
※本文にはネタバレがあります
碧&風雅・空&光が進展『ウチカレ』第9話
『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』(以下ウチカレ)(日本テレビ系 毎週水曜よる10時〜)第9話は、碧(菅野美穂)と風雅(豊川悦司)、空(浜辺美波)と光(岡田健史)の関係がぐぐっと進展。母と娘、それぞれの恋が急上昇した。【前回レビュー】『ウチカレ』実の父と出会い明るい世界が広がっていく空、ふたりの血の繋がりに寂しさを募らせる碧
豊川悦司の登場によってドラマががらりと様変わり。
風雅と空が4日間の沖縄旅行に行って帰って来た。風雅はそのまま南麻布にいついてしまう。抜群のコミュ力を発揮してしたたかに生き抜いていく風雅のことを、そんなこと自分にはできないと感心している空に、「今の子誰でも苦手でしょ」と光が言う。遠慮がちな若者に、たくましいバブル世代を見習えと? いや、風雅は特別である。こんな人、どの時代にもいない。
調子のいい風雅に、碧は苛立ちを覚える。風雅の下宿でジェンガをやってると、「真ん中あたりから危なそうなの抜こうとする」と注意したあと、「昔もそうだったよ」とささやく風雅。
ジェンガが崩れる。(ああ、こういう描写、巧い)
碧のことを覚えていないのは嘘だった。碧の瞳が、「鈴にそっくりで、鈴を見ているみたいで」と言い訳する風雅。
碧「殴っていいですか」
風雅「はい」
碧「鈴さんの代わりです」

う〜〜ん……。さすがの豊川悦司も、このシーンを真実にすることは難題だったかと思う場面であったが、ぐっとこないのは、風雅が結婚詐欺師的なインチキな男であるという匂わせであることを願う。
ゴンちゃん……(泣)
「ふたりの母ちゃん、覚えていてくれてよかった」とのん気な空は、3人で鈴の墓参りに行った帰り、すずらん温泉でほっこりする碧と空。これは、浜辺美波のお風呂シーンを見せたいのか、豊川悦司のお風呂シーンを見せたいのか。どちらかといえば、きっと豊川悦司のお風呂シーンを狙ったに違いないと推測できる。なぜなら浜辺は徹底して肌を見せていなかったから。温泉帰り、3人が並んで歩いていると、なんだか美形の家族。楽しげな様子を見たゴンちゃんの気持ちは痛いほどわかる。
風雅がそれまで空(浜辺美波のほう)を思って空(スカイのほう)の写真を撮っていたと知って、「なにそれ、キモッ! きしょっ!」と言ったついでに「父ちゃん」と呼んでしまい動揺する空。「キッショイのか」と風雅が落ち込むところがあってよかったが、けっきょくは「父ちゃん」と認めて父娘の絆は深まっているのだった。
そんなとき鈴(矢田亜希子)の幻が現れ、「強いて言うなら女の意地。あなたの子供をこの世に残しましたよ、私っていう」と女性の強欲セリフを発する。そして、碧も、鈴と親友になったと言いながら、やっぱり風雅が好きでそこは譲れないという、同じ男を愛した女たちのなんともおそろしい感情が描かれる。
空のために碧は自分の子供を生むのを諦めたんじゃないか、と空は思うが、碧を知る者は絶対そんなことはないと言う。空に気を使ってのことかもしれないが、たぶん、そうではない。碧は鈴と風雅の子供を自分の子供にしたことで、ある種の勝利を獲得しているのだろう。
これは血の繋がっていない母と娘の麗しい愛ではない。水無瀬碧の罪より海より深い業の物語なのだ。第8話に出てきた「山椒魚」の物語だ。山椒魚は碧。彼が体を張って閉じ込めた蛙が空。だから、空は早く碧から離れるべきなのだ。
メガネを外す
空雪の降る夜。碧はまた風雅の部屋でジェンガをやっている。このときの、「空の匂いをかぐ」「明日また会える」「片手間のさよなら」「泣き虫な夕方」……「あなたの作品みんな読んでました」と碧の作品名を諳んじるとことか、「ひまわりみたいな人だった。夏のひまわり」とか「あなたといた一週間だけが僕の人生のカラーページです」とか「碧さん、やり直しませんか。もしくは始められませんか」などなど、なんかもう赤ワインに合うチーズのようなセリフ。あと、あれ、幼女とシャボン玉プレーも。ぐっとこないのは、風雅が結婚詐欺師的なインチキな男であるという匂わせであることを願う。
(C)日本テレビ
でも、そんなときには光である。部屋で漫画を描いていると、空が無防備に近づいてきて、その匂いにドキドキしてはぐらかす光。ご飯を食べに行った帰り道、悪ガキにからまれて、メガネが落ちて踏まれて、使い物にならなくなる。ついに、メガネを外す空。
「送るよ」で手を繋ぐ。主題歌入る。「危ないから」。「手を繋ぐのは恋人って言ってなかったっけ?」と聞く空に「今、非常事態なんで。メガネ壊れて」と誤魔化す光。
信号が赤になって止まるふたり。雪が落ちてくる。雪の匂いをかぐ。「ふふ、なあに」の言い方が良すぎる光。光の腕に顔をくっつけ匂いをかぐ空。腕であることが慎ましい。未熟な若いふたりがまじめにやってる姿にすべてが浄化された。
ただし、豊川悦司の裸足の足の指の一本一本のライン(長趾伸筋)が甲にまっすぐ浮き上がっていて美しい。そこだけは真実。そう、経験に裏打ちされたテクニックじゃない、ただもう、むきだしの美しさ。空と光にあるものと同じもの。
【関連記事】『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』7話 北川悦吏子の名作『愛していると言ってくれ』で共演の豊川悦司・矢田亜希子登場で新展開
【関連記事】『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』6話 岡田健史の一途な役が迫真 空と光の寂しさを共有する関係に胸しめつけられる
【関連記事】『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』5話 ラブストーリーの覇者・北川悦吏子描く恋の2番手の法則に見る恋愛の機微
※最終回のレビューを更新しましたら、エキレビ!のツイッターにてお知らせしています。お見逃しないよう、ぜひフォローしてくださいね。
●最終回あらすじ
風雅(豊川悦司)から一緒に沖縄で暮らそうと誘われ、心揺れる碧(菅野美穂)。一方仕事では、映画化が話題となり小説家として再び脚光を浴びる。そんな折、碧はニューヨークへの異動を告げられた漱石(川上洋平)からも、自分と一緒にニューヨークに来ないかと誘われて……!? 突然のモテ期の到来に浮かれる碧だが、空(浜辺美波)からは沖縄にもニューヨークにもついて行かないと言われ、母娘の間には微妙な距離が生まれる。
そんな中、ゴンちゃん(沢村一樹)は地元の銭湯で風雅と鉢合わせる。風雅に対し一方的に対抗心を燃やすゴンちゃんだが……。
そして大学では、お互いを意識する空と光(岡田健史)の間にぎこちない空気が流れていた。
その日、空は渉(東啓介)に別れを切り出す。「他に好きな人、出来た?」という質問に、空の心には光の顔が浮かんでいた……。
一方、おだやには転勤前におでんを食べに来た漱石が現れる。さらに、風雅までやってきて、碧をめぐる男たちが一堂に会するが……。碧と空を自分の物のように話す風雅の態度にイラっとするゴンちゃんは怒りが沸点に達し、勢いよく風雅に殴りかかる! 修羅場と化すおだや! タイミング悪く現れた空は、風雅に向かって碧と空の気持ちを代弁するゴンちゃんの言葉を聞いてしまい……!?
母娘をめぐるエキサイティング・ラブストーリーが、ついに最終局面を迎える!
番組情報
日本テレビ系『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』
毎週水曜よる10時〜
出演:菅野美穂(プロフィール) 浜辺美波(プロフィール)
岡田健史(プロフィール) 福原遥(プロフィール) 東啓介(プロフィール)
中村雅俊(プロフィール) 沢村一樹(プロフィール)
有田哲平(プロフィール) 川上洋平(プロフィール)
脚本:北川悦吏子(プロフィール)
音楽:得田真裕
演出:南雲聖一 内田秀実
製作著作:日本テレビ
番組サイト:https://www.ntv.co.jp/uchikare/
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami