【写真】アイドル人生を貫いた金澤有希 撮り下ろしカット【5点】
「小さい頃からずっとこの世界にいたから、アイドルじゃない自分が想像つかないんです。ライブ帰りで電車に乗っていて、たまたま正面の人と目が合うと無意識にニッコリしちゃったりするし(笑)。なにか私の中でアイドルのイメージって、日常生活の延長にあるものではないんですよね。浮世離れしているというか、人間よりは宇宙人に近い感じ。これからは普通の人間に戻る努力をしなきゃいけないかな」
アイドルは活動していくうえで大きな犠牲を払っている。よく指摘される恋愛だけでなく、学業面で妥協を余儀なくされることも非常に多い。金澤は地元・北海道苫小牧に里帰りすると、疎外感を覚えることがあるという。同級生たちが「2人目の子供」や「保育園の選択」について語り合っている中、自分だけアイドルとしてステージに立っているのだ。気づいたら完全に違う世界の住民になっていたということなのだろう。
「要するに私、アイドル以外のことが何もわかっていないんですよ。そこは少しコンプレックスでもありますね。
19年のアイドル人生を振り返ったとき、もっとも大きなターニングポイントとなったのは何か? そう尋ねると、「GEMのリーダー就任にしたこと!」と即答した。それまで「個人戦」という意識で活動していたが、団体の長となったことでグループ全体のことを優先して考えるようになったという。
「みんなでひとつのものを作り上げていく充実感は、本当に何物にも代えられなかった。メンバーが真剣にグループを愛せば、グループを愛してくれる人が自然に増えることも知りましたし。GEMは最高のグループだったし、解散した今でも誇りに思っています。そんなGEMはダンス&ボーカルグループを名乗っていたパフォーマンス重視のグループだったので、最初はダンスや歌のスキルがない自分がリーダーをやることに気後れもしていて。でもこうやって時間が経つと、あそこで人間的に大きく成長できた気がするんですよね」
モーニング娘。の辻希美に憧れていた少女が、北海道のローカルアイドル・Touchにスカウトされたのは10歳のときだった。機材の手配や会場のセッティングなど、実作業はすべて自分たちの手で行うのがグループの掟。氷点下の野外会場で暖を取っていたときは、あまりの寒さにヒーターの熱で手袋が溶けていたことにも気づかなかったという。しかし、それでも金澤は夢を決して諦めなかった。
「私、どちらかというと飽き性なんですよ。習い事もいろいろやったけど、結局、長く続けられたものはアイドル以外にはなくて。そんな私が19年間も……しかもなぁなぁになることなく全力で走り続けることができたのは、神様に『あなたはアイドルになりなさい』と言われたからだと思うんです。これがしたくて、たぶん私はこの世に生を受けたんですよね」
昨年の12月にリリースされた『超絶☆HAPPY ~ミンナニサチアレ!!!!!~』は、金澤および同時に卒業する長尾しおり、樋口なづなにとってラスト作品だ。グループとしては初のミニアルバムで、全6曲が収録。中でもMVも公開されているリード曲の『キミニサチアレ!!』は底抜けにファンキーなディスコチューンで、ファンからも絶大な支持を集めている。
「いわゆる卒業ソングっぽい、しんみりした曲でお別れしたくないという気持ちが自分の中にありまして。ましてやスパガはキラキラした曲調のナンバーが多いので、みんなで踊ってノリノリで盛り上がれるこの曲は最高にハマっているなとうれしくなりました。今後のスパガにとっても特別な1曲になるはずなので、ぜひ愛し続けていただけたらなと思っています」
そして2月10日(金)には、日本橋三井ホールで金澤ら3人にとっての最後のコンサートが控えている。泣いても笑っても、これがラスト。
「19年間の集大成を見せる意気込みで臨みます。
芸能界を引退しても、ファンの心に金澤の存在は生き続けるだろう。これからはアイドルで培ったものを生かして金澤の人生も続いていく。
「一番大事なのは、スパガがこれからも続いていくということ。新しく始まる第6章もぜひ見届けてほしいし、応援していただけたら幸いです。私ももともとは熱心なアイドルファンだったから、ファンの方の気持ちもわかる部分があるんですよ。テレビや動画でもあんなにキラキラしていた存在が、実際に会場で観てみると何十倍も輝いている。こんなに素晴らしいアイドルというジャンルは他にないなって本気で思います。だから気になる子が1人でもいたら会いにいってほしいし、グループ全体が好きでも会いにいってほしい。繰り返しになりますが、アイドルが輝けるのはファンの方の存在があってこそなんです。今まで温かい応援、本当にありがとうございました!」
羽を休めた“アイドル渡り鳥”に幸あることを期待してやまない。
【前編はこちら】現役生活19年に終止符、“アイドル渡り鳥” 金澤有希がマイクを置く理由