綾瀬はるか×高橋一生『天国と地獄』意外な展開に涙「お手柄だよ、八巻。今まででいちばんお手柄だよ」
イラスト/おうか

※本文にはネタバレがあります

先が読めないながら見やすい『天国と地獄』2話

人間にとって最優先されるべきものは、肉体なのか精神なのか。日曜劇場『天国と地獄〜サイコな2人〜』(TBS系 毎週日曜よる9時〜)の第2話(15分拡大SP)を観てひとしきり考えた。

【前話レビュー】人気の入れ替わりもの×ミステリーのヒット要素重なる日曜劇場新ドラマ『天国と地獄』

体と心が入れ替わってしまった刑事・望月彩子(綾瀬はるか)と殺人事件の容疑者・日高陽斗(高橋一生)が、お互いの利害関係を踏まえ、日高の容疑をはらす方向で協力し合うことになった。


まずはお互いのスマホに記録された、知られてはいけない情報を削除して、それから日高の家宅捜査と取り調べを交わすことに。そのとき、日高の家の洗面台の下に隠された証拠になりそうなものの数々を目の当たりにする望月。いま自分の肉体と精神が望月であったなら……と悔しく思う。

綾瀬はるか×高橋一生『天国と地獄』意外な展開に涙「お手柄だよ、八巻。今まででいちばんお手柄だよ」
(C)TBS

念のため、望月とは、肉体は日高、心は望月のこと。日高とは、肉体が望月、心が日高として書く。この設定は文字媒体に向いていなーーいッ(笑)。
ビジュアルがあればこんがらがらないのにぃ。そこも含めて、肉体と精神の問題は難しい。

入れ替わったことで、日高は捕まらずに済み、無関係の望月に重罪が課されることになる。自分の肉体が酷い目にあってもいいのかと望月が問うが、日高は肉体に固執していない様子。日高はじつにドライである。肉体に固執していない。
たとえ他者から“望月という女性の刑事”という認識がされたとしても、その個性を上書きしてしまえばいいと思っているようで、望月のように振る舞う気はさらさらなく、化粧をし、丁寧語を話し、訝しがられると「路線変更」と澄まし顔をする。

綾瀬はるか×高橋一生『天国と地獄』意外な展開に涙「お手柄だよ、八巻。今まででいちばんお手柄だよ」
(C)TBS

日高になった望月を演じる綾瀬はるかはやや前かがみというか顎を引き気味で不敵な感じを出している。立ち居振る舞いもすっと飾らない感じ。望月そのもののときは気合がみなぎっていたことがわかる。

一方、望月も、日高のように振る舞えるはずもなく、あたふたしている(歩調が狭くてちょこまか歩く高橋一生が上手い。動きによってロングコートがスカートみたいにひらめくのもすごいと思う)。
そして、自分が犯人として囚われ、刑に処せられることに怯える。
綾瀬はるか×高橋一生『天国と地獄』意外な展開に涙「お手柄だよ、八巻。今まででいちばんお手柄だよ」
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「お手柄だよ、八巻。今まででいちばんお手柄だよ」

もし死刑になった場合、肉体が死んだら、入れ替わった魂はどうなるのだろう。その死は意外と早く訪れ――かかる。お互い裏切らないと約束したにもかかわらず、望月がスマホからわざと消去していなかったものがあったことに気づいた日高は機嫌を悪くし、望月を殺そうとする。それは、お互いが知らない相手の個性を利用した作戦だった。


危うく死にかける望月。でも意外とどちらかが死んだら、肉体と精神が元に戻ったりしないのだろうか。試すにはリスキー過ぎるか。

綾瀬はるか×高橋一生『天国と地獄』意外な展開に涙「お手柄だよ、八巻。今まででいちばんお手柄だよ」
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なんとか死なずにすんだ望月。そのあとが、かなり意外な展開だった。早くも望月と日高の入れ替わりに気づく者が現れるのである。
その人物は、使えないと思っていた部下――八巻(溝端淳平)だった。

明らかに様子のおかしい望月にきょとんとクビを傾げ続けていた八巻(溝端が出ているローン会社のCMの『なぜ?』というときみたいな感じ)。河原(北村一輝)のあだ名を知らなかったことが決め手になった様子。死にかかって苦しんでいた日高の家を訪ね、望月しか知らないことをいくつか質問する。

これがインターフォン越しのやりとりであるところも効果的。望月には八巻が見えているが、彼からは望月が見えない。
声は日高の声だとしても、たぶん、八巻は気配で望月を感じている。ビジュアルが邪魔しない分、望月そのものと八巻の関係性が伝わってきて、いいシーンだった。

綾瀬はるか×高橋一生『天国と地獄』意外な展開に涙「お手柄だよ、八巻。今まででいちばんお手柄だよ」
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「お手柄だよ、八巻。今までいちばんお手柄だよ」

インターフォンの上部を、八巻の頭に見立て、泣きながらなでる望月。第1話で、八巻をあんなに怒っていた望月だったが、彼の良さに気づいたようでホッとした。

が、こうやって、望月と離れてしゃべっているときに、戻ってきた日高に八巻が殺されたらどうしようかとハラハラしてしまった.
よく電話の向こうで殺されて「◯◯――!」って呼ぶ場面あるじゃないですか。そうなるんじゃないかと肝が冷えた。

綾瀬はるか×高橋一生『天国と地獄』意外な展開に涙「お手柄だよ、八巻。今まででいちばんお手柄だよ」
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余計なことをする日高、男性の肉体に困惑する望月

ともあれ、あまりにも都合のいい展開ではあるが、入れ替わりという発想が自然に出てくることは、この世界線に大ヒットアニメーション映画『君の名は。』が存在していて、八巻も観ているという感覚なのではないかと考えられる。たしかに、以前であれば、作り事と現実は切り離していたが、いまは、本当にあるかは別として、SF的なことがありえるかもしれないと素直に受け入れる感覚が芽生えているかもしれない。

そんな時代の変化による、人間の感覚の変容を描いているところは注目に値する。このまま、日高には気づかれずに、望月の役に立っていくのだろうか。惨殺されたりしないように祈る。

綾瀬はるか×高橋一生『天国と地獄』意外な展開に涙「お手柄だよ、八巻。今まででいちばんお手柄だよ」
(C)TBS

ひりひりする場面の傍ら、入れ替わりものの定番、お互いの肉体の違いに戸惑うエピソードもあった。日高の困るリアクションはなく、単なる居候の陸(柄本佑)に積極的に迫ってしまうという余計なことをする。困惑するのは望月のみ。男性の肉体に振り回される。彼女が知った、手汗をよくかく日高の特徴は、なにかのヒントになるのだろうか。

綾瀬はるか×高橋一生『天国と地獄』意外な展開に涙「お手柄だよ、八巻。今まででいちばんお手柄だよ」
(C)TBS

展開のテンポがとても早く、入れ替わりの伝説(太陽と月)のありそうな奄美大島の存在が浮上してくる。先が読めないドラマであるが、ポイント、ポイントで噛んで含めるような演出が施され、見やすくできている。

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※第3話のレビューを更新しましたら、エキレビ!のツイッターにてお知らせします

番組情報

TBS系
『天国と地獄〜サイコな2人〜』
毎週日曜よる9時〜

出演:綾瀬はるか 高橋一生
柄本佑 溝端淳平 中村ゆり
迫田孝也 林 泰文 野間口徹 吉見一豊 馬場 徹 谷 恭輔
岸井ゆきの 木場勝己
北村一輝

脚本:森下佳子
編成・プロデュース:渡瀬暁彦
プロデュース:中島啓介
演出:平川雄一朗、青山貴洋、松木彩
音楽:高見優

製作著作:TBS
(C)TBS

番組サイト:https://www.tbs.co.jp/tengokutojigoku_tbs/


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami