
原作3巻『決してマネしないでください。』蛇蔵
とうとう二人きりのデートが実現
冒頭、教養バラエティ番組などでよく紹介される「衝撃を与えると固体化する液体」ウープレックの上を走り抜ける実験をする掛田氏ら。飯島さんはその実験を楽しく見守り、さらに特殊相対性理論や元素の作り方などの掛田氏の解説を興味津々で聞く。ここまで重ねてきた高科ゼミの面々との交流で、飯島さんの科学リテラシーというか、科学への知識と理解度がぐんぐん深まっているようすが描かれる。結果、「原子核の中身を見るための機械である加速器を見に行く」という理由で、あの恋愛ベタの掛田氏がそうとは意識せず飯島さんをデートに誘うことに成功する。
飯島さんの同僚である一般的な若者、田中さん(織田理沙)のさめた反応によって、飯島さんが興味と好意をもって科学や掛田氏らに対していることがはっきり見えるのがうまい。また、せっかくのデートを成立させるため、みんながその日の誘いを断るシーン。ここで有栖(今井悠貴)が「自動でチャーハン作るロボットの試作してて」と話す。これは、原作で有栖の見せ場であったお笑いロボコンの回で作られるものだ。そのマシンをさりげなく出して、ドラマで描かれている場面以外にも彼らの生活が営まれているのだなと思わせるシーン、すてきだ。あと、テレス(ラウール)のフランス語も見ることができた。普段なじみすぎてるし、6話に至ってはMr.マリックだったし、テレスがフランス出身だってこと、つい忘れてしまう。
初めて描かれる飯島さんの気持ち
「最小の単位だと思われていた原子の中にさらに小さな原子核があり、その原子核が陽子と中性子にわかれ、さらにその中の要素もわけられる」ことが判明した科学の歴史になぞらえ、陽子と中性子=好きと嫌い、「好き」の中の要素=憧れ・躊躇・共感と掛田氏が自分の恋心に気づく過程と重ねていく。
掛田氏ばかりが恋という未知なものに迷い悩んできたが、飯島さんも相当な恋愛ベタだ。掛田氏とのデートをそうと認識せず、科学への興味ばかりを高めていく。7話の終盤、とうとうポロッと告白してしまった掛田氏に対して、ほぼ初めて飯島さんの内面が描かれる(第5話で掛田氏に抱きついたことを思い出し、からあげくさくなかったかをひたすら考える表現はあったけれど)。ここで「私もキュリー夫人になれるの?」と、男が圧倒的に多い科学の歴史において、圧倒的な偉業を残したキュリー夫人に飯島さんが重なっていく。キュリー夫人がさまざまな障害を乗り越えていくように、飯島さんが実際の障害物競技に挑む。しかし冒頭のウーフレックに足を踏み入れたところで、飯島さんはなにがしかに気づいて、立ち止まってしまう……。そして飯島さんから出た言葉は「ごめんなさい」。このドラマオリジナルの展開も、みごと!
第7話では、最終話につながる謎が残された。掛田氏が飯島さんを喜ばせようとクリスマスに用意していたこととは? 「掛田氏の告白を受け入れる」というゴールまで駆け抜けそうだった飯島さんは何を思って立ち止まったのか? そして掛田氏がマサチューセッツ工科大学に行っちゃうって何!?
デートで加速器センターに行くも、休館日に当たってしまった二人。そこで「さすがニュートリノですね」「いろんな人が何度も何度も見ようとしてやっと観測できたもの、ですよね?」という飯島さん。
(釣木文恵)
「決してマネしないでください。 」
出演:小瀧望(ジャニーズWEST)、馬場ふみか、ラウール(Snow Man/ジャニーズJr.)、今井悠貴、織田梨沙、マキタスポーツ、石黒賢 ほか
原作:蛇蔵 脚本:土屋亮一、福田晶平、鎌田順也
演出:片桐健滋、榊英雄
制作統括:谷口卓敬、八木亜未
制作:NHK、大映テレビ