『おかえりモネ』第14週「離れられないもの」
第68回〈8月18日(水)放送 作:安達奈緒子、演出:押田友太〉

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見どころ満載回。百音(清原果耶)と菅波(坂口健太郎)が良い雰囲気になったところ(第67回)で、父・耕治(内野聖陽)の突然の上京。祖父・龍己(藤竜也)まで一緒で、菅沼に大きなプレッシャーがかかる。
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カッコいい龍己
耕治と龍己の上京は、龍己の牡蠣が品評会で金賞を獲った授賞式のためだった。ふたりともばちっとファッションを決めてきている。映えある授賞式に出席するから気合を入れてきているのだろう。漁師の人たちは大漁旗なんかも派手だし、良い意味での傾奇者的な感覚をもっているのだろうと感じる。スター俳優・藤竜也がごく自然に伊達男の雰囲気を漂わせていて、地元で漁師はカッコいいヒーローなのだということに説得力がある。とりわけ龍己の時代はそうであったことだろう。下の世代の耕治もいまは銀行員というお固いお仕事についているが、漁師の息子であり、学生時代はトランペット奏者でブイブイ言わせていた。内野聖陽の演じる、隠しきれない華のある人物はこれまた説得力がある。
スター性のある名優ふたりの圧は菅波をビビらせるに足り過ぎるほど足りている。百獣の王ライオンと虎に睨まれたゼブラのようであった。藤と内野はエンターテインメントをわかっていらっしゃる。

牡蠣の洗礼
急遽、汐見湯のフリースペースで食事会が催される。持ってきた牡蠣を菜津(マイコ)たちが食べて大喜び。菅波は過去、牡蠣に3回食べて3回当たっているので牡蠣を食べないようにしていたが、引くに引けない状況になり、思いきって食べる、と――。
「美味い」「こんなの食べたことがないです」とにっこり。そのあと、うっかり「お父さん」と耕治のことを呼んでしまい、耕治は怪訝な顔をして、百音と菅波問題が蒸し返されるが、明日美(恒松祐里)の登場で有耶無耶になる。
あとで「別の心配は的中していたけどなあ」と耕治は百音に言うが、男親が娘の恋愛事情を心配するごく自然な反応である。もっと類型的に「けしからん!」と怒ったり、酒を無理やり強要したりするようなドタバタにしないのが『モネ』らしい。苦手な牡蠣を思いきってたいらげることで永浦家の洗礼を受け見事にクリアーする。永浦家にとって大事な“牡蠣”を使ったところが見事だった。
金賞を獲るまでに「ご苦労もあったんでしょう」と小倉光子(大西多摩恵)が龍己に声をかけることで、震災の被害を乗り越えてきたことを思い出させる。第67回で災害に遭っても地元を離れたくない気持ちを描いていたことが繋がって考えさせられた。

翌朝(深夜)、百音は龍己に「おじいちゃんはさ、海から離れようとは一度も思わなかった?」と訊ねる。百音の心のなかででまた問題が芽生えはじめているようだ。
水の音
ホテルをとってあったが、耕治と龍己は汐見湯に泊まった。風呂上がりらしき耕治が百音の部屋に来て、2時に起きると聞いてびっくり。漁師と変わらないなと言う。やっぱり百音は2時起きの生活にさほど困惑していないのは実家で慣れているからなのだろうか。それにしても毎日夜8時には寝ているはずだが、未知(蒔田珠樹)にメッセージを送ったのは9時過ぎていた。百音はショートスリーパーなのか。2時に起きて出かけようとすると、龍己が起きて築地に寄ってから帰ると仕度していた。宇田川の風呂掃除の音を聞いて「水の音を聞くと仕事を思い出して寝てられなくてさ。漁師の性(さが)だ」と言う。宇田川の深夜の掃除がここで使われるのもなるほどなあと感心した。
内野聖陽と西島秀俊
朝、耕治はウェザー・エキスパーツへ。コサメちゃんと傘イルカくんの絵を写真に撮ったりしてはしゃいでいると、目の前に朝岡が……。明日はいよいよ、内野、西島の絡みが見られるそうだ。ふたりは映画化もされる人気連ドラ『きのう何食べた?』でダブル主演していて、息のあった芝居をしている仲。(木俣冬)
番組情報
連続テレビ小説『おかえりモネ』
2021年5月17日(月)~<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送
出演:清原果耶
内野聖陽 鈴木京香 蒔田彩珠 藤 竜也 竹下景子 永瀬 廉 恒松祐里 前田航基 高田彪我 浅野忠信 夏木マリ 浜野謙太 でんでん 坂口健太郎 平山祐介 塚本晋也 西島秀俊 今田美桜 清水尋也 森田望智 井上 順 高岡早紀 玉置玲央 阿部純子 マイコ 菅原小春
※登場人物のプロフィールやあらすじなど、詳細はこちら
作:安達奈緒子
演出:一木正恵 梶原登城 桑野智宏
音楽:高木正勝
主演:清原果耶
語り:竹下景子
主題歌:BUMP OF CHICKEN「なないろ」
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami