朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第8週「1951-1962」
第40回〈12月24日(金)放送 作:藤本有紀、演出:安達もじり〉

※本文にネタバレを含みます
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大阪は道頓堀に出てきたるい(深津絵里)はひょんなことから知り合った竹村クリーニング店で住む込みで働くことになった。
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竹村クリーニング店の平助役・村田雄浩と和子役の濱田マリは朝ドラ常連。村田は『澪つくし』『走らんか!』『ちゅらさん』『純情きらり』、濱田は『カーネーション』『マッサン』と人気作で印象的な役を演じてきた。
竹村夫妻は人情があってやたらと明るく、でもちょっとしんみりすることもあるという典型的な大阪キャラというふうである。「これがホンマの職業センタクの自由じゃ」と、がははと笑うベタさ。
夫婦仲はいいが子どもがいない竹村夫妻はるいを子ども代わりのように世話しはじめる。雉真という名前から岡山の有名なあの会社の関係者?と訊かれ、るいは親戚であると、父母は亡くなったと誤魔化す。
和子は「大事にしたげような、あの子のこと」とるいの孤独を感じ取る。夫妻がやたらとふざけるのはもともと陽気な性質もあるだろうし、どこか影のあるるいを気楽にさせたい思いもあるのだろう。気を使って見せずに気を使っているのである。
るいは父・稔(松村北斗)に会ったことはなく、祖母とは幼い頃に死別、母とは別れ、祖父と叔父と叔父の妻とともに暮らしてきた。祖父の千吉(段田安則)も叔父・勇(村上虹郎)も優しかったと思うが、やっぱりどこか甘えられなかっただろうし、叔父の妻・雪衣(岡田結実)にいたっては幼いるいにへんなことを吹き込んだ人である(安子は諦めたというやつ)。心が休まることはなかったに違いない。
常に気を使って生きてきたであろうるいが、朝起きて、狭いながらもわいわいにぎやかな家でちゃぶ台でご飯を食べる。
宇宙人が来た
アイロンを掛けて畳む作業を「なんか気持ちがええ」と感じるるい。狭いけれど清潔感のあるお店。心が洗われるようだ。センタクだけに。そこに近所の映画館のおじさん、西山(笑福亭笑瓶)が映画のポスターを持ってきてお店に貼る。宇宙人の映画で「モモケンはどうや」と『カムカム』オリジナル映画俳優・桃山剣之介(尾上菊之助)の話題も出る。植木等の歌も流れ、60年代、高度成長期、日本が元気な時代感に溢れている。
るいは、和子に教えられて、クリーニングを依頼された衣類の状態を見ながら、持ち主のシチュエーションを想像していく。ここがおもしろい。
クリーニングは「売ったらしまいの商いと違う」という和子。高度成長期、どんどんものを作って売っていた日本社会で、どんどん売るのではなく、何度も洗って着続けることを推奨する仕事であるクリーニング。本当なら自分たちで洗濯すればいいのだけれど、その時間を別のことに使うためにクリーニングという仕事が生まれ、顧客にゆとりをサービスする。実は持続可能な社会にぴったりなのだということを『カムカム』を見て気付いた。
とそこへサングラスをしたオダギリジョー(ここではまだ名前がわからない)がすごい量の洗濯物を抱えてやってくる。「なんじゃあこの人」「この人の日常がまるで見えてこん」とるいは衣類を分類しながら、べたりとついたケチャップを「血!」と驚いたりして……。謎の人物は名も告げずに帰ってしまったので、るいが仮に名前をつける。
その名は「宇宙人」。
映画のポスターがSF映画(宇宙活劇)だったからだと思うのだが、これが桃剣だったらどんな名前になっていただろうか。
(木俣冬)
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番組情報
連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
2021年11月1日(月)~<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送
制作統括:堀之内礼二郎 櫻井賢
作:藤本有紀
プロデューサー:葛西勇也 橋本果奈 齋藤明日香
演出:安達もじり 橋爪紳一朗 深川貴志 松岡一史
音楽:金子隆博
主演:上白石萌音 深津絵里 川栄李奈
語り:城田優
主題歌:AI「アルデバラン」
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami