちなみに、「うちって世界一の店目指してるんじゃ……」とフェス出店に疑問を口にしたオオミヤ君。演じる三浦良太は、あのサッカーのキングカズこと三浦知良の息子らしい。よく見ると似てる。


クシャっとなる鹿の骨


さっそくスパイスの買い出しに行く尾花と祥平の並びがいい。カゴを持って尾花の後をついていきながら、祥平は店員に「クミンはインド産のもので、カルダモンはなるべく新鮮なものが……」と要求してフォロー。信用というよりは、当然と言わんばかりの尾花の立ち振る舞いと、余裕で要望に応えるも、一緒にいること自体に緊張した雰囲気の祥平が絶妙だ。

言葉にこそ出さないが、動きや表情だけで祥平が尾花をリスペクトし続けていたことがわかるし、尾花はそれをわかって憧れの人であり続ける。外的にはなるが、同じジャニーズ事務所の先輩後輩であることも良い感じに作用していた。

厨房では、もう少しだけ緊張感を持ち、もう少しだけ丁寧にフォローしていた。「エスコフィユ」時代に祥平が賄いで作っていたカレーをアレンジし、作り上げた一品に倫子(鈴木京香)が驚く。
しかし、「鹿肉とヤギミルク合わせたのね。よくすぐに思いついたね」と簡単に分析されたことに祥平も驚く。もしかしたら、祥平はここで「自分がいなくても『グランメゾン東京』は大丈夫」と考えたのかもしれない。

それにしても、鹿の骨を焼いてクシャっとなる描写が本当に美味しそうだった。役者や料理が注目されがちだが、調理中のカメラワークはすごい。料理人の姿、食材をさばく手元、料理人の目線に加えて、まるで調理器具からの目線のようなものまで入ってくる。
第1話だったか、透明の鍋の底からのアングル"コンロ目線"は面白いし何より美味しそうだった。カットの切り替えや音楽も含めて、"美味しそう"が"かっこいい"を呼び、"かっこいい"が"美味しそう"を引き出している。

倫子が鈴木京香でよかった


様々なフェスで評判になった「スリースターズ」(フェスでの名前)だが、ここで「gaku」のオーナー江藤(手塚とおる)が横やりを入れる。フェスの運営にクレームを入れて、ナッツ混入事件の尾花が関わっていることをバラしたのだ。一話一悪、出番こそ少なかったものの、きっちりと仕事をしやがる。

追い込まれた店のために、京野(沢村一樹)は事件の罪を全てかぶって店を辞めると言い出し、尾花が涙を滲ませて止める。沢村一樹と木村拓哉が怒声を上げてお互いをかばい合う。
ド迫力だ。

「3年前のことなんてもうどうでもいい。コンタミの原因とか、誰が犯人とかなぜとか、殴ったとか、テロとか、犯罪者とか……勝手に言ってろ!」

「私たちは今、美味しい料理を作って。それを食べたお客さんたちは喜んでくれている。何も間違ってないよね?」

ここで倫子がこんなこと言い出すもんだから、それはもうグッとくる。まっすぐ純粋ド直球に尾花と京野を黙らせ、オーナーシェフとしての決意をスタッフ全員に伝えた。
説得力と強がりが見える年上のお姉さんの言葉。本当に倫子が鈴木京香でよかった。

相沢の「オ〜ウ、ウマソウ」が地味に素敵



ナッツ混入事件の犯人は、祥平だった。3年前、祥平は誤ってナッツオイルを料理に使ってしまっていたのだ。「グランメゾン東京」の危機に、事実を告白しようとするも、尾花は「賄い食っていけ」と遮る。そのメニューは、「エスコフィユ」時代に三ツ星が取れず落ち込んでいた尾花を励ました、祥平が作った賄いの「栗とキノコのアッシュパルマンティエ」だった。

当時を再現するように尾花は「賄い出来ました〜」とサーブし、相沢(及川光博)が「オ〜ウ、ウマソウ!」と片言でリアクション。当時と違うのはそのレシピだ。尾花はナッツオイルを使用することで、祥平に「全てわかっている」ことを伝えた。相沢も同様だろう。

「俺のミスです……。尾花さん……」

「フードフェス、楽しかったな。俺はフレンチにはまだ無限大の可能性があると信じている」

罪を告白したい後輩に、またしても尾花は言葉遮り夢を語った。栞奈(中村アン)の犯人を恨む理由など、まだ完全に解決とは言えないが、尾花の男気でひとまずナッツ事件は終了。

事件をムリに引っ張らず、平古が「gaku」に加入という新たな事件勃発をさせて、物語はさらに盛り上がる。最初は犯人発覚の早さに驚いたが、サクサク進むスピーディな展開が魅力の1つであり、とても合点の行く"前半の最終回"だった。
(沢野奈津夫)

■『グランメゾン東京』
出演:木村拓哉、鈴木京香、玉森裕太 (Kis-My-Ft2)、尾上菊之助、冨永愛、中村アン、手塚とおる、及川光博、沢村一樹
脚本:黒岩勉
プロデュース:伊與田英徳、東仲恵吾
演出:塚原あゆ子、山室大輔、青山貴洋。
料理監修:岸田周三(カンテサンス)、トーマス・フレベル(INUA)、服部栄養専門学校音楽:木村秀彬主題歌:山下達郎「RECIPE(レシピ)」