原作2巻『決してマネしないでください。』蛇蔵

脳内会議vs脳内会議
第4話で小爆発から飯島さん(馬場ふみか)を守ろうととっさに抱きしめてしまった掛田氏(小瀧望)。あまりのことに一旦は「仮想現実だったのでは?」と極端な結論を出しそうになるも、脳内会議を経て飯島さんとの関係が深まっていると自信をもつに至る。自信を持ち慣れていないというかなんというか、食堂で飯島さんに向かって歩いていく掛田氏はこの一瞬、自信過剰の勘違い男になっている。「やれやれ、恥ずかしがりの君の代わりに二人の距離を詰めてあげるのは今日も僕のほうだ」からの一連のセリフ、きっと脚本家(今回の担当は土屋亮一)は書いていて楽しいやつだろうなあ……。脳内会議中の掛田氏の着ているチェック柄が微妙に違うのは、演出陣の細やかな遊びだろう。
このシーンで掛田氏は500円玉をひとさし指と中指の間に挟んでかっこつけて歩いている。そういえば2話で飯島さんに近づくため、ゆで卵を大量買いして「心配です」と言われ有頂天になったときも、ゆで卵を2本の指に挟んでいた。掛田氏は何かと指に挟みがちな人なのだな。でも指がだいぶ長くないとうまく挟めなそうだ。そこは3話の手洗いシーンで小瀧の手がすらっと長くきれいなこともしっかり目撃している。思えば、手フェチ的に見どころのあるドラマだ。
飯島さんの方でも衝動的に抱きついてしまったことについて脳内会議を開いた結果、「抱きついたとき、唐揚げくさくなかったか?」がもっとも気にかかっていたことだという結論に。掛田氏の自信はあっという間に打ち砕かれる。唐揚げくさくなかったとわかり、「今日はおおいに飲み、歌い、踊り、騒ぎましょう」とはしゃぐ脳内飯島さんたちが不可思議すぎてかわいい。
なりきり具合の深まる再現パート
さらに食堂での同僚との会話から飯島さんに男の影を見てしまい、再び自信を失う掛田氏。そこに高科先生(石黒賢)がスーパーコンピューターを持っているだけで物理学者が核兵器開発の疑いをかけられたことについて「短絡的な憶測はよくない」と語り、示唆を与える。コンピューターというおおきな発明に寄与していったジョン・フォン・ノイマン、アラン・チューリングのエピソードが紹介され、20世紀の戦争でチューリングが暗号を解読したことと、飯島さんの真意を解読することが重なる。
話数を重ねていることもあるのか、キャスト陣の「なりきり具合」もどんどん深まっているように見える。チューリングを演じる小瀧やイギリス軍のテレス(ラウール)の演技は観ていて楽しく、再現パートが物理学者のエピソードを知ること以上に見応えのあるものになってきた。ロボットダンスをする掛田氏も、つい見入ってしまう不思議な魅力があったし。
「男の恋は名前をつけて保存、女の恋は上書き保存」なんていう、どこかで聞いたような言葉で有栖(今井悠貴)を疑う掛田氏。なぜかPC破壊vs復旧で対戦型の実験を行う。スクーターでひく、水没、燃やすなどをしても意外にもデータは無事なんだなあというPC豆知識が挟み込まれつつ、テルミット反応(3000度)で物理的に溶かすことでようやく有栖に勝利し、誤解も解けて掛田氏は飯島さんからメールアドレスをゲットしたのだった。
そういえば5話は、特にストーリーに関わるわけでもないのに一瞬挟まれたテレスの女装がかわいい回でもあった。でも有栖の女装(白衣のあわせが逆なだけという高度な?もの)もかわいかったよ!
(釣木文恵)
決してマネしないでください。 出演:小瀧望(ジャニーズWEST)、馬場ふみか、ラウール(Snow Man/ジャニーズJr.)、今井悠貴、織田梨沙、マキタスポーツ、石黒賢 ほか
原作:蛇蔵 脚本:土屋亮一、福田晶平、鎌田順也
演出:片桐健滋、榊英雄
制作統括:谷口卓敬、八木亜未
制作:NHK、大映テレビ