『おかえりモネ』第24週「あなたが思う未来へ」

第117回〈10月26日(火)放送 作:安達奈緒子、演出:一木正恵〉

『おかえりモネ』第117回 ニコイチの百音と菅波 離れてもいても大丈夫、アドバイスもくれる。益々いい
イラスト/AYAMI
※本文にネタバレを含みます

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この回入れてあと4回。百音(清原果耶)未知(蒔田彩珠)も幸せの道を進みはじめたところ、2020年1月14日(火)、「感染症」に関することで呼吸器専門の医師である菅波(坂口健太郎)が急遽東京に戻ることになる。

【レビュー一覧】『おかえりモネ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜第117回掲載中)

現実の話だと、2020年、厚労省は1月16日に、14日、神奈川県内の医療機関から管轄の保健所に対して、中華人民共和国湖北省武漢市の滞在歴がある肺炎の患者が報告され、15日に新型コロナウイルス陽性の結果が得られたと報道している。


それを思うと、14日に菅波が秘密裏に呼び出されることにはリアリティーがあり過ぎるほどである。物語(フィクション)のなかに現実にあったことを入れるとぴりっと引き締まる。とはいえ、このスパイスを辛く感じない人は少なくないであろう。

東日本大震災に遭って深い傷を負った百音たち。「大事な人達が幸せになる。こんなに嬉しいことない。
よかった」と自分の幸福のみならず、未知や幼馴染の幸福を思って体の内を震わせるように喜ぶ百音。ああそれなのにそれなのに……。東日本大震災のみならず、昔からずっと自然災害に遭うたびにその都度立ち上がり続けてきた人たちにまたしても新たな試練が……。

物語とは厳しい現実をひととき忘れるためのものかと思いきや、現実を客観的に見つめ考えるための物語もある。百音たちの行く手を思い浮かべると、中島みゆきの「時代」の歌詞が浮かんでくる(ご存知ない方は検索してみてください)。

決意をもって永浦家にやって来た菅波だったが、肝心の耕治(内野聖陽)がいない。
「逃げたんだろう」と龍己(藤竜也)は笑いながら自室に戻る。百音が龍己のもとへ行くとご機嫌で「男を見る目っていうか、そういう才覚は俺のハニー…ばあちゃん譲りだな」と龍己は百音と未知のことを祝福した。

居間に残って借りてきた猫のようになっている菅波には亜哉子(鈴木京香)がついていて、同じ外から来た者として励ます。

『おかえりモネ』第117回 ニコイチの百音と菅波 離れてもいても大丈夫、アドバイスもくれる。益々いい
写真提供/NHK

百音と菅波がお互いの今後の話をしていると、耕治が酔っ払って帰って来た。酔わないとまともに向き合えない耕治の人間臭さ。百音に、恋人に堅苦しい話ばかりしているとからかうが、耕治も今後の仕事の展望について菅波と嬉々として話す。
俗っぽい話がいっさいなく、じつに真面目な人たちである。

百音の仕事の構想についての菅波の反応に「やっぱり無謀と思ってる」と非難するような目をしたときの清原果耶の目の鋭さ。やっぱり清原はこの野生の獣のような強さを感じさせる表情が真骨頂だが、百音ではそれをできるだけ封印しているように見える。

百音は耕治と養殖と科学の話をするときも生き生きしている。菅波もそこに加わって話が盛り上がり、その流れで結婚(交際?)の許可をもらおうとする菅波。百音も「うん、私は先生じゃないとだめだから」と耕治に宣言する。
甘いセリフも清原が言うと甘くなり過ぎない。そこがいい。



『おかえりモネ』第117回 ニコイチの百音と菅波 離れてもいても大丈夫、アドバイスもくれる。益々いい
写真提供/NHK

百音の背中をやさしく叩く菅波

未知から亮(永瀬廉)と気持ちが通じたという報告のメールが来て、百音は感極まって居間から席を外す。廊下で「でも、先生これは自分が救われたから?」と喜ぶことに警戒心を決して忘れない百音に菅波は「いや」と彼女の戒めを解こうとする。百音の自戒の強さは菅波がきっかけだから。

このへんの雰囲気は神父と懺悔に来ている信者みたいな感じもしないではない。百音が「先生」と呼び続けていることにも、人生の教えを受けている感じが強くなる。
菅波って聖職者も似合いそう。それはともかく「大事な人達が幸せになる。こんなに嬉しいことない。よかった」と涙する百音の背中をやさしく叩く菅波。

百音と菅波をこっそり居間から眺め「ありゃあニコイチだ」と元祖・ニコイチの耕治と亜哉子は微笑む。ふたりを「ニコイチ」と呼んだのは田中さん(塚本晋也)だった。


中村(平山祐介)から呼ばれて急遽東京に戻る菅波(このときのストーブの前で足の指をいじってる丸まった背中)。亜哉子に「百音さんは時々、大切な人と離れることをとても怖がります。でも僕のことは離れていても大丈夫だと思ってるようです。わりと最初の頃から」と言い、だからこそ、自分が百音に最適だと自覚する菅波。

いつも一緒にいなくていい。四六時中、尽くさなくていい。電話したら最適なアドバイスをくれる。浮気の心配もなさそう。医者でお金も持っていそうだが浪費の心配もなく堅実。穏やか。見た目もいい。こんな良い人なかなかいないだろう。働く女性にとって理想的である。
(木俣冬)

『おかえりモネ』をさらに楽しむために♪








番組情報

連続テレビ小説『おかえりモネ

2021年5月17日(月)~

<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送

出演:清原果耶
内野聖陽 鈴木京香 蒔田彩珠 藤 竜也 竹下景子 永瀬 廉 恒松祐里 前田航基 高田彪我 浅野忠信 坂井真紀 千葉哲也 山寺宏一 山口紗弥加 菅原大吉 佃典彦 茅島みずき 伊東蒼 夏木マリ 浜野謙太 でんでん 坂口健太郎 平山祐介 塚本晋也 西島秀俊 今田美桜 清水尋也 森田望智 井上 順 高岡早紀 玉置玲央 阿部純子 マイコ 菅原小春
※登場人物のプロフィールやあらすじなど、詳細はこちら

:安達奈緒子
演出:一木正恵 梶原登城 桑野智宏
音楽:高木正勝
主演:清原果耶
語り:竹下景子
主題歌:BUMP OF CHICKEN「なないろ」


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami