コンピュータや通信など、最先端のIT技術によって、世の中がどんどん便利で快適になっていく。それにつれて、電気の役割もますます大きくなっている。
電子機器が増える一方で、環境意識 や節電意識の高まりなどによって、電力需要自体の伸びは鈍化傾向にある。もちろん、省エネ家電などの普及も大きいだろう。しかし、産業、生活のあらゆる側面で電装化が急激に加速しており、エネルギー消費に占める電気の割合はすでに40%を超えている。高度な情報化社会が進展していけば、この割合がさらに増していくことは間違いないだろう。
そこで今、注目が高まっているのが、「SiC」(シリコンカーバイド)と呼ばれる半導体材料だ。
そもそも半導体とは、電気を通す「導体」と電気を通さない「絶縁体」の中間的な性質をもつ物質をさす言葉である。半導体をイメージする写真やイラストなどでよく紹介されるのはICチップと呼ばれるもので、一枚の基板の上にトランジスタや抵抗器等、複数の回路素子を高密度に組み込んだ集積回路であり、近年では、これらも総称して半導体と表現されることも多い。半導体を用いた製品は、産業機器や産業用ロボット、身近な所では、自動車やパソコンなどのCPUやフラッシュメモリ、スマートフォン、エアコンや炊飯器などの家電製品にいたるまで、電気で動くあらゆる物に組み込まれている。
では「SiC」がなぜ、注目されているのだろうか。その秘密は、優れた電力変換効率にある。
半導体材料といえばこれまでの主流は「Si」(シリコン)だったが、SiCはSiに比べて耐久力が高く(絶縁破壊電界強度がSiの10倍)、変換効率に優れ、主に大電力を制御するパワーデバイスに使用されることが増えているのだ。
発電所でつくられた電気は、電線や電柱を通って、工場やビル、各家庭に運ばれていることは小学生でも知っている。
そこで、Siよりも電力変換効率に優れたSiCパワーデバイスを用いることで、変換ロスを減らし、大切な電気をできる限り、無駄なく供給しようという動きが高まっている。現状では未だ、使い慣れているSiが主流で、SiCは「次世代」と表現されることも多いが、それも徐々に変わってくるだろう。
日本は世界でも有数のエネルギー消費大国であるにもかかわらずエネルギー自給率は10%未満で、海外先進国と比べても低い。