『おちょやん』第9週「絶対笑かしたる」

第43回〈2月3日 (水) 放送 作:八津弘幸、演出:梛川善郎〉

朝ドラ『おちょやん』嵐や〜〜! 天晴(渋谷天笑)戻るも一平(成田凌)の爆弾発言で予想外の展開に
イラスト/おうか
※本文にネタバレを含みます

目下、雨模様『おちょやん』

<どんな今日も愛したいのにな>(主題歌「泣き笑いのエピソード」より)

【前話レビュー】杉咲花が全力の「たこ入道」あんなん見たら笑うw(千之助は笑ってないけど)

雨でも晴れでもどんな今日もがんばろうと思う心の支えが“朝ドラ”。主人公をはじめとして登場人物たちが、日々困難に立ち向かっている。

『おちょやん』の雲行きは、目下、雨模様。
鶴亀興行の大川社長(中村雁治郎)の考えによって、一平(成田凌)を座長にして生まれた新しい劇団は、前途多難。一平とはやらないと辞めてしまった元・天海一座の面々を連れ戻そうと、一平と千代(杉咲花)は各々、行動に出る。

まず、天晴(渋谷天笑)が一平の台本を読んで戻って来た。「恵みの雨や」と一平、天晴、女形の漆原要二郎(大川良太郎)は雨のなか、はしゃぎまわる。だが、社長からは、旗揚げ公演が失敗したら即解散、二度と道頓堀では芝居をできなくするという厳しいことを言われてしまう。

だめだめな人たちが最後のチャンスを賭けて奮起する。実際にあったら、社長の理不尽さは許せるものではないが、物語にはよくあるパターンだ。無理難題を乗り越えるのがカタルシス。まずは、ひとり戻ってきたので、一平たち男子3人が部屋で旧交をあたためていると、そこへ千代がやって来て、大騒ぎ。

「この身も心も、みんな差し出して……」

千之助(星田英利)に戻ってもらおうと千代は必死で、猫や鶏やたこやするめのモノマネをして見せたが、まったく相手にされず疲れ果てていた。にもかかわらず3人は呑気にしているので、「うちは何としてもあの人を口説こ思て、この身も心も、みんな差し出して……」と怒りをぶつける千代。

ここ、ツッコむところではないかと思ったが、3人はスルー。「身も」と言われて、まさか……と思わないのは、千之助が千代を相手にするわけがないとたかをくくっている、もしくは、千代の“ほげた”をすでに見切っている。
というようなことが考えられる。これは、いかにもなツッコみをあえてしないところが笑いどころという、ボケとツッコミのあとにもうひとつ重ねた高度な手法だろうか。作り手の真意やいかに。

ともあれ、千之助は、声出して笑うなんてことはないのだと聞いた千代は、自分のしたことが無駄だったと知る。おつかれちゃん。

板尾創路、脱ぐ

難攻不落の千之助はいったん保留にして、今度は須賀廼家徳利(大塚宣幸)を連れ戻す作戦を始動。あろうことか彼は万太郎一座に入っていた。「万」「太」「郎」、「万」「太」「郎」と、しつこいくらい強調する。

万太郎とは関西喜劇界のカリスマ。彼が率いる万太郎一座はてっぺんだ。一平の新生劇団はここと肩を並べ、なおかつ超えることを期待されている。

徳利を追いかけて、万太郎一座が公演している劇場にやってきた千代と天晴。舞台上で、「万」「太」「郎」に出会う。
なぜか、裸になって部下たちに着替えさせてもらう万太郎。その堂々たる姿に、千代は魅入る。裸にときめいたわけじゃなく、オーラだと思うが、なんか裸を見て、顔が輝いているように見えた。板尾創路がここできちっと裸をさらすところがさすがである。

朝ドラ『おちょやん』嵐や〜〜! 天晴(渋谷天笑)戻るも一平(成田凌)の爆弾発言で予想外の展開に
写真提供/NHK 

徳利、戻ってくる

なぜ万太郎は、因縁ある元天海一座の俳優を万太郎一座に迎えたのか。劇団員に聞かれると、「おもろいからや」と答える万太郎。徳利自身が万太郎におもしろいと思われるほどの名優とは思えないから、この状況をおもしろがっているだけな気がするが。

万太郎一座の人たちのいじめにあった徳利がいやになって劇場を出てきたところ、入り口で待っていた千代たちは飲みに連れていく。そして徳利の好物でもてなしながら説得。新しいことをはじめる不安はわかる。→そんな不安なとき、天海一座の人たちとやれるのが嬉しかった。→一緒に芝居がしたい(大意)。等々と説得し、徳利は泣きながら戻る決意をする。


朝ドラ『おちょやん』嵐や〜〜! 天晴(渋谷天笑)戻るも一平(成田凌)の爆弾発言で予想外の展開に
写真提供/NHK 

あっさりし過ぎと思うが、15分だから仕方ない。徳利の話で2話分使うには、キャラクターがお茶の間に浸透していないから無理だろう。それより、居酒屋の女将の「鱧皮ときゅうりのざくざく」「白天とかいわれのおつゆ」の関西弁が自然で、この言い方だけでも食べたくなってしまった。そして、夜の道頓堀の灯りがなんとも美しい。夢の街そのものである。夢は夜開く。

嵐や〜〜

こうして、天晴、徳利が戻って来て、千之助はいないが、これでなんとか芝居がはじめられる。「雨降って地固まる」……と思ったら一平の爆弾発言で、「嵐や〜〜」と黒衣(桂吉弥)。台本を、天晴にだけ見せて、要二郎には見せていなかった理由はソレだったのか――。「昨日なにか言いかけていたな」というフリもあった。みんながいなくなったとき、ひとりだけ残っていた漆原に人知れずじわじわと近寄っていた危機。早く、つづきが見たい!

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■杉咲花(竹井千代役)プロフィール・出演作品・ニュース
■成田凌(天海一平役)プロフィール・出演作品・ニュース
■名倉潤(岡田宗助役)プロフィール・出演作品・ニュース
■篠原涼子(岡田シズ役)プロフィール・出演作品・ニュース
■宮田圭子(岡田ハナ役)プロフィール・出演作品・ニュース
■星田英利(須賀廼家千之助役)プロフィール・出演作品・ニュース
■板尾創路(須賀廼家万太郎役)プロフィール・出演作品・ニュース
■渋谷天笑(須賀廼家天晴役)プロフィール・出演作品・ニュース
■大川良太郎(漆原要二郎役)プロフィール・出演作品・ニュース
■坂口涼太郎(須賀廼家百久利役)プロフィール・出演作品・ニュース
■篠原涼子(岡田シズ役)プロフィール・出演作品・ニュース
■桂吉弥(黒衣役)ニュース


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番組情報

連続テレビ小説『おちょやん

<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り

<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)

<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送

<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送

:八津弘幸
演出:梛川善郎
音楽:サキタハヂメ
主演: 杉咲花
語り・黒衣: 桂 吉弥
主題歌:秦 基博「泣き笑いのエピソード」


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami
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