TAKURO|頼れるリーダーにして敏腕経営者の包容力<GLAY特集>

GLAYの音楽的支柱を担うリーダーTAKURO

デビュー25周年イヤーの目玉企画だったドームツアーは、コロナ禍で惜しくも中止に。ツアーファイナルの地であった地元北海道・札幌ドームから会場を変更し、12月19日(土)・20日(日)にさいたまスーパーアリーナ2DAYSという形で、GLAYは2020年を締め括ろうとしている。

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少年時代から毎日コツコツとノートに歌詞を綴り曲を作り貯めていたTAKUROが、‘88年、幼馴染みである同級生のTERUを誘ったことで、バンドは産声を上げた。
「HOWEVER」「誘惑」といったミリオンヒット曲群を筆頭に、今日に至るまでTAKUROがメインコンポーザーとしてGLAYの音楽的支柱を担い、リーダーとしてバンドを束ねてきたのは周知の事実である。

GLAYはTAKUROとHISASHIによるツインギター体制だが、リード、リズムという明確な役割分担をしていない。両者それぞれに特徴的な音色・フレーズを繰り出し、2人が織り成すゴージャスなギターアンサンブルはGLAY印のサウンドメイクに欠かせないものだ。

HISASHIがデジタルでエフェクティヴな音色、トリッキーなフレーズを得意とする一方で、TAKUROはストレートでナチュラル、“生成り”の強さを誇る。ヴィンテージのレスポールを相棒とし、想いの濃淡をそのまま映し込むかのように、繊細に揺らめく音色。哀愁を湛え咽び泣くようなブルージーなフレーズ、気怠くジャジーなムードづくりに長けており、これらは2016年から取り組んでいるソロ活動の賜物である。


ビジネスパーソンとしての優れた資質

ソロとしてTAKUROは、『Journey without a map』『Journey without a map II』と2作のギターインストアルバムを制作し、『~II』は2020年2月に『JAZZ JAPAN AWARD 2019』アルバム・オブ・ザ・イヤー ニュー・ジャズ部門を受賞。横浜で行われた授賞式では心底うれしそうな少年のような笑顔を見せ、ジャズ愛好家を前に伸びやかに受賞記念演奏を披露した。


自身のギタリストとしての存在意義を見つめ直すため、いわば武者修行としてソロプロジェクトはスタートし、プロデューサーとして迎えた敬愛するB’z松本孝弘の激励の下、TAKUROは自分だけの音を探究した。GLAYというメガバンドのスケール感とはまた違った、小さなライブハウスからの船出。一人きりで始めたその旅は、サポートメンバーや新たなオーディエンスとの出会いを生み、TAKUROはやがて音楽への内なる情熱、ギターを奏でる喜びを再発見することに。探り当てた音色、固有のプレイスタイルは、上述の通り母艦であるGLAYサウンドにも一層の幅と奥行きをもたらしている。

TAKUROは音楽家としてだけでなく経営者としても卓越。
函館から上京後、デビューを目指しながら勤務していた印刷会社はすぐに退社したものの、後のバイト先ではその優秀な働きぶりを認められ昇進する。ビジネスパーソンとしての優れた資質は元々備えていたと思われるが、その才は事務所社長を務めるようになって本格開花することに。トップダウンの剛腕ワンマン経営ではなく、各メンバーの個性を封じることなく存分に発揮させながら、想いを一つにまとめ上げ、バンドと会社の舵をとって来た。

アーティスト自身が作品の権利を持つことに早くから自覚的で、個人事務所名義で過去作品の原盤権を買い取るなど、独立性保持のための基盤整備は2004年に着手、2007年までに完了させている。2008年には公式モバイルサイトGLAY MOBILEを開発し、メンバーのインタビューや撮り下ろし写真を毎週更新するWebマガジンや、各メンバーの連載コーナー、Webラジオ機能など幅広いコンテンツを徐々に網羅。

2010年に自主レーベルloversoul music & associates(現LSG)を立ち上げると、一早くオンライン公式ストアG-DIRECTを設立して自前の販路を確保、GLAY Official YouTubeチャンネルも開設。
2018年には、GLAYのすべての楽曲と映像、雑誌記事なども電子化して収めた有料公式ストリーミングサービスGLAY appをリリース。既存のメディアに頼り過ぎることなく自分たちの作品や考え、想いを発信できる地盤固めを早々に手掛け、随時その機能をアップデート、時代の流れに対応してきた。

TAKURO|頼れるリーダーにして敏腕経営者の包容力<GLAY特集>

昨今ではタレントやアーティストの独立が頻繁に報じられているが、GLAYはそのムーブメントに10年以上先んじて自分たちの活動全般の手綱を握り、様々なノウハウを積み上げてきたのである。

素顔のTAKUROは「尊敬すべき理想の大人」

ハード面の整備だけでなく、ピンチへの緊急対応も誠実。例えば、JIROが体調不良のためドクターストップが掛かり急遽欠席した2017年の金沢公演は、本人を象った紙パネルとリハーサル時に録音してあったベース音源を用いてしのぎ、特別な企画を盛り込んでオンリーワン感を演出、さらには仕切り直しての代替公演も後日開催すると発表。“神(紙)対応”と絶賛された。

数々の非常事態を乗り越えてこられたのは、社長&リーダーTAKUROを中心に、“もしもの場合”を常に思い描く危機管理体制があってこそ。
現在、コロナ禍に見舞われながらもモチベーションを落とさずクオリティーの高い発信を続行できている基盤には、“自分たちで何とかするしかない”苦境をチャンスと捉え、“自分たちのやりやすいように”一から丹念にカスタマイズしてきたバンドの長い歴史が横たわっている。彼らの故郷・北海道の開墾者精神にも通じるたくましさと先見性は、この仄暗い時世を生きる私たちに一筋の光と大きな示唆を与えてくれる。

TAKURO|頼れるリーダーにして敏腕経営者の包容力<GLAY特集>

TAKUROの人となりを譬えるならば、海のような人。ステージでは荒波のような激しいパフォーマンスも見せるが、取材で顔を合わせる際は常に凪のようにフラット。不機嫌なTAKUROなど一度も見たことがない。よく笑い涙もろく、正直でフェア。
尊敬すべき理想の大人という不動の印象がある。

人の心の微細な動きをすぐさま捉える最上級のデリカシーと、相手がリラックスしてパフォーマンスを最大化できるよう配慮する懐の深さ。その思慮深さと包容力は、TAKUROを頼れるリーダーたらしめる資質であり魅力だと感じる。

短いインタビューでも必ずユーモアを盛り込むことを忘れず、大樹のようなスラリとした長身をギャグ化するように、4人揃った集合写真ではわざと上半身をフレームアウトさせるイタズラ好きな一面も。

ピンチに見舞われると「ほっほー、盛り上がってきたね」と呟いて客観視を心掛け、上手くいかなかった日も「そんな日もあるさ」と受け止め、前を向く。ピンチの際は「ノーエモ(no emotionの略。
TAKUROお得意の造語である)」を提唱し、冷静な問題解決を第一とするが、内心は誰よりもエモーショナル。自分が祝われるよりも人を祝うことに喜びを感じる、と公言してはばからない、真の優しさを持つ人でもある。

その人間らしさ溢れるリーダー論で1冊の本が書けるのは間違いなく、混迷を極めるこの時代を生きる私たちを鼓舞するようなベストセラーとなることだろう。
(大前多恵)

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ライブ情報

【GLAY DEMOCRACY 25TH “HOTEL GLAY GRAND FINALE” in SAITAMA SUPER ARENA】
会場:埼玉・さいたまスーパーアリーナ
2020年12月19日(土)開場15:30 / 開演17:00
2020年12月20日(日)開場14:30 / 開演16:00

チケット:S席 ¥9,900、A席 ¥6,900、着席指定S席 ¥9,900(各税込)
※「着席指定S席」はHAPPY SWING会員、GLAY MOBILE会員の方を対象に、枚数限定で販売
※3歳未満の入場不可、3歳以上チケット必要

問い合わせ:ウドー音楽事務所(TEL. 03-3402-5999 / 月・水・金12:00-14:00)
詳細:https://www.glay.co.jp/live/