『おかえりモネ』第6週「大人たちの青春」

第26回〈6月21日(月)放送 作:安達奈緒子、演出:桑野智宏〉

『おかえりモネ』第26回 気象予報士を目指す気持ちを強くする百音 菅波との勉強シーンが『ドラゴン桜』
イラスト/AYAMI
※本文にネタバレを含みます

仕事を通して登米の人たちに次第に溶け込んできた百音(清原果耶)。天気の勉強も順調で、天気予報が当たるようになってきた。

【関連レビュー】『おかえりモネ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜第26回掲載中)

学童机を納品するためナラの伐採も進むある日、雷鳴を聞いて心配になった百音はクマさんこと熊谷(山本亨)に山を下りるように連絡するが、山の天気は自分がいちばんわかっていると逆に叱られてしまう。


長年、山で生きてきたクマさんは天気の怖さを誰よりも熟知しており、また誰よりも作業員たちの身の危険を心配している。山のプロたちは仕事に誇りをもっていて、資格をたくさん持っていた。名詞ジャンケンならぬ資格ジャンケンみたいなことをしてひとしきり盛り上がる作業員たち。でも彼らの資格は山で生きていくための真剣な意思の証し。

菅波に資格の意味を問われた百音は、気象予報士の資格を取りたいとますます真剣になる。

「誰かが哀しい想いをしないように守ってあげてる。そういう力を私も身につけたいです」

百音の真面目さが心を打った。『おかえりモネ』は、命を守りたい、そんな願いのドラマである。

田中さん、登場

ここにひとつの命がある。医師・菅波(坂口健太郎)の患者・田中(塚本晋也)は自称・カメラマン。百音に勝手にカメラを向けて撮り、菅波に注意される。でも気にせずじゃんじゃん撮る。カフェ「椎の実」のほかの客も撮る。
「思い出、青春の記録」と気にしない、やたら明るい人物である。

元気そうだけれど、時々咳き込む。喘息持ちとみんなには言っているが、第25回で、診療所で菅波と話している時はカルテに肺がんと書いてあった。入院しないで通院しながら薬物治療で経過を見たいと希望していた田中。第8回耕治(内野聖陽)と旧交を温めていた。

百音の写真をやたら撮るのは、耕治の娘だからであろう。これからどう絡んでいくのか。早くも倒れてしまって、体のほうも心配である。

演じている塚本晋也は、朝ドラでは『半分、青い。』のロボット工学を律(佐藤健)に教える宇佐川教授役をはじめ、『カーネーション』『ゲゲゲの女房』などにも出演していて、意外と朝ドラ常連。ちょっと変わり者の人物を演じることが多い。

おじさんに可愛がられる百音

「仕事でも安全を優先させてください」と百音がやけに心配するのは、震災で故郷が被害にあった過去の経験があるからなのだろう。出過ぎた真似をして、クマさんの機嫌を損ねてしまった百音だったが、クマさんは懐が広く、百音に飴を与え、仲直りする。
黒柳徹子か。

『おかえりモネ』第26回 気象予報士を目指す気持ちを強くする百音 菅波との勉強シーンが『ドラゴン桜』
写真提供/NHK


『おかえりモネ』第26回 気象予報士を目指す気持ちを強くする百音 菅波との勉強シーンが『ドラゴン桜』
写真提供/NHK

ほかの作業員たちも、若い百音に寛容。自分の仕事にプライドを持って生きていて、そのプライドに見合う知識や経験も持っている大人たちが、若者を時に叱ってもすぐに切り替えて、受け入れる。こういう大人と若者の交流があるといい。

翔洋(浜野謙太)も百音をちゃんとフォローする。『おかえりモネ』にはいやな人がひとりもいないので安心して観ることができる。命を守ることとは、生死にかかわることはもちろんながら、常日頃の心のケアも重要である。他者を頭ごなしに否定してむやみに傷つけてはならない。

菅波もますます、百音に協力

いやな人がいなくて、みんな優しい。でもそれだけでも……という時、ピリッと厳しいのが菅波。彼は、百音が優しくされたり褒められたりしてつい慢心しそうになるところを抑制する。

資格を必要とする仕事の多くは他人の生命や財産に多大な影響する。それだけ真剣に向き合わないとならない。
菅波の医師免許も、クマさんたちの資格の数々も、百音が目指す気象予報士の資格も、すべて他者の命や財産を守るためのもの。それを認識して、百音は怯むのではなく、いっそう気象予報士になりたいと考える。

気象予報士の資格をなんのために取るのか、菅波は百音に問う。気象の知識を深めることか、試験に合格することか……後者なら、スケジュールを立てるように助言する菅波。俄然、態度が変わってテキパキしていく菅波。単に勉強することと、合格するためのやり方は違う。菅波も、合格するための方法を知ったうえで医師になれたのだろう。菅波と百音の勉強シーンのところだけ朝ドラ版『ドラゴン桜』のようになって来た。
(木俣冬)



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番組情報

連続テレビ小説『おかえりモネ

2021年5月17日(月)~

<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送

出演:清原果耶
内野聖陽 鈴木京香 蒔田彩珠 藤 竜也 竹下景子 永瀬 廉 恒松祐里 前田航基 高田彪我 浅野忠信 夏木マリ 浜野謙太 でんでん 坂口健太郎 平山祐介 塚本晋也 西島秀俊 今田美桜 清水尋也 森田望智 井上 順 高岡早紀 玉置玲央 阿部純子 マイコ 菅原小春
※登場人物のプロフィールやあらすじなど、詳細はこちら

:安達奈緒子
演出:一木正恵 梶原登城 桑野智宏
音楽:高木正勝
主演:清原果耶
語り:竹下景子
主題歌:BUMP OF CHICKEN「なないろ」


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami
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