『おかえりモネ』第2週「いのちを守る仕事です」
第9回〈5月27日(木)放送 作:安達奈緒子、演出:一木正恵〉

モネが活躍
モネ(清原果耶)が山で激しい雷雨に見舞われ、遭難。皆の助けを得ながら冷静に行動して大活躍。緊急救命もののような味わいがあり、山で雷雨に合ったときどうしたらいいか知識も学べた。【関連レビュー】『おかえりモネ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜第8回掲載中)
森で林間学校中、引率していた林間学校の生徒のひとり、福本圭輔(阿久津慶人)が集団行動から外れた。最初から彼の自由さが気になって見張っていたモネは、圭輔を見つけたものの、雨が降って来た。圭輔が足を滑らせ怪我をしてますます身動きが取りづらい。雨は強くなり雷も伴う。
ピンチだが、モネは気を確かにもっている。幸いケータイが使えるので、はぐれた佐々木課長(浜野謙太)や森林組合に待機しているサヤカ(夏木マリ)と連絡を取り合う。大人たちは誰もが冷静で、状況をしっかり把握し、適切な指示をモネに出す。
モネもはじめての林間学校と悪天候にも怯まず、圭輔を守ろうと努める。決して子どもを足手まとい視しない。気象予報士・朝岡(西島秀俊)に電話をかけてアドバイスをもらい、無事、避難小屋に移動できた。さらに、医師・菅波(坂口健太郎)が電話をしてきて、10歳以下の子どもの身体状況に気を使うことを教える。モネは教わったことをキビキビと行動に移す。
こういう役は清原果耶に合っている。ちょっとやそっとでは動じない、堂々とした役がこれまでも多かった。
俳優デビューの朝ドラ『あさが来た』では幼い頃に家を離れて女中奉公している健気な少女役だった。同じく朝ドラ『なつぞら』では戦争で肉親と離れ離れになり、引き取られた親戚にいじめられ家を出て、なんとかかんとか生きてきて小料理屋の女将として生きている、たくましい人物を演じていた。
ファンタジー大河『精霊の守り人』では孤高の戦士・バルサ(綾瀬はるか)の少女期を担当、凛々しい殺陣を披露した。この敬虔は主演時代劇『蛍草 菜々の剣』でさらに発展した。代表作で、『おかえりモネ』と同じ安達奈緒子脚本の『透明なゆりかご』では産婦人科で日々、生命の誕生に立ち会う看護師見習いをその聡明な瞳で演じてきた。
清原果耶が演じれば、その役は知力と体力が備わり、ハートのある人物になるのである。朝岡に「あなたならできます」と言われ、風の音に耳をそばだて、状況を判断し、圭輔を背負って雨の中、走る。避難小屋でも窓の隙間から雨が振り込んでこないようにせっせと働く。なんて頼もしい。
モネの耳がいいのは、音楽をやっていたからなんだろう。ただ、なんとなく優れているのではなく、彼女のこれまでやってきたことがまったく違う場で役に立っている。第8回でモネの祖父・龍己(藤竜也)が言っていた、山の葉っぱの養分は雨が降ると河に流れて海に届き、牡蠣やホタテの栄養になる話ともリンクしていると感じる。


朝岡と菅波のナイスサポート
モネの電話に親切に応じる朝岡。ちょうど放送の仕事が終わったあとだったことが幸い。パソコンを立ち上げて、登米の天候をチェックしながら、指示を出しているときの口調の冷静さ。「1分待ってください」とか、かっきり具体的なのもいい。演じている西島秀俊の冷静で単語をきっちり言うところ。数多くの刑事ものに出演し、修羅場をくぐってきただけある、やっぱりちょっとやそっとでは動じない貫禄。重大なミッションを指示しているようにも見えた。
その一方で「風の音を聞いて」という指示の声にはどこか甘さもあって……。ここが西島秀俊の女性人気がある所以なのだ。
それにしても気象予報士って山の知識やそこでの避難方法にも詳しいんだなと感心。
菅波の冷静さも負けていない。演じている坂口健太郎は学生の時バレー部だったそうだが、読書が好きな面もあるからか、スポーツ男子とカテゴライズするよりも文学男子的な印象がある。朝ドラ『とと姉ちゃん』でも植物を研究する帝大生役がハマっていた。世界の隅々まで見逃さない探究心旺盛な瞳が、今回の医師役にも合っている。
いろいろ迷っているモネを、こういう人たちがサポートしていくことで、モネにも光を見つけることができる。
主人公が何をしたいのか、何に悩んでいるのかわからないことにもやもやするよりも、主人公に寄り添って、彼女に目線を合わせて、一緒に考えるような気持ちでドラマを見ていく楽しみもある。「焦らなくてもいい。ゆっくりでいいんだ」とサヤカも第2回で言っている。
※『おかえりモネ』第10回のレビューを更新しましたら、Twitterでお知らせします
番組情報
連続テレビ小説『おかえりモネ』
2021年5月17日(月)~<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送
出演:清原果耶
内野聖陽 鈴木京香 蒔田彩珠 藤 竜也 竹下景子 永瀬 廉 恒松祐里 前田航基 高田彪我 浅野忠信 夏木マリ 浜野謙太 でんでん 坂口健太郎 平山祐介 塚本晋也 西島秀俊 今田美桜 清水尋也 森田望智 井上 順 高岡早紀 玉置玲央 阿部純子 マイコ 菅原小春
※登場人物のプロフィールやあらすじなど、詳細はこちら
作:安達奈緒子
演出:一木正恵 梶原登城 桑野智宏
音楽:高木正勝
主演:清原果耶
語り:竹下景子
主題歌:BUMP OF CHICKEN「なないろ」
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami