
『アイドリッシュセブン』の和泉一織や『美男高校地球防衛部』の蔵王立、『僕のヒーローアカデミア』の切島鋭児郎役などで知られる大人気声優・増田俊樹が、デビュー10周年の節目となる2019年に自身名義で音楽活動をスタート。3月に1st EP『This One』をリリースし、初のワンマンライブに挑んだ。その彼が、2020年1月8日に1sアルバム『Diver』を発表。これまでに声優として演じたキャラクター名義の曲を歌ってきた増田俊樹が個人名で歌い始めた理由は何なのだろうか。ソロデビューから振り返ってもらった。
編集/田上知枝(エキサイトニュース編集部)
今は、増田俊樹という名前で歌う理由を探す、旅の途中

――デビュー10周年にして増田俊樹というご自身の名義で音楽活動を始め、2019年3月に1st EP『This One』をリリースされました。キャリア10年目のCDデビューは、どんな感覚でしたか?
デビューできたのは嬉しかったですね。でも振り返ってみると、歌を歌うということや、歌を作るということの本質が、まだまだ見えていなかったなと思います。僕は今まで音楽に対して受け身でいたので、自分の曲を作るのは、こんなにも大きく、大変なんだって知ることができた作品でした。
――自分に足りない部分を感じた?
単純に、歌を歌う人としての実力がもう少し欲しいと強く思いました。だからその後、ボイトレに通う回数を増やしたんです。それにまだ、自分の歌声を受け入れるのが難しいというか……。役者を始めた時も、自分が芝居している最中の声を聞いて「何? この声」って思ったんです。完成した曲を聴いて、「こんな高い声なの? もっと渋い声が出ていた気がしたのに」と感じたりもして。
もっともっと慣れたり、客観的に見られるようになれば「こういう風にしたいな」とか、「これができるといいよな」と方向性が見えてくるでしょうし、見えたものができるようになれば、楽しくなっていくんでしょうけれど……。だから今は、単純に「なんか下手くそだな」って思っちゃいます。
増田俊樹という名前で出すCDが、いろんなアーティストと一緒にCDショップの棚に並べてもらうことを想像すると、より一層頑張らなくちゃと思っています。

――今までキャストとして歌ってきたものとは、ぜんぜん違うということでしょうか。
キャラクターソングは、キャラクターが歌っているという大前提がありますし、彼らが歌う意味に重点を置いています。僕が個人として歌う歌は、誰が歌ってもいい歌。誰がどんな時に聴いてもいい歌。僕の中では、キャラクターソングは彼らを歌っているもの。僕が個人名義で歌っていきたいのは、人生の身近にある歌なのかな、と感じます。
――増田俊樹という名前で歌う理由って、何なのでしょう。
まだ、その理由を探しているところなんだと思います。個人の音楽活動という点においてはまだ、自分は何を必要とされて、何を与えられているのかもわからない。だから今は、そういった部分を見つける旅の途中のような気がしています。
新曲「Diver」みたいに、勇気を与えられる曲を歌いたかった

――1月8日には、初のアルバム『Diver』をリリースされました。アルバム全体のコンセプトは何でしょう。
最初にコンセプトについて話し合ったとき、「ジャンルの多い、バラエティーに富んだアルバムにするのがいいんじゃないか」と提案させていただきました。リスナーから増田俊樹がどんな音楽を求められているのかはまだ不透明だし、それを探っている段階だからこそ、アルバムというたくさんの曲を作れるチャンスを存分に活かしたかったんです。
今まで歌ったことがなさそうな曲から、これまでの10年間を通して「ファンの皆さんは、こういうものを望んでいるのかもしれない」と感じる曲まで、いろんなジャンルの音楽に挑戦するのがいいんじゃないかという話をチームとしました。
――リード曲「Diver」に込められた想いとは?
アルバムを作る前に「次はロックサウンドのちょっとゴリっとした、聞いてくれる人に勇気を与えられるような曲が歌えたら」なんて話をしていたんです。そうしたら、偶然にもそんな思惑にピッタリなこの歌詞を書いていただけた。今の自分が歌うにふさわしい歌詞だなと思います。
「夢を見ろ」と言われたのに、いつの間にか「現実を見ろ」と言われる……というような歌詞があるのですが、同じ人間に対しても時代や時期が変われば言うことも変わる。そんな風に目まぐるしく変わっていく世の中だから、変わっていくことに対してそこまで敏感でいられない。気付かないうちに、できることやできないことが変わっている。やりたいのにできなくなってしまった。直したい部分がいつの間にか自分からなくなってしまった。……そういうことってよくあるじゃないですか。そのような変化の中で、「こうしなくちゃ、ああしなくちゃ」ってずっと悩んでる人たちって、現状に満足していなかったり、満足しちゃいけないって自分で決め付けていたりするように思うんです。葛藤とか嫉妬とか劣等感とか、そういうものをたくさん感じながら生きていると思うんですよね。
でもそういうことばかりに目を向けるのではなくて、「今いる自分も自分じゃないのか」「間違ったことはしてきていない」って言い切れるなら、きっとそれも間違いじゃない。「そのまま進んでもいいじゃないか」って勇気を与えられるかもしれない……。そんなイメージで歌いました。個人的にも、「Diver」がこのアルバムの中で、一番今の自分らしい曲だと思っています。

――ご自身は変わることに対して、躊躇しないタイプですか?
しないですね。場合にもよると思うんですが。必要であれば、その変化は受け入れます。受け入れてしまえば早いです。ただ、変わるべき理由が見つからないと、全く動けないですね。その理由を見つけるまでに、けっこう悩みます(笑)。
考えなしに実行することが、基本的には少ないタイプ。納得いかないものに対しては、「何でですか?」と疑問を持ち始めちゃう(笑)。
――周りに流されないタイプなんですね。
そうかもしれませんね。
ひとりでステージに立つのは、怖い。でも、確かな達成感があった

――ではここから、ライブに関するお話を伺っていきたいと思います。2019年の3月のお誕生日には、マイナビBLITZ赤坂で『増田俊樹 Anniversary Event -This One-』を開催されました。
たくさんの方に来ていただけて、すごく満足のいくイベントにできました。
――ライブ中に「手が震えてる」っておっしゃっていましたよね(笑)。キャストとして、数々の大ステージを経験されているのに、ご自身のイベントとなるとまた違うものですか?
そうですね、大きいステージとライブハウスでは、抱く緊張感の種類が違うような気がしました。ライブハウスって、なんだか1対1の面接みたいな感じがして、「もうやってしまうしかない!」みたいな(笑)。
僕たち役者って共演者がいるので、ステージ上にひとりで立つってことは、なかなかないんですよ。そういう意味では、ライブは自分ひとりを見に来てくれた人達が相手で、緊張しましたね。
――全員の目が自分ひとりだけを見ているって、ちょっと怖いですか?
うーん、たしかに怖いですね。あまり自分に自信がないので。
――ステージに立つ前と後で、気持ちは変わりましたか?
どうだったかな? ライブ自体は一瞬で終わったような気がします。でも、ひとつのステージを作るってすごく大変なことなので、達成感はあったかもしれません。

――このライブでは、ギタープレイも披露されましたが、ギターは元々やられていたのですか?
いえ、全然です(笑)。昔から、チャレンジしては弾けないからやめちゃうみたいなことを繰り返していましたね。だから、あんなに大勢の前で弾いたのは初めてです。怖かったですよ。「言うもんじゃないな」って、後悔しました(笑)。
僕としては、「弾かされている」感じ……、馬子にも衣装みたいな感じでした(笑)。「僕がここで音を鳴らすことで、音楽の邪魔になってるんじゃないか?」と心配で。この音を弾くことで曲のこの部分に厚みが出て、つたなくても曲として必要な音になるから、弾く場所を用意していただけたんだと思うのですが、その理論とかが分からない身としては、「ここでいいんだよな?」と不安になりながら弾いているぐらいのレベルだったので(笑)。
――でもステージでギターを弾くのは気持ちよかったんじゃないですか?
怖いですよ。1音でも余計なものを弾けば、曲を台無しにしてしまうんですから。「わー、怖いなー」って思いながら弾いていました(笑)。
――冷静というか、客観的にステージに立たれているんですね。
そんなことはないです。でも、ステージに立つ身としては責任感があるので、「楽しんでもらわなきゃ」って気持ちで頑張るしかない。素の自分ではいられないですね(笑)。

――やっぱり「増田俊樹」としてステージに立つ時は、気持ちは違いますか?
そうですね……まだワンステージしか立っていないので、これからいろいろな発見があるんだろうなと思っています。
――3月には、Zepp DiverCity Tokyoと松下IMPホールでの『増田俊樹Live Event -Diver-』が決まっていますが、次回は?
ギターに続く何か……のような、毎回何か新しいチャレンジをやるというようなことは考えていないのですが、集まっていただける方たちと楽しいステージが作れたらいいなと考えています。
人生の大事な場面を思い出してもらえるような歌を歌いたい

――冒頭で「人生の身近にあるものを歌いたい」というお話もありましたが、増田さんご自身は、どんな音楽を目指しているのでしょう。
人生の大事な場面で、音楽がその人の選択肢に影響を与える……そういうものが作れたらいいなと思いますね。あの時この曲を聴いて救われたとか、この曲を聴いて頑張れた、そういう曲になれたら、すごく嬉しいです。
――増田さんにとっての、音楽の魅力とは何でしょう。なぜ音楽をやりたいのかってことを教えてほしいのですが。
音楽の魅力……まだはっきりとはわからないですね。「これだ!」と言えるもの……、「僕が音楽をする意味はこれなんだ」って言えるものがきっとあるはずなんですけれど。自分の年齢だったり、タイミングだったり、価値観だったり、全部がうまく重なったときに、「これだ!」って思えるものがみつかると思います。
10年やっていても、「役者の魅力って何だろう」ってまだ悩んでいるんですよ。「僕はこのためだけに役者をやっているんだ」とは言い切れない。価値観も変わっていくものですし、人生も長いので、ずっと探し続けてみようと思っています。
今日シャワーを浴びていて、「免許取りたいな」って思った

――ここからは、増田さんのパーソナルな部分を探っていきたいと思います。素の増田さんって、どんな人だと思いますか?
真面目……かな? 自分の素って何だろう……(悩んで)社会に馴染むというか、はみ出さないように気をつけて生きている人間かもしれません。
――休みの日は何をしていますか?
ゴロゴロしていたり、アクティブに旅行に行ったりして過ごすこともあります。でもとりあえず、先々の予定が見えないとできない、歯医者さんとか美容院の予約を入れる……かな。当日じゃできないから(笑)。
ゲームも好きなんですけれど、最近ちょっとゲーム離れしていて。新しい趣味が欲しいなと思っているところです。
――人生の転機はいつでしたか?
役者を目指して東京に出てくるきっかけになったのが、高校生の時に勉強しながら偶然見た深夜のテレビアニメでした。そこで初めて声優という職業に興味を持ったんです。それが転機ですね。
――――それで東京に出てきて夢が叶ったわけですが、最初に志した時、今の自分って想像できていましたか?
まったく想像ついていませんでした。
――「夢が叶った」という実感はどんなときにありましたか?
学校の先生に「一度でもクレジットに自分の名前が出たら堂々と故郷に帰れる」って言われたことがありまして。だからテレビアニメ『遊☆戯☆王ZEXAL』(2011年)に出演して、クレジットに自分の名前が出た時に、「アニメに出たんだ」と感じたように思います。
――でもデビュー作はアニメではなくて、舞台『ミュージカル テニスの王子様 The Final Match 立海 First feat.四天宝寺』(2009年)でしたよね。
はい。デビューが舞台だったので、初めてテレビアニメの主役をさせていただいた時は、声優をやることに自信がなかったんです。「本当に自分は声優なのか」「声優と名乗っていいだろうか」って。でも現場でいろんな人たちに支えていただいて、自分なりにその時できるベストを尽くせた気がしました。その時に初めて、「あー、声優って名乗っていいんだ」って感じました。今は大きな声で、「僕の職業は声優です」って言えます。

――声優さんとして大活躍されていますが、お仕事以外に、2020年、プライベートでやりたいことは?
今日シャワーを浴びていて、「やっぱり免許取りたいな」と思ったんです(笑)。電車移動だと「何時に乗って、どこで乗り換える」って、常に時間を気にしているし、ふと思い立った時に、ドライブしてみたくなって。旅行が好きなので、急に休みになったときに、免許があれば、日帰り旅行もすぐに行けるし、行った先でレンタカーも借りられる。旅の幅が広がるかなと。
プライベートでは、毎年出雲に行っているんです。毎年行っても飽きないんですよ。旅で大事なのは、景色と寺社仏閣、そして美味しいモノ。そこに絶景があるとベストですよね。うん、2020年の目標は「免許取得」にしたいと思います(笑)。
プレゼント応募要項
増田俊樹の直筆サイン入りポスターを抽選で1名様にプレゼントいたします。
応募方法は下記の通り。
(1)エキサイトニュース(@ExciteJapan)の公式ツイッターをフォロー
(2)下記ツイートをリツイート
応募受付期間:2020年1月22日(水)~2月5日(水)
\#プレゼント/
— エキサイトニュース (@ExciteJapan) January 22, 2020
1sアルバム『Diver』を発表した #増田俊樹 より、サイン入りポスターを1名にプレゼント!発送時に当選者様のお名前をお入れします!<br>
【応募方法】
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【締め切り】
2月5日
▼インタビューhttps://t.co/bXNELZx00Z pic.twitter.com/2n2pmb9XDv
ライブ情報
【増田俊樹Live Event -Diver-】
2020年3月8日(日)東京・Zepp DiverCity (TOKYO)
2020年3月14日(土)大阪・松下IMPホール
詳細:https://www.toysfactory.co.jp/artist/toshikimasuda/live
ますだとしき
1990年3月8日生まれ、広島県出身。1990年3月8日生まれ、広島県出身。2010年10月より声優としての活動をスタート。2011年4月、『遊☆戯☆王ZEXAL』の神代凌牙役でテレビアニメのレギュラーを獲得した以降は多数のアニメ、吹き替えなどを担当する人気声優。2019年3月、自身名義での音楽活動をスタートした。