木村拓哉は主人公気質の俳優だ。
全てとは言わないが、ほとんどの木村拓哉主演ドラマは、「キムタクかっけー!」ってなるために作らているし、実際にそれで面白い。しかし今作は、玉森裕太や及川光博、第6話では寛一郎が良く見えるために作られていて、良い意味で人気が分散している感じがある。「キムタクかっけー!」を中心に、「〇〇が良い!」が成り立っている。
芹田の「5mm野菜のパラパラチャーハン」がすでに良い
「トップレストラン50」の候補に選ばれたことで、尾花(木村拓哉)は「日本の鮮魚は世界一」を理由に魚料理を見直す。一方、祥平(玉森裕太)が加入した丹後(尾上菊之助)がシェフを務める「gaku」も、新たな魚料理の開発に取り組んでいた。
今回スポットが当たったのは、見習い料理人の芹田だ。なんとかアピールしたい芹田は、ある日、思い切って賄い担当に名乗り出る。萌絵(吉谷彩子)から「えぇ~??美味しいの食べたいよぉ~」と不満が出るも、芹田は「大丈夫です。俺もずっとここでやってきてるんですから」と見栄を切った。下っ端の努力みたいなパターンに弱い僕は、ここで涙腺が緩む。
結果的にこの賄いは全員から酷評を受けてしまうのだが、芹田が作った料理がなかなか涙腺にくる。グルメドラマで下っ端が賄いを作るみたいな流れだと、見栄えや食材ばかりを気にした分不相応な料理を出して「心がない」「背伸びするな」と一蹴されるのがお決まりのパターンだが、芹田が出したのは「5mm野菜のパラパラチャーハン」。
しかし、「まっず」「研いだばかりの包丁を使うと鉄の味が移る」「体を使って働いている僕らが、お米と野菜だけの料理を食べたいと思うかな」と結果は散々。鬼だらけの店で唯一の仏・京野(沢村一樹)が「でも、ご飯のパラパラ具合はちょうどいい感じじゃない?」とフォローするも、大鬼・尾花はムリヤリ水で流し込んで、「片づけておいて」とキツイ一言を浴びせてその場を後にしてしまう。

キムタク節で引き立つ芹田
それでもめげない芹田は、新メニュー開発で使う鰆を捌けるようになるために、魚屋(六平直政)に弟子入りを志願する。ノートをボロボロにしながら勉強し、鰆を捌けるようになるも、またしてもミスを犯し、その上逆ギレして店を辞めると宣言。さらには、新メニュー「鰆のロースト 水晶文旦のソース」のレシピを「gaku」の江藤オーナー(手塚とおる)に売ってしまった。
店を辞めて自暴自棄になった芹田を、京野が退職金代わりに店に食べに来るように誘う。ここでちゃんと来る芹田がかわいい。「こんな店こっちからやめてやるよぉ!」とエプロンを叩きつけたのに、しっかり襟のある服を着てくるのが憎めない。
「鰆のロースト、試作のときより臭い気がしました」
料理に感動した芹田だったが、「鰆のロースト 水晶文旦のソース」の出来について尾花に疑問を投げかけた。尾花は、アクの強い野菜を切ったナイフで捌いた鰆を使用していた。これは、芹田が捌いたものだった。
「お前が市場の鮮魚店の大将に頼んで、魚の捌き方を教わってんのはわかってた。
ここからはキムタク節が炸裂。「お前がいた」ではなく、「お前がいる店」と言ったのもかっこいいし、レシピを横流ししたことについても、「マネできるわけねぇだろ」とあっさりと不問に。「自分で決めろ」と叩きつけられたエプロンを叩きつけ返して芹田を試す。
怒鳴り散らす尾花に対して、泳ぎまくった目に涙を溜めるなで肩の芹田はなんとも弱々しい。それでもエプロンをつかんだ芹田は、もう一度賄いを作らせてくれないかと頭を下げた。出したのは、店で学んだ5mm角の野菜と、魚屋で学んだ鰆の骨の周りについた身を使った「パラパラチャーハン」だった。
味噌を塗る丹後、今後が楽しみ
かっこいい木村拓哉のままで、周りを引き立てる尾花。いや、引き立てるというよりは、倫子も京野も相沢(及川光博)も芹田も祥平も萌絵も、尾花と魅力を引き出しあうかのように描かれている。
ライバルの丹後もそうだ。第6話で丹後は、底知れぬ尾花の才能と料理を楽しむ姿勢を「怖い」と語った。
今夜放送の第7話は、「トップレストラン50」の発表セレモニー。尾花と丹後の戦いはさらに本格化しそうな雰囲気だ。今話も印象的な調理シーンはたくさんあったが、皿に味噌を薄く塗る丹後の姿は、すごく戦っているように見えた。
(さわだ 沢野奈津夫改め)
■『グランメゾン東京』
出演:木村拓哉、鈴木京香、玉森裕太 (Kis-My-Ft2)、尾上菊之助、冨永愛、中村アン、手塚とおる、及川光博、沢村一樹
脚本:黒岩勉
プロデュース:伊與田英徳、東仲恵吾
演出:塚原あゆ子、山室大輔、青山貴洋。料理監修:岸田周三(カンテサンス)、トーマス・フレベル(INUA)、服部栄養専門学校音楽:木村秀彬主題歌:山下達郎「RECIPE(レシピ)」