紀子殺害後、さつきも何者かに殺される
まず死んだのは、音臼村のメッキ工場社長の娘で小学校の元教員の木村さつき(麻生祐未)だ。さつきは、田村心(竹内涼真)が、事件で死刑囚となった父・佐野文吾(鈴木亮平)の冤罪を晴らそうと動き回っているのを、どうにかして阻止しようとしていた。そのために養子のみきお(安藤政信)と結婚した心の姉・鈴(貫地谷しほり)を、自らの策略に巻き込む。鈴を介して、メッキ工場の元パートの松尾(旧姓・佐々木)紀子(芦名星)が事件の証人に名乗り出たと知ると、口封じを図る。紀子が来宅した心と鈴に対しいざ証言を始めると、鈴に一芝居打たせてこれを途中でやめさせた。さらにはさつきが自ら体の危険を冒しながら紀子を殺してしまう。
心はこうした一連の行動に、さつきこそ音臼の事件の真犯人ではないかと疑い、入院した彼女の病室を訪ねる。だが、そこで彼が見たのは、さつきが毒物を飲んで死んだ姿だった。あわてて逃げ出す心。
このあと、心はみきおに呼び出される。そうして訪ねたのは、さつきの隠れ家だった。そこには、事件の起こるたびに現れる不気味な絵が貼られ、さらには事件に使われたのと同じ青酸カリも隠されていた。みきおもここから、事件の真犯人はさつきだった可能性は否定できないと推理する。
友人の話として語られる指輪の話がせつない
心は、みきおからさつきが事件関係者の連絡先を記したアドレス帳を借りると、それを手がかりにその男を探し始めた。事件を追いかけている週刊誌記者・由紀(上野樹里)とともに、あちこち訪ね回ったが、なかなか手がかりは得られない。海岸で落胆する心を、由紀がまだまだここからだと励ます。このとき由紀が指輪をはめているのに気づいた心は、友達の話としてこんなことを語った。その友達は彼女に結婚をなかなか切り出せず、きょうこそはと決めて海辺に誘うも、彼女が祖母の形見の指輪を失くし、それどころではなくなってしまう。二人で一緒に指輪を探すものの、彼は一向に身が入らない。そこでふとひらめいて、しばらくしてからもう一度彼女をその浜辺に誘う。そしてついに覚悟を決めて、彼女に指を差し出させると、指輪をはめ、「見つけたよ、婚約指輪」とプロポーズするのだった。もちろん、それは友達の話ではなく、心と、彼が31年前にタイムスリップする以前は妻だった由紀の話である。記者の由紀は、まさか自分の話とは知らず、「その友達、めちゃめちゃロマンティストですね」と笑う。だが、彼女は自分の指輪も祖母の形見だと打ち明け、「ときどきふと感じるんですよ、心さんって何か、初めて会った気がしないなって」と不思議がった。
このプロポーズの話は、原作ではタイムスリップから戻った心が寝ているときに見る夢として登場する(夢から覚めた彼は、妻だった由紀がもういないことに気づいて泣く)。指輪が、記者の由紀にとっても祖母の形見であることは原作どおりなのだが、ドラマでは、心が妻との思い出を彼女に(友人の話としつつ)打ち明けることで、妻の由紀と記者の由紀の距離が縮まり、両者の同一性がより高くなっているように感じる。しかも人探しをしているところで、指輪を探す話を出してくるのがうまい。
単独で行動するなんて心さん、無謀すぎ!
そんなふうに由紀と話していた心に、今度は文吾の担当弁護士から電話が入り、獄中の文吾と再び面会。そこで元警官の文吾から、音臼で無差別殺人の前に起こった女児誘拐事件を捜査していた金丸刑事(ユースケ・サンタマリア)が、女児の首に特徴あるあざがあるのを気にしていたと教えられる。ここから心は由紀とともに金丸刑事の遺族を訪ね、保存されていた事件の資料から、首のあざの写真を見つけ出した。それから上司に呼び出された由紀と別れると、彼は一人であらためて「小柄でメガネの男」について訪ね回る。ある家で、それは元県会議員の田中老人の息子・正志(せいや)ではないかと言われ、正志の住むアパートをさっそく訪れる。だが、そこで見たのは、さつきと同じく何者かに殺された正志の遺体だった(霜降り明星のせいやは久々の登場だったが、まさかの老けメイクで遺体の役とは……)。
そこへ突然警官がやって来て、心は警察に連行されてしまう。さつきのときもそうだが、心さん、いくら一刻も早く真犯人を捕まえたいからといって、単独で動き回るのは無謀だろう。結局、このときも由紀が手回ししてくれて、翌朝には釈放されるのだが。
心が帰宅すると、家には、例の不気味な絵が送りつけられていた。
その夜、心は由紀を呼び出すと、特ダネになりそうな話があると切り出し、「タイムスリップした男」の話をし始める。その男が31年前の無差別殺人の犯人であること、その事実から目を背け続ける彼を妻が後押ししてくれ、彼女が急死してようやく事件と向き合う決意をし、現場を訪ねたこと。そこで彼は31年前にタイムスリップし、父と家族と出会うも、結局事件を止められないまま現代に戻って来てしまったこと。そこではさらにつらい現実が待っており、父は死刑囚のまま、姉は名前も顔も変わっていたが、妻とは再会できたこと。「どんなつらいことがあっても、彼女が目の前で笑ってくれるだけで救われた。前を向けたんです」……そう心から言われて由紀は、話に出てきた男が心であること、そして妻が自分であることに気づく。心はさらにダメ押しで、自分の指から指輪を外すと彼女に渡す。そこには「YUKI to SHIN」と刻まれていた。
最後の最後で心は、明日決着をつけると由紀に告げた。「じゃあ、私も一緒に……」という彼女に、彼は「今回は一人で行きます。……でもそれが済んだら必ず会いに行きます。そしたら……そしたら……今度は俺がうまい鍋でもつくりますわ」と言い残して、その場を立ち去る。タイムスリップ前と同じく、今回もプロポーズを切り出せないまま心は命を懸けて現場へ向かうのだった。

ついに真犯人が姿を…その正体は?
翌日、慰霊碑に到着すると、なぜかみきおも車椅子に乗ってやって来ていた。もしも犯人が現れたらどうするんですかと訊かれた心は、一生かけてつぐなわせると答えると、「それは無理だよ、心さん」との返事。事件の後遺症で足が不自由だったはずのみきおだが、いつのまにか何の支えもなしに立っており、ナイフで心に襲いかかる。そう、真犯人はみきおだったのだ! 「すべては終わりだ。
というわけで真犯人がついに姿を現したわけだが、原作とは犯人が違うとの噂も流れながら、ふたを開けてみれば原作どおりみきおが犯人だったので、あらかじめ読んでいた者にはやや拍子抜け。しかし、紀子やさつきが殺される展開は原作どおりとはいえ、ここへ来て、ドラマオリジナルの人物である田中まで死んでしまうとは予想外だった。いくら自分が犯人とバレないようにするためとはいえ、3人も殺しちゃうなんてリスク高すぎでは……。いや、それも小学生にして21人も殺害し(誘拐された女児の首のあざも、子供の小さな手で首を絞めようとした跡だった)、31年間も隠し通してきた天才殺人犯のなせるわざなのか。
心がうかつすぎるとはいえ、そんな彼の心理を読んでまんまと慰霊碑までおびき出して殺そうとするのも巧みすぎる。