
少しテイストが変わった『親バカ青春白書』4話
あれ、なんかちょっと違う? ムロツヨシと永野芽郁が父娘(おやこ)で大学生をやっている『親バカ青春白書』(日本テレビ系 毎週日曜よる10時30分〜/以下『オヤハル』)。第4話は、大学入学から半年経過、これまで3話までと少しテイストが変わった気がした。映画『今日から俺は!!』が大ヒット上映中の福田雄一を中心に制作されたオリジナルドラマということで、『今日俺』からのゲストが毎回出ることが売りのひとつだったが、今回は一人も登場せず、『オヤハル』の登場人物の力で押していく。
半年すぎると状況も変わっていて、根来(戸塚純貴)は人気YouTuberネゴロになってキャラ変。畠山(中川大志)には彼女ができた。畠山と彼女を見たさくら(永野芽郁)はショックで白目に。永野芽郁は3話の『鬼滅の刃』の禰豆子コスプレとはベクトルが違うとはいえ、またも体を張っている。
天狗になったネゴロは、さくらから「あたおか」(あたまおかしい)と厳しく指摘される。金持ちになって、そのうえモテはじめてしまったネゴロだったが、ネゴロチャンネルのワンパターン(フラれ動画)も限界が見えてきていた。これまでただただおバカな子だったネゴロのシリアスな心の揺れが描かれるところは別のドラマのようだった。
決まりきった展開に虚しくなるネゴロと、この回で、前回までのパターン(『今日俺』の出演者が出る)を踏襲しなかったことを重ねて見てもいいものだろうか。いや、『オヤハル』はそんなことを真面目に分析するドラマではないと思うのだが……。
さくらとガタローのバイト先でトラブルが
さくらとガタロー(ムロツヨシ)は美咲(小野花梨)のバイト先でバイトをはじめる。最初は美咲の店でバイトをしたいというさくらを止めるガタローだったが、連載小説がにわかに打ち切りになり、バイトをせざるを得なくなった。どうやらガタローが大学生活に勤しむあまり小説をおろそかにしていることが編集者には感じられてしまったようで、ガタローにとっての小説がその程度だと思うとすこし残念な気もするが、そういうことを描くドラマという期待もまったくしてないのでそこはスルーしたい。さてカフェでばりばり働く美咲を見て「篠原涼子だ、あいつは。おれは大泉洋」と自己暗示をかけながら働くガタロー。元ネタは『ハケンの品格』ですねもちろん。
そんなあるとき、クレーマーの客にからまれるガタロー。女性の店員に代われとすごまれる。おおよそおしゃれカフェにふさわしくない客は美咲の地元・福岡時代の元カレ(一ノ瀬ワタル/元格闘家)だった。美咲を忘れられずに追いかけて来たのだ。
恋に悩んでいるのは寛子(今田美桜)も。彼氏が二股をかけていて、その彼女とその仲間にすごまれる。集団の女の怖さを描くのは『マジすか学園』ふう?
カフェで寛子が畠山に悩み相談。そこに首をつっこむガタローは作家の才能を発揮して、人間洞察力をふたりに開示。恋とは……と極めてまともなことを言う。
そこにまた美咲の元カレがやって来て、ものすごいガラの悪い絡み方をする。『半沢直樹』の恫喝合戦みたいな元カレの態度に、あくまで物静かに対抗するガタロー。お客は神じゃないのかと絡む元カレに「ギリシャ神話では処刑された神様もたくさんいますよ」などと作家の知性を出して火に油を注ぐ。
元カレはどんどんヒートアップして、「金が好きなんだろ」「この時間を金で買ってやる」と床にお札をばらまく。それを黙って拾う美咲。あざ笑う元カレ。お金の大事さを語るガタロー。ついに美咲の怒りが頂点に達して……。
なんだこれ。『半沢直樹』をあえて間違えて捉えてみたということだろうか。 恫喝やアクションのせいで、過去3回ののんびりしたキャンパスライフよりはメリハリはあった。マンネリを警戒し、なにか違うことをしようとしているのはわかる。あるいは、大学が出てこなかったことはコロナ禍で大学ロケがしづらくなったのかもしれない。学生が登校できずオンライン授業している今、ドラマでは学校でロケしているのもへんな話であるし……。
福田雄一が引き出した新垣結衣の新しい顔
なかなかにとらえどころのない4話中、最も印象的だったのは新垣結衣。ガタローの亡くなった奥さん・幸子役で彼女は毎回登場している。『今日俺』ゲストはストップしたが、新垣結衣演じる幸子の回想は今回もあった。
幸子はガタローとプレゼントについて語りあう。このとき、幸子のしゃべり方がじつにナチュラルであった。といって、いつもナチュラルじゃないと言いたいわけではない。できるだけ爽やかに笑顔を心がけたよそゆきの顔をしている役が新垣には多いのである。
福田雄一作品は俳優の思い切った顔を見せるのが特徴。橋本環奈しかり。賀来賢人しかり。長澤まさみしかり。同じく、新垣結衣が大胆に変顔して喜劇女優の可能性を拓いた! ではなく、むしろ力まない、抜いた感じに見える芝居をしているという、そっち方向の驚きをもたらしてくれたことは収穫である。
(木俣冬)
※次回5話のレビューを更新しましたら、ツイッターでお知らせします。お見逃しのないよう、ぜひフォローしてくださいね
番組情報
日本テレビ『親バカ青春白書』毎週日曜よる10:30〜
番組サイト:https://www.ntv.co.jp/oyabaka/