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新型コロナ感染拡大の影響で、各テレビ局では過去の番組の再放送や再編集版、傑作選などが多く放送されている。
TBSにて、2018年10月〜12月にオンエアされた「今日から俺は!!」が再放送中だ。
伊藤ちゃんのウニ頭問題
10月14日、演出・脚本:福田雄一で日本テレビ系「今日から俺は!!」(日曜22:30〜)がスタート。原作は、西森博之による同名漫画。「漫画っぽくいくぞ!」という強い意気込みが感じられた。それにしても、福田雄一は好きな漫画を手当たり次第映像化、なんて贅沢な仕事の仕方をしているのだろう。
「今日から俺は!!」が映像化となれば、原作ファンが気になるのは伊藤真司(伊藤健太郎)のウニ頭がどう再現されるかだ。わけのわからん量の髪の毛を地面と垂直に突き立てるこの浮き世離れした髪型は、どうやったって実写に馴染むわけがない。中途半端なトゲトゲにするのか、ガッツリ大胆に行くのかが注目。ちなみに、1994年に公開されたVシネで中倉健太郎が演じた際は、ちゃんと浮き世離れしていた。
福田監督が選んだ答えも、まぁ多分最初から決めていただろうが、しっかりと浮き世離れしたウニ頭だった。当然バックの景色と馴染むわけがないのだが、作品自体には意外とハマッていた。おそらくこの理由は、他の登場人物の作られ方にあるのだろう。
賀来賢人演じる三橋貴志の髪型は金髪パーマ。
これは、「漫画を実写化」ではなく、「漫画を漫画っぽく実写化していくぞ!」という意思表示にも見える。
漫画っぽい雰囲気に、ガチっぽい波岡一喜投入
全体を漫画っぽく実写化することによって、伊藤ちゃんの頭以外にも馴染みやすいものがいくつかある。時代設定と登場人物のオーバーなお芝居だ。
そもそも、ツッパリが死語。ツッパリがそこら辺を歩いている時代背景が現代の若者にはピンと来ない。公式設定の80年代初頭もさすがにこれほどツッパリ率は高くなかったハズだ。
はんにゃ金田哲を想起させる賀来賢人のオーバーなヘタレ演技も、モブヤンキーたちの「ビー・バップ・ハイスクール」風の演技も、漫画っぽい雰囲気のおかげで受け入れやすくなっている。特殊な能力や不思議な生き物が出てくるわけではないが、全ては虚構、現実風のファンタジードラマみたいなものだ。これで思いっきりふざけた演出をしても、視聴者の許容範囲になる。
散々漫画のような描写を重ね、後半から徐々にシリアスシーンに移行していく。そこで登場するのがガチっぽいヤクザの井上さん。波岡一喜が演じているだけあってしっかり威圧感はあるのだが、スプーンの上で白い粉を溶かすという、古くさすぎて今やどこの映画でも見られなくなったシャブ描写は、どこかダサくてどこかふざけている。
それでもアクションシーンはさすがで、あんなふざけた頭した伊藤ちゃんが血を流すとちゃんとハラハラしてしまうから不思議だ。伊藤健太郎と波岡一喜が、ガッとスイッチを入れて緊張感を煽ってくれる。
この緊張感のおかげで、合間に挟まる三橋、今井、谷川の3人のおふざけシーンにギャップが生まれ、「こんな大事なときに何やってんだ!?」と良い感じにイライラさせてくれる。おふざけを面白くするためのシリアスがギャップになり、シリアスなシーンを引き立てるためのおふざけがギャップになる。どっちも楽しんでくださいねという福田雄一監督らしい演出だ。
第2話は、いよいよヒロインの赤坂理子が本格的に登場するらしい。キャスティングを聞いたときは、理子(清野菜名)と京子(橋本環奈)の配役が逆だと思ったが、これはこれで良さそうな予感。
主要キャストによるオープニングの「男の勲章」は、1話を見終わった第2話からさらに面白かっこよく感じられそうだ。
(沢野奈津夫)