『おかえりモネ』第10週「気象予報は誰のため?」

第49回〈7月22日(木)放送 作:安達奈緒子、演出:梶原登城〉

『おかえりモネ』第49回 「布団が風で吹っ飛んだ」大豆田とわ子も言ってたやつー
イラスト/AYAMI
※本文にネタバレを含みます

※『おかえりモネ』第50回のレビューを更新しましたら、Twitterでお知らせします


今日も今日とてアヴァンタイトルは前回の振り返りを念入りに。【前回振り返り→主題歌→本編】この構成はデフォルトになるのだろうか。

【レビュー一覧】『おかえりモネ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜第49回掲載中)

東京初日、面接を明日に控えながら百音(清原果耶)はすでにウェザー・エキスパーツの一員のようになっている。
『あさキラっ』に急遽お手伝いで参加することになって深夜に出勤。天気予報の時間が急遽短縮された『ニュースJ』とは反対に、『あさキラっ』では天気予報の時間が増える。突然2分増えたことで、百音にも出番が回ってきた。思いがけない百音の役割とは――。

莉子は本音を吐きまくり

第48回で、今の仕事に満足していないことを百音につい漏らしてしまった莉子(今田美桜)。第49回でも、お天気お姉さん的な役割(現場から中継する)に疑問を吐露する。これまで何を考えているのか捉えづらかった百音と比べて莉子はしょっぱなから考えていることが手にとるようにわかる。
見ていてストレスレス。わかりやすい明るさ華やかさも好感度が高い(百音は百音で個性があって良い)。

そのうえ、いまの仕事がおもしろいと思っていないながら、せいいっぱい、求められることに応えようとしているところがますます好感度アップ。全国の不特定多数の視聴者に届かせるために季節ネタを交え、桜の話題を出すときには、ピンク色のワンピースを着る。

それに気づくのは高村(高岡早紀)で、朝岡(西島秀俊)は気づかない。朝岡って意外とパーフェクトな人ではないようである。
百音は、全身が映らないから足元がヒールのある靴ではないことに気づく。百音はほわんとしているが意外と洞察力がある。

1億2千万人から10万人の情報

自分の仕事に意味があるように感じていなかった莉子。ピンクの服には気づいていない朝岡。でも朝岡は莉子に、重大な任務を授ける。

全国区のニュース番組は通常1億2千万人もの人たちに向けて情報を伝える。でも局地的な10万人に大事な情報もある。
そんなときこそ、莉子のコーナーでさりげなく伝えることができるのではないか。朝岡はそう考えていた。たくさんの人に向ける情報と、局地的な情報は違う。そのジレンマは、朝ドラという国民的番組に携わる作り手だからこそ実感を伴って描けることだろう。

『おかえりモネ』第49回 「布団が風で吹っ飛んだ」大豆田とわ子も言ってたやつー
写真提供/NHK

百音と莉子、協力体制

今日の天気にちなんだ小ネタがあるかと聞かれ、「布団が風で吹っ飛んだ」とダジャレを言う百音。このダジャレ、既視感あるなあと思ったら、坂元裕二脚本の『大豆田とわ子と三人の元夫』(フジテレビ)だった。第1話で「布団が吹っ飛んだ」話をしていて、第5話でほんとに吹っ飛んでいた。


本来なら、『モネ』も4月はじまりで、吹っ飛んだネタは5月末くらいに放送される予定だったはず。ところがコロナ禍によって放送開始が2カ月ずれたため、『とわ子』からだいぶ時間が空いてしまった。それにしても「布団が吹っ飛んだ」というダジャレが頻繁に使用されるのはなぜだ。

それはともかく、莉子のコーナーに百音が協力することになる。本番前、屋上で、百音と莉子はアイコンタクトをとる。百音は洗濯かごみたいなものを抱えている。
いよいよ本番。「今日は私のお友達が来てくれてるんですよ」と莉子。お友達とは……。はらはらしながら次回へ――。

『おかえりモネ』第49回 「布団が風で吹っ飛んだ」大豆田とわ子も言ってたやつー
写真提供/NHK

いきなり深夜勤務

全くの余談だが、社会部記者の沢渡公平を演じている玉置玲央の演劇活動の代表作に『いまさらキスシーン』というひとり芝居がある。

ここからが本題だが、『おかえりモネ』ではいきなり深夜、早朝勤務シーンを描いている。それを見ていて疑問に感じたのは、莉子をはじめとした『あさキラっ』メンバーは深夜から早朝勤務がレギュラーのようだからこのシフトに慣れているだろうけれど、深夜に働くことに慣れていないから百音は眠くならないのだろうか。
驚くべき展開に巻き込まれ、眠いどころではないのかもしれないが。

テレビ局に窓がないので時間帯がわかりにくいうえ、みんなバリバリ働いているので、これが深夜という特殊な時間帯なのだということを我々は把握しづらい。一見、日中のように思ってしまう。それがそうではないのだとわかるのは、同級生の三生(前田航基)悠人(高田彪我)が百音に送ってくる、「朝までコース」で飲んでいるとぐでんぐでんになった顔の写真つきでメッセージによってである。本来ならこんな時間帯に、『あさキラっ』の関係者はきびきびと働いているのである。

大学生くらいの年頃は飲みで朝までならともかく、深夜に働く――しかも数字に間違いがあってはいけない厳密な仕事をするのは難しそう。でも百音は弱音をはかずに手伝っている。とはいえ、友人のメッセージが来ると持ち場を離れてスマホを見ているところはまだ現場で働く意識が薄い。だが、2回目は電源を切ろうとする。百音にはちゃんと気づいて行動を変えていくクレバーさがある。いきなり全開で優秀に働くわけではなく、若干、緩みのある感じはリアルといえばリアルである。
(木俣冬)

『おかえりモネ』をさらに楽しむために♪








番組情報

連続テレビ小説『おかえりモネ

2021年5月17日(月)~

<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送

出演:清原果耶
内野聖陽 鈴木京香 蒔田彩珠 藤 竜也 竹下景子 永瀬 廉 恒松祐里 前田航基 高田彪我 浅野忠信 夏木マリ 浜野謙太 でんでん 坂口健太郎 平山祐介 塚本晋也 西島秀俊 今田美桜 清水尋也 森田望智 井上 順 高岡早紀 玉置玲央 阿部純子 マイコ 菅原小春
※登場人物のプロフィールやあらすじなど、詳細はこちら

:安達奈緒子
演出:一木正恵 梶原登城 桑野智宏
音楽:高木正勝
主演:清原果耶
語り:竹下景子
主題歌:BUMP OF CHICKEN「なないろ」


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami