ドラマイズム「左ききのエレン」(TBS毎週火曜日深夜1時28分 MBS毎週日曜日深夜0時50分)、今夜第8話「才能がなかったんだ」。原作は、マンガ『左ききのエレン』

「左ききのエレン」クリエイターって人間じゃないんですか?じゃあ何?7話
4巻

第7話「不夜城の兵隊」。
こんな先輩いたらいいのになーと思わせる神谷先輩(石崎ひゅーい)が独立。
残された朝倉光一(神尾楓珠)は、新しいチームで働くことになる。
直属の上司はクリエイティブディレクター・柳一(丸山智己)。

次から次へと、強烈キャラクターが出てくるドラマである。
しかも、すべてのキャラクターの強烈さのベクトルがぜんぜん違う。


天才はある種の理不尽な非情さを持つが、柳一は理不尽も何も完全に人を人とも思わない非情さを発揮する。
いや、なにしろ、柳は、自分すらも人と思っていないのだ。

ぼく人間ちゃうんよ


母親が亡くなって休んだ山下さんスキをついて、その席を奪った柳一(丸山智己)
「甘いわ、親が死んだぐらいで」
と言う柳に、
「てめぇ、それでも人間かよ」と、山下さんは怒りを爆発させる。
それに答える柳一のセリフが、彼の「やり方」を端的に表している。
「あ、ぼく人間ちゃうんよ、デザイナーや」
彼は、人間を辞めたのである。

朝倉光一(神尾楓珠)は、そんな柳に反発する。
だが、できた作品をみると、柳が正しいことは光一にも分かる。


柳一のやり方は、部下が全部、彼のコマになる。
「これからはスターよりもチームの時代だ」と言っていた神谷先輩(石崎ひゅーい)のやり方と、真正面から対立するのだ。
「関係ねぇだろ」と言う山下先輩に
「関係あります。チームですから」
と言って助ける光一。

だが、結局、陣痛で今にも生まれそうな現場にいる山下さんに、
電話で「いいから、はやく戻れっつてんだよー」と叫ぶことになる光一。
いい作品を生み出すためにチームを捨てた瞬間だ。

「おまえの顔、はじめてちゃんと見た気ぃするわ」
と言って笑いあった山下先輩を裏切ってしまう。
自らコマになる。

クリエイティブの恐ろしさ


神谷先輩は、チームとして相手と対面し、時に厳しく、時に助けてくれた。
だが、柳は、部下と対面しない。ただのコマとして使う。
当然、神谷先輩のほうがいいと思う。

だが、それで、ほんとうに伸びるとは限らないのが、クリエイティブの恐ろしさだ。

神谷先輩のもとでは、いくらがんばっても評価を得られなかった光一は、柳さんのもとで働くことで、「覚醒」する。
評価を得るのだ。

光一の才能のなさは、実直な努力を生む。迷いながらも、一歩一歩、自分を未来に推し進めようとする。
だが、自分の「向き」を持たない光一は、強烈な才能に出会うと、同じに方向に流されてしまう。

第7話のラストで、豹変する光一。
「大切なのは雑音の排除です。チームなんかいらない」
柳ジュニアとして「覚醒」したのだ。
才能とは、どこに向かうべきか、ゆるがないことなのかもしれない。
恩のある神谷先輩に対して、「いまは全部うまく行ってる、あんたから離れたおかげで。邪魔しないでくださいよ」と言い放ち「俺は、神谷さんに勝ちたい」と宣戦布告。

「やってみろよ」と受けて立つ神谷先輩。
上司と部下じゃない。
光一VS神谷先輩である。
ぐいぐい盛り上がってきた。
口に入った髪をぷっとかやってる場合じゃないぞ、エレン。
(テキスト:米光一成

【DATA】
原作 かっぴー/nifuni『左ききのエレン』(集英社「少年ジャンプ+」連載中) かっぴー『左ききのエレン』(cakes連載)
監督 後藤庸介 深迫康之 本間利幸
脚本 根本ノンジ 守口悠介 本田隆朗
制作 共同テレビジョン
製作 ドラマ「左ききのエレン」製作委員会・MBS

朝倉光一…神尾楓珠
山岸エレン…池田エライザ

神谷雄介…石崎ひゅーい
加藤さゆり…中村ゆりか
三橋由利奈…今泉佑唯
流川俊…吉村界人
朱音優子…田中真琴
園宮千晶…久保田紗友

岸あかり…八木アリサ
佐久間威風…板橋駿谷

柳 一…丸山智己
沢村考…村杉蝉之介
冬月慎太郎…阪田マサノブ

海堂…般若
古谷真治…堀部圭亮